ビジネスエリートになるための 投資家の思考法』(奥野一成 著、ダイヤモンド社)の著者は前著『教養としての投資』において、生活のために雇用主に労働させられるだけの人を「労働者1.0」と呼んでいました。

この点について重要なポイントは、大企業すら存続が危ぶまれるような時代に「労働者1.0」のままでいることは自殺行為に近いということ。「労働者の発想」しかない人は、さまざまなリスクを伴う綱渡りの生活を強いられることになるに違いないからです。そうなると遅かれ早かれ、生活するためのお金が足りなくなってしまうことになるでしょう。

したがって、いままでの“当たり前”が通用しなくなったときこそ、従来の価値観や考え方を根本的に見なおし、一刻も早く行動に移すべきなのだと著者は訴えているのです。

そして、そのための有効な解決策が「長期投資」。それは、ビジネスの本質(=事業の経済性)を見極め、株式を長期保有することでその企業のオーナーになるということ。また、その企業が創出する価値を、オーナーとして長期的に享受すること。

ただし著者のいう投資は、そうした金銭的な投資のみを指す狭い概念ではないようです。

皆さんの持っている広義の資産は「時間」「才能」「お金」であり、この3種類の資産はある程度交換可能です。

これらの資産をぐるぐると回しながら能動的に働きかけることで、将来の資産(時間、才能、お金)を大きくすることこそが、人生における広義の投資なのです。

自分という「資産」に能動的に働きかけること、いわゆる自己投資ですね。この自己投資は、金融資産の投資に比べても、とりわけ若いビジネスパーソンにとってははるかに安全確実で高利回りだと考えます。(「はじめに」より)

この2つの投資を実現できれば、「労働者1.0」から「労働者2.0」へと人生のフェーズを高められるということ。

そこで本書では、これらに共通する具体的な思考行動特性(投資家の思考法)を解説しているのです。特徴的なのは、それを「インベスターシンキング(投資家の思考法)」と呼んでいる点です。その重要なポイントは、「ビジネスの本質である、付加価値を創出する構造を見極める」ということだとか。

きょうは、そんなインベスターの性質について解説した第2章「インベスターという生き物」内の「インベスターは鵜匠である」に焦点を当ててみましょう。いったい、これはどういう意味なのでしょうか?

インベスターは鵜匠である

インベスターを端的に表現するなら「ビジネスオーナー」だと著者はいいます。もちろんビジネスオーナーといっても、自分で資本を出して経営も行うオーナー経営者から、上場企業の株式を保有することで数千〜数万人のオーナーのひとりになるレベルまでさまざま。

しかしレベル感は多岐にわたるものの、インベスターは法的には「株主」として、保有企業が稼ぎ出してくる「価値」の持ち分を享受することで自らの富を増やしていくわけです。

とはいえ当然のことながら、どんなビジネスでも「オーナー」になれば資産形成ができるわけではありません。著者もはっきりと、「ダメなビジネスのオーナーになるほど惨めなことはありません」と述べています。

“ダメなビジネスのオーナー”になるということは、自分の大切なお金だけでなく、大切な時間までも奪われるということだからです。

たとえば、「応援したい企業の株を持ちましょう」という人がいますが、最優先すべきは「その企業が魅力的な経済性を持っているかどうか」を考えることであるはず。株を持とうとしている自分自身の夢や想いと、その事業の経済性はまったく別ものなのです。

魅力的な経済性を見極める能力を備えたインベスターは、世界中の素晴らしい事業の「オーナー」になることが可能です。

例えば、ディズニーやアマゾン。インベスターはまるで何羽もの鵜を巧みに操って鮎をつかまえる「長良川の鵜匠」です。(49ページより)

つまり、ディズニーが「鵜」だとするなら、彼らは固有に持っているコンテンツという武器を使い、映画、テーマパーク、ネット配信事業という分野で競合他社よりも多くの「鮎」を獲ってきてくれるわけです。

いっぽう、アマゾンであれば爆発的に増えるデータを蓄積するデータセンター分野において、その規模の経済性を活かしてより多くの「鮎」を獲得することになるでしょう。

もちろん鵜匠であるインベスターに、自ら鮎を釣ることはできません。それ以前に、釣るという選択もしません。あくまで、鵜の得意技や他の鵜との違いを見極めることに集中することが役割だからです。そして、あとは鵜が多くの鮎を獲って来てくれるのを待つだけ。だからこそ、「インベスターは鵜匠」なのです。(47ページより)

ローパーテクノロジーズという鵜匠

企業そのものが「鵜匠」であるケースも少なくないようで、その一例として著者はローパーテクノロジーズというアメリカの会社を挙げています。

もともとは産業用パルプや制御機器などの製造、販売が主体だったメーカー。しかし2001年にGE出身のブライアン・ジェリソン氏がCEOに就任し、ビジネスモデルの大改革を図ったのだそう。多くの買収を経て、現在はソフトウェアのグローバルニッチ・コングロマリット企業として成長、拡大しているというのです。

つまりローパーは自らが鵜匠になり、ニッチな分野のソフトウェア企業(=鵜)を買収していくことによって、どんどんそれらの企業の価値を取り込んでいるわけです。

ニッチな市場で高いシェアを誇る企業は新たに資金調達をする必要がないため、非上場を維持することが多く、皆さんのような個人投資家には投資機会が巡ってきません。

ローパーは、アデラントのような非上場のソフトウェア企業を多数買収し傘下におさめています。

我々はローパーという「鵜匠」に投資することで、アデラントのような優れた経済性を有した事業(=鵜)の間接的なオーナーになることができるのです。(51〜52ページより)

もちろんこれは、もっともベーシックな部分の話でしかありません。しかしインベスターシンキングを理解するためには、礎としてのこうした考え方を頭に入れておくことは不可欠であるはずです。(49ページより)

インベスターシンキングを身につければ、投資家として成功することができると著者は太鼓判を押しています。それは、利益を生み続ける企業を見極めて投資できるようになるということ。

また、それだけではなく、自分がビジネスで提供しているものの価値がわかるようにもなるそう。ビジネスパーソンとして一歩抜きん出た存在になるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

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Source: ダイヤモンド社