「知識やノウハウが豊富」だからといって、「仕事ができる」ということにはならない。なぜなら「知識」や「ノウハウ」は仕事をするうえでの必須条件ではあっても、十分条件ではないからーー。

Deep Skill ディープ・スキル 人と組織を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」』(石川 明 著、ダイヤモンド社)の著者は、こう主張しています。

では、なにが重要なのかといえば、それは「実行力」だそう。「知識」や「ノウハウ」を活用しつつ、具体的に仕事を前に動かしていく「実行力」こそがものをいうということです。

仕事を「実行」して「結果」を出すためには、人と組織を動かすことが必要です。しかし、それはとても難しいことでもあるでしょう。「組織力学」に対する深い洞察がなければ、組織を動かすことはできず、それどころか組織に押し潰されてしまうこともありうるからです。

そのため著者は、このように考えているのだそうです。

「人間心理」と「組織力学」に対する深い洞察力と的確な行動力を兼ね備え、人と組織を巧みに動かす「実行力」を身につけたときに初めて、「仕事ができる人」という評価を勝ち取れるのだと。

これはビジネススクールで学べるような「理論」を超えた、「ヒューマン・スキル」とでも言うべきもの。

「深い洞察」に基づいた「ヒューマン・スキル」であることから、私はこれを「Deep Skill(ディープ・スキル)」と名づけました。

そして、その「ディープ・スキル」を、私なりに言語化しようと試みたのが本書です。(「はじめに」より)

世の中の変化を敏感に察知し、それに合わせて組織やマネジメントを変化させていくためには、「ディープ・スキル」を身につけた「仕事ができる人」になる必要があると著者は断言しています。

そうした考え方に基づく本書の第2章「『人間関係』を武器とする」のなかから、きょうは「話し方」について語られている09「“敏腕ビジネスマン”のように話さない 『話がうまい人』ではなく『話ができる人』を目指せ」に注目してみたいと思います。

仕事ができる人はどんな「話し方」をするのか

仕事ができる人の「話し方」とはどのようなものかと問われれば、立て板に水の口調で理路整然と話を進める人物をイメージするかもしれません。自らの提案を非の打ちどころなく説明して「一発OK」を勝ち取り、反対意見が出ても弁舌巧みに説き伏せるような。

著者も若いころはそんなイメージを持っており、自身もそういった姿勢でいろいろな人を説得しようと躍起になっていたのだといいます。ところが、話に理解や共感を示してくれる人がなかなか現れず、結果的にはそれが完全に裏目に出てしまったのだとか。

しかし、いまとなってはそれを当たり前のことだと理解できているそうです。

そもそも人間は、他人の話をじっと聞き続けることに苦痛を感じるもの。そのため、当時の著者のように、自分の企画について滔々と説明しようとしても、相手が共感してくれる可能性が低くなっても当然だからです。

なお、そのときは悪いことに、ビジネススクールで仕込んだ「知識」や「理論」を振り回して相手を説き伏せようとしていたのだそうです。しかしそれは、知識や理論で相手をねじ伏せようとしているのと同じこと。したがって、相手の心理的な抵抗が強くなったとしても当たり前であるわけです。

これはいわば“勉強の落とし穴”とでも言うべきものです。

ビジネススクールに通ったり、書籍を読んだりして、インプットされた「にわか知識」や「にわか理論」を振り回すのは非常に危険。ましてや、その「知識」や「理論」を“教えてあげる”などという態度を取れば、「何を偉そうに」と反感を買うだけで、話すらろくに聞いてもらえなくなるのです。(122ページより)

現在、ビジネススクールの教員を務めている著者は、だからこそ自身の経験を紹介しながら、「それではダメだ」と懇切丁寧に伝えるようにしているのだそうです。(120ページより)

相手の「話したいこと」を、気持ちよく引き出す「話し方」

人間は、誰かに「自分の話を聞いてもらいたい」と感じる生き物であり、それは「誰かのよい話を聞きたい」という欲求よりもはるかに大きいもの。

だからこそ、相手の話を上手に引き出すことができれば、お客さまとの距離感もあっという間に縮まると著者はいいます。

とはいえ、不躾に聞き出そうとしても、ただ警戒されてしまうだけでしょう。そこで重要なのが、当たり障りのない話題を提供しつつ、さりげなく相手の反応を観察すること。

そうすれば、興味のある話題に触れた瞬間には、ぐっと身を乗り出したり、表情が明るくなるなど、相手になんらかの反応があるはず。そして、その瞬間をつかみさえすれば、あとはその話題を掘り下げていくことができる。すると、お客さまの話にはどんどん熱が入ってくるわけです。

なお著者によれば、ここで大切なのが「相槌」。お客さまの話に余計な口を挟むのではなく、「なるほど」「いいですね」など適切なタイミングで相槌を打つということ。そうすればお客さまはどんどん気持ちよく、話したいことを話してくださるはずだからです。したがって、そうなったら以後はそれにたっぷりとつきあえばいいのです。

人間というものは、自分が気持ちよく話すと、その話に付き合ってくれた相手に対して「感謝」の気持ちをもつものです。あるいは、「負い目」のようなものを感じると言ってもいいかもしれません。

つまり、「自分がこれだけ気持ちよく話をしたのだから、今度は、相手の話も聞いてあげなければ」「この人のために何かしてあげたい」という気持ちをもってもらえるわけです。このときはじめて、お客さまに話を聞いていただける「関係性」が生まれたといえるのです。(126ページより)

そのうえで、お客さまが抱えている「不」の部分をお聞きし、それを解消するようなサービスを提案する。そうすれば多くの場合、前向きに検討してもらえるということです。(125ページより)

「人間心理」と「組織力学」が相手である「ディープ・スキル」は底なしに深いテーマなので、本書を書くためにはかなりの勇気が必要だったと著者は振り返っています。

しかし、仕事をするうえできわめて重要なことであるにもかかわらず、これまであまり語られてこなかったのも事実。だからこそ、その空白を埋めるためにあえてチャレンジしたのだそう。

そんな思いをバックグラウンドに持つ本書を通じ、「ディープ・スキル」を磨いてみてはいかがでしょうか?

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Source: ダイヤモンド社