敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。

今回お話を伺ったのは、東京と浜松市で2拠点生活をする建築家の岡田 宰(おかだつかさ)さんです。

岡田 宰

建築家・デザイナー 設計事務所 2id Architects 代表 | 環境配慮型アウトドブランド️we know enough < 設立 | おかだソーセージ店主。東京-浜松の2拠点生活。 良い建築家の前に" 良き生活者 " として、豊かな暮らしを探求中。Instagram / Twitter / note

岡田さんは建築家として2社で働き、イタリア留学も経験。現在は設計事務所 2id Architectsを立ち上げ、JINSやBASEといった企業の店舗設計や住宅・オフィスなども手掛けています。そんな岡田さんは、東京と浜松の2拠点生活を実践中。建築家がペーパーレスを進めた方法とは?

岡田宰さんの一問一答

氏名:岡田宰

職業:建築家

居住地:静岡県浜松市

現在のコンピュータ:MacBook Pro 14 inch M1

現在のモバイル:iPhone 13 mini

現在のノートとペン:iPad Pro 12.9 inch with Apple pencil

仕事スタイルを一言でいうと:自分の時間で生きる

岡田さんが手掛けたJINSのロードサイド店舗のデザイン
岡田さんが手掛けたJINSのロードサイド店舗のデザイン
Photo : Daisuke Shima

従業員も2拠点生活を推奨する一風変わった建築家

――いつから2拠点生活をはじめましたか?

31歳の時に浜松に移住し、その後に32歳のときに、東京で今の設計事務所を立ち上げそのときから二拠点生活がはじまりました。

そのころから、浜松に家があって、東京にオフィスがあるという暮らしを送っています。

平日3日は東京、それ以外は浜松に滞在しています。東京滞在時は、ホテル住まいなんです。部屋も一時期借りていましたが、掃除がめんどくさいのと、コストもそこまで変わらなかったので、ホテル暮らしに切り替えました。

――2拠点生活をはじめたきっかけは?

1つは、東京も地方も両方魅力的で、どちらも手放したくないから。都内の刺激的なものに触れた後、地方に戻ると別荘に来ているような贅沢な気分になります。まさに、いいとこ取りです。

もう1つは、リスクヘッジが理由です。仕事もクライアントも含めて、分散させておいたほうが、今の不確実な世界ではリスクヘッジになるかなと。

――従業員の方は毎日出社しているのでしょうか?

コロナ禍になって、僕が事務所に行かなくなったことで、会社は完全リモートにシフトしました。オフィスには最近まで従業員がいましたが、そのうちの1人は長野県松本市に移住をして、2拠点生活をはじめています(笑)。東京での打ち合わせが必要なときだけ、上京してもらっています。

――建築家としてリモートワークに挑戦するとき、どのような苦労がありましたか?

2拠点生活をするために、仕事の仕方、資料の作り方、プレゼンの仕方まで、やり方を180度変えました。

たとえば、プリンターを廃止。建材のカタログも事務所に並べているのが一般的ですが、それもデジタルに置き換えました。また、プレゼンをするときに使う、建築物の模型も廃止して、CGやパースに変更。これらは割り切って、デジタルに切り替えてしまいました。

二拠点生活を想定して設計した、浜松にある自邸。
二拠点生活を想定して設計した、浜松にある自邸。
Photo : 矢野紀行

iPadがない生活や仕事は考えられない

――仕事をする上で、欠かせないアプリは?

iPadのGoodNotesです。

――そのアプリで何をしますか?

これがないと仕事にならないというほど、重宝しています。

メモをするのはもちろん、PDFの図面を取り込んで赤字で書き込んで、そのデータをSlackやメールで簡単に共有しています。編集性が素晴らしいですね。シンプルにゼロベースで、アイデアをスケッチしたり、パースを乗せて、そこにスケッチを乗せていくこともできます。

移動時間を生産的に過ごす方法

――仕事のなかで編み出したライフハックは?

