チームで働いていると、上司に対する不満をたくさん聞きます。
一番よくあるのは、上司が部下やチームメンバーに、仕事の責任を持たせないというものです。
チーム内にいつも仕事をしていない人がいても、上司がそれに対して何もしないのです。
控えめに言っても迷惑なことですが、それが長期間続くと腹が立つだけでなく、チーム全体に悪影響を及ぼします。
結局、たった1人「怠け者」や「ネガティブな人」、「嫌な人」がいるだけで、チーム全体のパフォーマンスが30〜40%落ちることもあります。
もちろん、普通はこのような成果を上げない人の問題に対処する責任は上司にありますが、もし上司が対処しない場合はどうすればいいのでしょうか?
上司に指導力がないのかもしれませんし、その人が高度なスキルを持っていて、上司の上司がそれを評価していて辞めさせられない(もしくは辞めさせるとリスクがある)のかもしれません。
様々な要因が考えられますが、どれもあなたにはコントロールできないことです。
私は、定期的に自分のチームにはこう言っています。
「チームが成功するには、上司だけでなくチーム全員に責任がある」
上司だけでなく、あなたやほかのチームメンバーも、怠け者やネガティブな人、嫌な人に対処しなければなりません。
今回はその方法を、5つのポイントに分けてお教えしましょう。
1. 貢献していることに感謝する
チームの信頼関係を築くのに非常に大事なのは、チームメンバーが互いに感謝をしているかどうかです。
「予算を期限内に送ってくれてありがとう」というような感謝を言葉に表すだけでなく、「先週のプレゼンは完璧だったね。よかったよ!」というような、仕事のパフォーマンスに関することも、認め合うことが大事です。
感謝の気持ちをさらに深めていきます。その人にしかできないチームに対する貢献に、価値があると認めましょう。その人の姿勢や態度、人生経験などです。
たとえば、「今日は私たちの意見に反対してくれてありがとう。あなたの視点のおかげで、自分たちの仕事を違った目線で見れるようになって、さらに仕事が良くなったと思う」というようなことです。
他人が示した価値観を理解することは、互いを尊重する気持ちの土台となります。
あなたが責任を持って欲しいと思っている人のことを考えてみてください。その人たちが、あなたから尊重されているとわかれば、あなたの言葉に耳を傾ける可能性が高くなるでしょう。
2. 自分の仕事をまっとうする
人に責任を持たせるには信頼が必要です。自分自身のパフォーマンスも見つめ直しましょう。
締切は守っているか、噂話をしないようにしているか、常にやると言ったことは高いクオリティで実行しているか、など考えてみてください。
きちんとできていれば、信頼され、影響力を発揮できる可能性が高いです。また、あなたの意見や考えに、チームメンバーが耳を傾けてくれる可能性も高いでしょう。
あなたがきちんと仕事をまっとうしていなければ、ほかの人に責任を持たせるのは難しいです。
3. 何を期待しているのか話し合う
何を期待されているのかわかっていない人は、期待に応えることが難しいです。
責任問題というのは、期待している(期待されている)ものの誤解であることが本当に多いです。
私は以前、48時間以内にメールの返信をすることがほとんどない、他部署の同僚に腹を立てていました。メールの返信に3〜4日かかることが大半だったのです。
あまりにも頭に来た週があり、私は食堂で彼のところに行って、こんな風に嫌味を言いました。「ところで、メールに返信するつもりはあるんですかね?」
彼は困惑していましたが、ありがたいことに無視したりしませんでした。
話してみると、すぐに彼の部署ではメールの返信は4日以内にすればよく、3日であれば上出来だということがわかりました。彼の上司は、1日中メールをすることを求めておらず、メールできるタイミングで返信するようにと言っていたのです。
私は驚きました。私たちの部署ではすべてメールで対応しており、即返信していました。この会話の後、私たちは2〜3日以内に返信するということで合意しました。
責任に関する問題がある場合、期待に対する誤解が原因であることが多いです。一緒に働くうえで、互いに何を期待しているのか、チーム内で話し合う機会を設けたほうがいいでしょう。
たとえば、会議を時間通りにはじめ、時間通りに終わらせるとか、仕事を完了させる期限について、などです。
4. シンプルにするよう心がける
人に責任を取らせることは、居心地が悪かったり、人によっては恐怖だったりもします。
思い当たるふしがある人は、相手を怒らせるのではないかとか、無視されるのではと心配しているのではないでしょうか。
居心地のいい、互いを尊重し合っているような職場でも、このような恐怖は消えないものです。これはよくあることですが、最悪の事態を予測しているからでしょう。
常にシンプルにすることで、恐怖心は薄れます。
中立的で、好奇心で聞くというトーンで話しかけます。問題を見落としているかもしれないとか、状況に気づいていないかもしれないという、疑問を持つことのメリットを相手に与えます。
そして、手短に、期待を込めて聞いてみます。「金曜までにレポートを上げると言ってたよね。今日は火曜だけど、いつできる?」
多くの人にとって、頭の中だけでなく、言おうとしていることを声に出して練習するほうがうまくいきます。前に言ったことがあることは、自信を持って、思った通りに言える確率が高いです。
5. 放っておくか、上に問題を報告する
「だけど、率直に話したところで、無視されたり、相手にされなかったりしたらどうすればいいんですか?」という疑問もよく聞きます。
チームメンバーが互いに感謝し合い、信用し、期待について話し合っていれば、無視するということはほぼありません。これは、責任問題に発展する前に、この3つの条件を整えることの重要性を物語っています。
とはいえ、他人の反応をコントロールすることはできません。誰もが自分の行動は自分で決めるものなので、相手の反応は相手の問題であり、あなたの問題ではありません。
ここで選択肢は2つあります。「放っておく」か、「上に問題を報告する」かです。
何か問題が起こっても、直接自分の仕事に影響を与えないような状況であれば、放っておきましょう。迷惑だと感じたり、イライラする気持ちも手放します。
自分の仕事にも影響を与えたり、安全や健康にリスクが及ぶような状況であれば、上司や会社や組織の報告規定に従って、上に問題を報告しましょう。
職場は、全員がきちんと責任を持つことでもっともうまく機能します。
確かに、管理職は重要な役割を担っていますが、ひとりひとりの従業員も同じです。怠け者やネガティブな人、嫌な人の責任を、上司が追及するのを待つ必要はありません。
チーム内の誰でも、尊重、信頼、期待という土台を築くことができるのです。
Source: The Wall Street Journal