高いパフォーマンスで成果を出す経営者やビジネスリーダーに共通することは、「仕事を面白がる」力の高さ。
この「仕事は冒険だ。——時代を生き抜くキャリアの描き方」特集では、そのような人たちへのインタビューを通して「厳しい時代を楽しく生き抜くキャリアのつくり方」や「冒険のようにワクワクしながら仕事に取り組む方法」をご紹介します。
第2回は、「プロ営業師」とも呼ばれる、株式会社おくりバント会長・高山洋平さんです。インタビュー場所に指定されたのは、中野に佇むバー「中野BARスミス」。なんと、ここの2階をサテライトオフィスとして活用されているのだそう。一目見た瞬間から釘づけにされる、非常に個性的な風貌の高山さん。この土地で、どんなマインドで、日頃仕事と向き合っているのでしょうか? 今回は前編です。
▼後編はこちら
生活すべてが「仕事」であり「遊び」。それが後に仕事に活きる

——まず初めに、高山さんについて教えてください。一体どんなことをされているんですか?
営業から制作、PRまでクリエイティブに関することは何でもやっています。自信をもって得意と言える分野は営業とプロデュースかな。ちなみに「プロ営業師」を名乗らせてもらっています。
——「プロ営業師」?
はい。20年以上営業に携わって、そこそこの知見も蓄えられたので勝手に自称しています。いわば、「コミュニケーションのスペシャリスト」です。
——株式会社おくりバントは何をしている会社なんですか?
一言で言うと、広告や企業PRを手がける会社です。企業の公式SNSアカウントの運用、PR戦略の設計、テレビCMやホームページの制作など、クリエイティブに関することは何でもやります。社員数は僕を含めて4名の小さな会社です。
——ここ(中野BARスミス)はサテライトオフィスということですが、ほかにもオフィスはあるんですか?
西新宿に、親会社である株式会社アドウェイズに本社がありますが…全然行かないですね。
——なぜまた、バーの2階をサテライトオフィスに?
ここは知り合いが経営しているお店なのですが、コロナ禍に入ってからお店が営業していなかったんです。
とはいえ、毎日飲み屋には行きたかったので、コロナ前に通っていた店を借りることにしたんです。それが2年ほど前ですね。
——あまりオフィスらしさはないですよね。
飲み屋ですから(笑)。僕らもほとんど物置いてないですしね。ノートPCくらいしか使わないので。
——このスペースは普段は客席として使われているんですか?
バーの営業時間は客席として使われています。オフィスとして使うのは昼だけなので。でも、たまに朝来たら誰か知らない人が寝てたりしますよ(笑)。

——高山さんは、不動産業界から広告業界に入った経歴をお持ちですが、率直に言って仕事自体は好きですか?
今は、仕事と遊びの境目が正直ありません。ラーメンを食べている時も仕事というか。映画を見るとか、マンガを読むのもそう。クリエイティブにつながることをしている時はもちろん仕事なのですが、「何をするのも仕事」という意識があります。
僕にとってラーメンを食べることはライフワークのようなものなのですが、それが意外にも仕事につながる可能性もあるんですよ。
広告業界の人は、案件をなるべくそのジャンルに情熱を傾けている人に頼みたいものなんですよ。
仮にラーメンの広告案件があったとしたら、ラーメンのことを知らない人よりも知っている人、愛がある人にやってもらいたいと思うものです。だから、得意分野を増やしていくことが大切なんです。
その意味でいくと、生活すべてが「仕事」であり、「遊び」でもある。毎日楽しいですよ。

ただ、遊びって大変なんですよ。適当に遊んでちゃいけない。「全う」しないと意味がないんです。
今年に入って、「ワールドJポップ(外国人が日本語で歌う曲)」を専門にDJをはじめたんですが、最近では地方に呼ばれる機会も増えてきて。わざわざ時間をかけて行ったのに、フロアを盛り上げられなかったら悲しいじゃですか。
だから、時間をかけて誰も聞いたことない曲を探したり、必死にプレイの練習をしたりするんです。
人から見たらたかが遊びかもしれないけど、自分からしたらそんな遊びに時間と情熱をかけられたという既成事実が生まれる。それが自信につながって仕事にも効いてくるんですよ。
「俺たちこれだけ遊びができるんだから、仕事もできるよな」って思えてくるんです。
——遊びに真剣に向き合えたら、仕事にも真剣に向き合える、と。
そうですね。それに、うちのクライアントさんは、うちのクリエイティブが好きだから、と頼んでくれる人がほとんどなんですよ。だから、クリエイティブに関して新しいいろいろな知識を蓄えておく必要もある。
遊ぶための言い訳なのかもしれないですけど(笑)。結果そうなってますね。
——高山さんは元々遊ぶことが好きなんですか?
昔からめちゃめちゃ好きです。まず、僕は必ず毎日飲みに出かけるんですよ。それは大学生の時から続けています。
飲み屋はおもしろいんです、いろいろなことが起きますから。大学卒業後、新卒で不動産会社に就職したのですが、当時は給料が歩合制で比較的良い給料をもらっていたので、毎日飲むことにお金を費やしてましたね。
結婚後に大宮に移った後も、アドウェイズ入社後に上海に5年間駐在していた頃も、変わらず毎日飲みに繰り出していました。
言語力ではなく「エンタメの知識」で上海駐在を勝ち取った
——上海駐在が決まった時は、中国語は話せなかったと聞きました。
社内で上海駐在の募集があった時、当然のことながら「中国語か英語が一定レベル以上扱える人」という条件がありました。
ただ、僕は子どもの頃からジャッキー・チェンが出演する香港映画などをたくさん見るほどの中国フリーク。
ほかにも、「彼の作品は聖書の次に読まれている」と言われる武侠小説家・金庸の作品を読み込んだり、また、中国の映画を通して音楽にも詳しくなっていったり——。結構ニッチな分野まで知ってるんですけど、そういった部分までを深く理解している日本人ってものすごく少ないんです。
「こうした中国の知識がある広告代理店の営業って日本に数人しかいないですよね、多分」って会社にプレゼンして、まずは出張にこぎつけて。そこで案件を取ってきたことで、「おお、高山売れるじゃん」と評価を得られて、なんとか駐在が決まりました。
——それほどまで中国に対する情熱があったとは!
めちゃめちゃ行きたかった。だって大好きなんですもん。中国に住める可能性があるからアドウェイズに入社したと言っても過言ではありません。
——語学ができなくてもなんとかなるものなんですね。
ほかの国の言語を話せる人はたくさんいても、営業が得意な人ってきっと少ないですよね。その国の言語が話せれば営業ができるかというと、それはイコールではない。そうしたことを伝えて会社を説得しました。
——自分に中国語は話せないが、知識は豊富だと。
僕は、中国の映画や小説、音楽などにたくさん触れてきた。つまり、中国のカルチャーを知っているから、中国人と話が合う。結果的に仲良くなるのが早いんですよ。音楽や映画は本当に国境を越えますよね。
それで現地の人と仲良くなって、お酒が好きだからよく飲みにも行くようになる。そうすれば自然と言葉は覚えます。言語はもちろん大切ですが、人間の本質的な部分でのコミュニケショーンがもっとも重要だと思っています。