新幹線は移動オフィス」です。

2拠点生活をしていると「移動が大変だね」とよく言われますが、全然大変じゃなくて。確かに新幹線で移動するので、通勤にトータル3時間はかかります。

でも、新幹線はオフィスと考えれば、それは通勤時間ではなく、仕事ができる時間となります。新幹線に乗った瞬間が、オフィスに出社した瞬間だと思っています。

だから、新幹線で寝ることもないですし、リクライニングを倒すこともありません。

パソコンを開いて、仕事をします。これが、捗るんですよ! インターネットはあえて繋がないで、この時間は電話には出ません。通知も来ないので、あえてオフラインの状態を作ることで、集中力を高めています。行きも帰りも、新幹線の時間は仕事の時間と割り切っています。

リモートワークでコミュニケーション不足を実感。雑談を意図的に増やした方法

――お気に入りツール(またはアプリ)を2つ教えて。

1つ目は、Dropboxです。

会社内の情報はすべてクラウドに上げています。チームとのデータのやり取りもすべて、Dropboxを使っています。2拠点生活なので、どこからでもアクセスできないと仕事になりません。Dropboxは欠かせないツールですね。

ベタですが、Slackです。

仕事のコミュニケーションは、すべてSlack。チャンネルはプロジェクトごとに分けて使っています。特別な使い方はしていませんが、コミュニケーションツールとして欠かせない存在です。

――オンラインでしか会わない日も多いとは思いますが、雑談が減る対策は?

雑談が減るのは良くありませんが、雑談のために2拠点生活を辞められるわけでもありません。だから、雑談を違う形で実践する必要がありますよね。

弊社ではこんなことがありました。新しいスタッフが入って、リモートで仕事をしてもらうことになりました。

指示を出したつもりが、スタッフが理解できていなかったり、彼が聞きたいことが溜まっていたり、指示したことに対してのミスも増えて…シンプルにコミュニケーション不足だったんですが。

でも、テキストベースで指示を出すのって、疲れますよね。細かく伝えることが徐々に少なくなって、コミュニケーション不足の負のループが生まれていました。

そこで、弊社で取り組みはじめたのが、毎日具体的な話がなくても、オンラインでミーティングする時間をとること。時間は決まっていて、スキップする日もあります。用事のあるなし関係なく、話せる時間を確保することで、コミュニケーションの濃度を高めています。

脱マウスでトラックパッドを極めた

――これは人より得意だと思うことは?

「どこでも資料作成、作図、デザインができること」です。

建築家の仕事は、パースを作ったり、図面を描いたり、大きなモニターでマウスを使って、落ち着いた場所で働くような仕事でした。

私のように移動しながら仕事をするのは、レアケースです。だからこそ、どこでも仕事ができるように、自分を鍛えました。今は、新幹線の中で、図面も描きますよ。

あと、そのおかげか、トラックパッドは誰よりも極めていると思います。図面もトラックパッドで書きますし、家や事務所でマウスが使える環境でも、トラックパッドを使うほどです。マウスでやったほうが速いのはわかっているのですが、マウスに頼ってしまうのはよくないなと。

デザインはロジカルに、プレゼンは情緒的に

――これまでもらったアドバイスで印象的なものは?

「論理では人は共感しない」という妻からのアドバイスです。

建築やインテリアデザインの仕事って、ロジカルに考える仕事なんです。たとえば、色や形は感覚で決めているわけではなく、理由や目的があって選んでいます。

一見、おしゃれにしていると認識されがちですが、おしゃれは結果で理由がしっかりとあるんです。

でも、お客様に説明するとき、理論的に説明をしても正直響きません。デザインをするときはロジカルに進め、伝えるときは情緒的にしないと共感されないんです。

一時期、なんで共感してもらえないのか悩んでいて、妻に相談したときに、「人は論理じゃ動かないのよ。このデザインだとかっこいいでしょ、気持ちいいでしょと言われたほうがスッと入ってくる」と。確かにそうだなと思いましたね。

――自分の仕事哲学について一言

「自分の時間で生きる」

自分で、時間軸を決めるようにしています。単純なことで言えば、納期。金曜日までに図面を提出してくださいとクライアントに言われたとします。

だからと言って、クライアントに合わせて金曜日に提出する必要はありません。納期を守っていれば、水曜日や木曜日に提出してもいい。

自分で主体的に時間をコントロールできるように、自分の時間軸で行動するのが大事だと思っています。重要なのは、自分で時間を捉えて、スケジュールを組むということですね。

Source: 2id Architects, GoodNotes, Instagram, Twitter, note