終身雇用に伴う年功序列が一般的だったこれまでの日本においては、部下への指導方法も「上から下へ」と受け継がれてきました。自分が上司になったら、上司から受けた指導をそのまま部下に行えばよかったわけです。
ところが、それはもはや過去の話でもあります。いまは必ずしも部下が年下とは限らず、部下が持つ経験や実績も多種多様。育ってきた環境もそれぞれまったく異なるため、「イマドキ部下」を伸ばすには、これまでに部下への指導方法では無理が生じてしまうわけです。
『イマドキ部下を伸ばす 7つの技術』(福山敦士 著、あさ出版)の著者も、「個性が重視され、多様化が当たり前という時代の流れもあり、好きなこと、得意なことにフォーカスして仕事をすることがスタンダードになりつつある」と指摘しています。
そんな時代に生まれ育ったイマドキ部下を理解し、伸ばすためには、「イマドキ上司」を目指す必要があるのだとも。
イマドキ上司とは、一言で言えば「プロデュースできる人」です。
プロデュースできる人とは、たとえば、ある営業目標を達成するときに自ら営業するのはもちろん、部下を率いて営業数字を上げたり、自分の上司や社長を巻き込んで営業活動をしたり予算を組んだりと、組織の成果を最大化するために、必要であれば柔軟な判断や指示ができる人のこと。
(「はじめにーー『イマドキ部下』を伸ばす『イマドキ上司』とは」より)
つまり「組織の成果の最大化」という目的のもと、“上司としての”自分自身の振る舞いを決められること。それこそが、いま求められているイマドキ上司のあり方だというのです。
こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうはChapter 5「イマドキ部下を伸ばす技術⑤『人間力を磨く』に注目してみることにしましょう。
ピンチのときに動じない
上司が動じる姿を見ると、部下はいろいろと考えてしまうもの。しかし、「自分のせいかな?」「怒られたらどうしよう」などということが気になって業務に集中できなくなるとしたら、組織としてのパフォーマンスが下がってしまうことも考えられます。
またその後、上司と話す機会が持てなかったりすれば、モヤモヤした状態のままその日を過ごすことにもなってしまうでしょう。
そればかりか、ピンチに動じて慌てている上司を見た結果、冷めてしまう部下もいるに違いありません。しかし、そうなると尊敬が失われてしまうので、信頼関係を取り戻すのも大変です。
長く仕事をしていると、ミスやトラブルは必ず発生します。トラブル発生時、状況を整理せずに慌てて対応すると、ミスが連鎖し、トラブルが頻発してしまいます。
ピンチのときこそ、上司の人間力が問われます。
大切なのは、動じずに淡々と対応することです。(158〜159ページより)
だからこそ、そんなときには気持ちを落ち着かせ、「起きてしまったことは仕方ない。この状況に対処しよう」と自分にいい聞かせるべきだということ。
関わる人が増えるほどミスが起きる可能性も高まるので、ミスをカバーするための対策を立てること以外にはなにもできないわけです。(158ページより)
成果に厳しく、結果に優しく
どんな部下でも、自分の上司には立派であってほしいと願っているはず。自分に厳しく、自らを律することができる上司は、部下から信頼されるのです。とはいえ、ただ結果に厳しいだけだと、部下だって息が詰まってしまう。それもまた事実ではあるでしょう。
結果とは、最終的な状態を指します。結果に関しては、タイミングや他者の影響なども関係し、必ずしも自分だけでコントロールできることではありません。
一方、成果は100%自分がコントロールできることです。
部下としてはやるべきことをやったにもかかわらず、結果のみで評価を語られてしまうとやる気を失います。(中略)
結果の評価は、簡単で誰でもできます。人間力を感じさせる上司は、部下の成果に目を向けます。(162〜163ページより)
査定評価をするうえで、結果の目標設定はされているはず。しかしそれに加え、部下との間で結果を達成するための「行動目標」を設定することを著者はすすめています。それは、ともに「成果」を追いかける関係をつくるという意味で重要だというのです。
具体的には、「◯本の企画書をつくる」「◯冊の専門書を読む」「◯件の新規開拓電話をかける」など。そして掲げた行動目標の先に結果が伴うかを、上司としてコントロールしてあげることが重要だということ。しかも、なるべく計測可能な数字目標を掲げると、外的要因に関係なく「達成できたかどうか」を判断できるわけです。(162ページより)
仕事以外でゆるさを見せる
自分に厳しくいることが大切だとはいっても、人間である以上は完璧であることなど不可能。それどころか完璧すぎると周囲からの期待値が上がりすぎ、少しのミスで信頼が落ちてしまうことさえあります。
したがって、仕事以外では適度な“ゆるさ”を見せることも大切。つまり、仕事以外の話題を受け入れる余地をつくっておくべきなのです。
感情的に「この人の言うことを聞こう」となってもらう方法として、仕事以外の顔を見せるのです。そのゆるさが、部下に親近感を与えます。(166ページより)
たとえば著者の場合、野球の話題をSNSで発信したり、業務以外の場で率先して話題に出すようにしているようです。そしてそういった話題のときは、表情を崩すことを心がけているのだとか。
仕事で絶対に外せないポイントを決めて実行したうえで、人間的な側面を感じさせるような姿を部下に積極的に見せているということ。それは、マネジメントにおける大きな武器になるそうです。(165ページより)
著者が本書で提唱しているイマドキ上司の基本は、従来のように“立場”で部下を指導するのではなく、上司としての“役割”を「演じる」ことによって部下を伸ばすということだそう。
そしてゴールは、上司である自分自身を変えることにあるといいます。そんな本書は、部下との関係性に悩むすべてのビジネスパーソンに役立ってくれることでしょう。
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Source: あさ出版