1冊目に読みたい DXの教科書(荒瀬光宏 著、SBクリエイティブ)の著者は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)で日本の競争力を飛躍的に向上させること」をミッションに掲げて活動しているという人物。

しかし、日本の競争力は明らかに低下しており、環境に合わせてビジネスを変革できていない組織が大多数だと実感しているのだそうです。

日本の企業に欠けているのは、データやデジタル技術の活用を前提に業務を再構築することです。

このようなDXの遅れが、競争力低下の重大な原因であると感じたことが、私が起業し、DXについての専門的な研究と実践を進めてきた原動力となりました。(「はじめに」より)

著者は、DX成功に欠かせないのは、組織に属する全員が共通理解を持つことだと主張しています。そのため本書は、組織全体の共通理解を促す手引き書として活用できるように書かれているわけです。

しかし、そもそもDXによってビジネスパーソンの役割はどのように変わっていくのでしょうか? そのことを確認するために、きょうはChapter 8「未来予測とこれからの仕事」に焦点を当ててみたいと思います。

これからの人の役割

デジタル技術による環境の変化は、仕事における“人の役割”にも大きな変化をもたらすに違いありません。その結果、人の能力を活用すべき仕事は以下の3つに集約されると著者は述べています。

1. 社会のあるべき姿、方向性を指し示すこと

社会や顧客の課題に取り組み、あるべき社会や事業の方向性などを決める能力は、人にしか備わっていないものであり、AIには不可能。また近年、企業のあるべき姿は、単に利益を出して株主に還元すればいいというような、従来の資本主義の発想では済まされなくなってもいます。

現代では、企業が地球環境や貧富の差、食糧問題など「サスティナビリティ全般にどう貢献するか」が世間から評価されるようになっているのです。なお、ここで重要なのは、企業や行政において、社会の変化に対応しながら今後の方向性を決め、判断するのは“人にしかできない仕事”だということ。

2. 業務のあるべき姿、方向性を指し示すこと

ご存知のとおり、AIは決められた数値を観測しながら、自律的にアルゴリズムを改善することができます。が、目的の見なおしはできません。

たとえば工場の1日の生産数を最大化することを目的として設定すると、入手できる限りの情報を駆使し、生産効率を高め続けることになるでしょう。その際、どれだけ製品在庫が確保されたとしても、生産活動の手を緩めることはありません。

つまり企業で生産の目的を考え、考慮すべき事象(適正在庫、不良品ゼロ、安全操業など)に優先順位を設定して業務を見なおすのは、人にしかできない仕事だということです。

3. 人にしかできない仕事「人への接客」

たとえサービスがデジタル化したとしても、ロボットや機械より人間のほうが得意な仕事はあるものです。たとえばその代表が、コミュニケーションを必要とする、保育士やカウンセラーなどの仕事。

またコールセンターも、コミュニケーションという観点から考えると、人に適した要素の多い仕事だといえるでしょう。

顧客は、電話した目的以外にオペレーターとの会話にも期待している場合があるもの。しかし、そういった「誰かと話したいという気持ち」を満たすことができるのは人だけなのです。(182ページより)

人が持つべきスキル

人の新しい役割のなかでは、その場の状況や目的に応じた思考能力が求められるもの。そのため、以下のスキルを意図的に伸ばしていく必要があると著者は指摘しています。

1. 課題を定義する力

価値創造は顧客課題を出発点とするものであるため、人に「課題を定義する力」が求められるのは当然の話。また、既存業務の見なおしには、課題定義の前段階の「課題を発見する力」も必要。

したがって、これらのスキルを高めるために、「この業務の目的はなにか?」「なぜこのプロセスになっているのか?」など、すべての事業に対して“WHY”を繰り返す思考を身につけることが求められるわけです。

2. コミュニケーション力

組織が変化し続けることを妨げる要因の多くは、組織内の人々の不十分な理解や反発から生じるもの。そのため、「誰がどのように反発しそうか」「どのようにしたら協力を得られるか」など、周囲の人と関係性を築き、他人を書き込むコミュニケーション力が重要性を増すわけです。

そしてコミュニケーション力の向上のためには、人の行動やその背景にある感情を理解することが必要。そのためには、自分と異なる意見を持つ立場の人の声に耳を傾け、多様な考え方を知る機会を意図的に増やすことが有効だと著者はいいます。

3. 常識を疑う力

変化が続く環境においては、従来の常識を疑う力が重要な意味を持つもの。常識や伝統、前例、いままでの知識や成功体験などにこだわらず、考えて行動する必要があるということです。

なお常識を疑う力を高めるためには、上記1)、2)のスキル向上策に加え、いまの組織の常識から距離をとることが大切だそう。

たとえば、商品やサービスを利用している顧客の様子を自分の目で確かめたり、可能であれば、他業界やスタートアップ企業に出向し、強制的に異なるコミュニケーションに参加したりしてみる。そういったこともまた、常識を疑う力を養うために役立つわけです。(184ページより)

組織を挙げてDXに取り組む際の出発点としても、本書を活用してほしいと著者は述べています。DXの基本はもちろんのこと、実現するための有効な手段を理解するためにも、大きく活用できそうです。

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Source: SBクリエイティブ