5年前、ジェフ・ベゾス氏は世界の頂点にいました。保有する純資産額で世界一の大富豪となったのです。
Amazonは当時、同社にとって過去最高となる20億ドル(約2772億円)もの四半期利益を計上したばかりでした(この記録は、現在も破られていません)。
しかしベゾス氏は、その裏でこう確信していました。「すべて終わる日が、いつかきっと来る」と。「世界がかつてAmazonによってディスラプト(破壊)されたように、Amazonもやがてはディスラプトされるだろう」と自ら予測したのは2013年でした。
同年に出演したテレビ番組『60 Minutes』で、ベゾス氏はこう語りました。
心配なんかしていません。そうなるのが避けられないことはわかっていますから。
会社というのは、現れては消えていくものです。
いつの時代であれ、どれだけ輝いていても、どれだけ必要とされていても、会社は数十年か経てば消えてしまうのです。
2018年には、シアトルで開かれた全社会議で、社員に対してこう発言しました。
Amazonはいつの日か、どうにもならなくなる日が来ると、私は予測しています。
Amazonが破産する日が来るでしょう。
大企業を見てみると、その多くは寿命が30年ちょっとです。100年ちょっとではありません。
ベゾス氏が、Amazonを株式会社にしたのは1994年のこと。そしてAmazonは2023年に創業29周年を迎えます。つまり、ベゾス氏が言う大企業の平均寿命「30年ちょっと」まで、そう遠くないのです。
ベゾス氏が少なくとも10年前から公言しているこの予測が現実のものとなるまで、あとどのくらい残されているのでしょうか?
そうなるとしてもまだまだ先の話だと、普通なら思うかもしれません。ですが、最近明らかになった3つの事実を考えると、「Amazonの死」は、それほど遠い未来の出来事ではない可能性があります。
では、その3つの事実を見ていきましょう。
1. 顧客満足度
『ウォールストリートジャーナル紙』は2022年11月、さまざまな調査結果にもとづいて、Amazonの顧客満足度が以前よりも下がっていると報じました。
ある調査では、顧客のうちAmazonに「極めて満足している」または「非常に満足している」と回答した者は79%(この数字は、10年前の88%からダウンしています)。
Amazonの顧客1000人を対象にした別の調査では、「商品の到着が遅れることが頻繁にある」、または「質の悪い商品が届く」と回答した人が3分の1近くに達したそうです。
公平な立場から言うならば、これらの数字はそこまでひどいとは思えません。ですが、Amazonは創業当初から、顧客を中心に据えてきました。
実際、Amazonが株主に宛てた最初の書簡23通の内容をワードクラウド・ジェネレーターにかけたところ、いちばん多く使われていた言葉は「顧客」で、その回数は実に443回にのぼります。
もしこの基本理念が揺らぎはじめているとしたら、それをはっきりと示す初期兆候が、こうした顧客満足度の調査結果なのかもしれません。
2. レイオフ
『ニューヨークタイムズ紙』は2022年11月、Amazonが従業員1万人以上のレイオフを計画していると報じました。この計画が実行されれば、同社にとって過去最大の人員削減となります(8万人の自然減を除く)。
ある関係者の話によると、この数字はまだ流動的であるほか、レイオフは一斉に行なわれるのではなく、各プロジェクトの完了に合わせてチーム単位で実施される見込みだという。
もし1万人のラインで落ち着くなら、その数は、Amazon従業員の約3%にのぼる。
また、150万人を超す同社グローバル労働人口(その中心は時給労働者)の1%未満に相当する。
Amazonのアンディ・ジャシーCEOは、社員に宛てた連絡メモでこう書いています。
私がこの役職に就いて約1年半になりますが、その間に下してきた決断の中で、これは間違いなく、もっとも困難な決断です。
3. Alexa
レイオフの件とも少し関係していますが、各種報道によると、かつてはベゾス氏の「発案」で「お気に入りプロジェクト」だったAlexa部門がいまや、「チャンスを活かせなかった存在」になってしまっているようです。
どういうことかというと、Echoデバイスの売れ行き自体は好調を維持しているものの、その利益率は高いとは言えないとのこと。
Amazonがそもそも目指していたのは、「スマートスピーカーを売る」ことではなく、「ユーザーがスマートスピーカーを使った行動で利益を上げる」ことでした。
ところが、音声ショッピングも音声アプリも、Amazonが思い描いていたようには人気を博していません。
それどころか、Alexa部門は2018年に50億ドル(約6927億円)の赤字を出し、2022年も10億ドル(約1385億円)の赤字が見込まれています。
多くの正しい予測をおこなってきたジェフ・ベゾス
とはいえ、Amazonの死がいますぐ訪れるとは、私は思っていません。少なくとも、この記事を読んでくれている皆さんのほとんどが生きている間は。
1つには、たとえ失敗し、破産した企業であっても、一度死んだあとに生き長らえることができる場合があるからです。
その証拠に、トイザらスは生還を果たしました。百貨店のシアーズは現在も、22店舗を構えています。さらには、レンタルビデオのブロックバスターも、最後に残った1店舗が繁盛しているのです。
しかし、私が無料電子書籍『Jeff Bezos Regrets Nothing』を執筆していたときのベゾス氏は、そう遠くない将来、今度はAmazonがノックアウトされる側に回るという考えに、ほぼとりつかれていました。
ベゾス氏はこれまで、正しい予測を多く立ててきました。それを思うと、残酷な真実ではありますが、Amazonについても、その言葉どおりの結末を迎えることになるのかもしれません。
Source: The Wall Street Journal, The New York Times, CNBC, Business Insider, nj.com, Jeff Bezos Regrets Nothing
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