道なき道を拓き、未だ見ぬ新しい価値を世に送り出す人「起業家」。未来に向かって挑むその原動力は? 仕事における哲学は…? 時代をリードする起業家へのインタビュー『仕事論。』シリーズ。

今回は、2020年に安心して買える保証サービス「proteger(プロテジャー)」を立ち上げ注目を集めている、株式会社Kiva代表取締役・野尻航太さんにお話を聞きました。

高校3年、1冊のビジネス書との出会い。そして起業家へ

──起業家を目指したきっかけは?

高校3年生の頃、あるビジネス書を読んだのが発端です。もう、その本の名前は忘れてしまったのですが、衝撃を受けました。

僕の両親はどちらも教師。教師になるのが当たり前だと思いながら育ったので、ビジネスや起業家の世界を知って、こういう働き方もあるのか、と。

以来、森岡毅さんの『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』(KADOKAWA)やイーロン・マスク氏の本、IT起業家の著書をたくさん読みました。

教職とは真逆の世界だから、とても惹かれたのだと思います。「僕も起業したい」という思いが強くなりました。

──では、大学は経営学部に?

はい。北海学園大学の経営学部に進学しました。

同学の先輩には株式会社ニトリホールディングス創業者の似鳥昭雄さんなどがいます。

でも、大学2年のときに中退しまして…。

──大学を中退したのはなぜですか?

今思うとめちゃくちゃ生意気ですが、「この講義を受けてお金を稼げるようになるだろうか?」と思ってしまったんです。色んなビジネス書を読み漁っていたので、変にかぶれていたのだと思います。

まずは企業に勤めるにしても、やってみたほうがいいんじゃないか。そう思ったら我慢ができなくなって、20歳のときに身ひとつで上京しました

ビジネスパートナーとの出会いは、コーヒーショップ

──上京後にしたことは?

ITの分野で起業したいという漠然とした思いはありましたが、何をしていいかわからない状態でした。スキルもないし、人脈もない。

そこで、新規事業を何度も立ち上げる「連続起業」で成功している方から学びたいと思い、「ウリドキ」というベンチャー企業に入社しました。

──共同創業者の磯崎裕太さんとの出会いは?

元々、僕は彼のブログの読者だったんです。

ある日、彼がTwitterで「これからタリーズで勉強します」と呟いていたので、迷わずそこに出向きました。

──コーヒーショップにアポなしで押しかけた!?

僕には人脈がないので、基本的に凸る(トツる:突撃すること)しかないんです(笑)。

──ずっとビジネスパートナーを探すためにアンテナをはっていたのでしょうか?

そうですね。パートナーになってくれるエンジニアを探すために、エンジニア向けの勉強会にも参加しました。

僕はエンジニアじゃないので、その場では“それっぽい”会話で周囲と話を合わせたりして(笑)。

たくさんのエンジニアに会いました。でも、磯崎の「エンジニアリングは手段だ」「(エンジニアは)使われないと意味がない」という、気概やマインドを持っている人は、ほかにいなかった。

彼の考え方に共感し、「ふたりで会社を起こそう」と決めたのが2020年10月頃。上京して約2年後でした。

映画を観る感覚と同じ。ビジネスモデルのリサーチは面白い

──磯崎さんと起業すると決めたとき、具体的な事業イメージがありましたか?

いえ、実は事業内容そのものはなかなか固まらずでした。ただ、僕が毎日続けていたのは、海外のビジネスアイデアをチェックすること。

その中で「Extend(エクステンド)」という、アメリカのスタートアップを見つけました。「Extend」は、延長保証サービスをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース:プログラムやwebサービス間をつなぐインターフェース)で提供している企業。このビジネスモデルに可能性を感じたんです。

──ビジネスモデルの見極めは、難しいように感じます。

そうですね。僕は金融業界での経験がないので、金融業界に近い方にヒアリングをしたり、あらゆる角度から収益性を考えました。元々『四季報』やTechCrunchなどをチェックするのがすごく好きなんです。たとえるなら、動画配信サービスで映画やドラマを観る感覚と同じで、僕にとってはとても面白い! 知見のない分野でも、徹底的に調べ上げれば理解もできるし勝負できると思っています。

2020年10月に起業準備を始めて、2カ月後の12月に「Kiva」を設立しました。

──すごいスピードですね。

会社を起こすまで苦労はしましたが、いい事業者さんやサポート企業、共同創業者のおかげで実現しました。

自分の辿ってきた道のりについては一切後悔はしていません。でも、将来自分の子どもが会社を起こしたいと言ったら…絶対に反対すると思います(笑)。

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