在宅勤務が浸透しはじめてから3年が経ち、リモートワークには優れた点とそうでない点(英文記事)があることが、ますます明らかになってきました。
集中して作業する仕事であれば、リモートワークに勝るものはない(英文記事)、という研究結果が次々と発表されています。
ですが、クリエイティブなコラボレーション(英文記事)を試みたり、新入社員に会社の文化や不文律を伝えようとする(英文記事)場合、リモートワークは難題を抱えます。
このような課題を克服するにはどうしたらよいのでしょうか? マイクロソフトは、少なくともそのうちの1つに役立つ豊富なデータを持っています。
同社のサティア・ナデラCEOが最近、アダム・グラント氏のポッドキャスト「Re: Thinking」で説明したように、マイクロソフトは、会社の大部分がリモートワークをしていたパンデミック時に、5万人もの社員を採用しました。
ナデラ氏はグラント氏に対し、「そのおかげで、教訓が得られました」と語っています。
やむにやまれず実施したこの大規模な実験を通じて、物理的にチームが一緒にいない状況での新入社員の研修方法について、マイクロソフトはどのような教訓を得たのでしょうか?
ナデラ氏は、何よりも、ある要素が重要だと強調しています。それは、技術でもシステムでも文化でもありません。自ら積極的に行動する上司です。
コンピューターよりもケアが重要
離れた場所で仕事をしていると、テクノロジーがすべてに勝ると思うかもしれません。
Wikiやウェビナーは、業務上の知識伝達手段の欠如を補ってくれます。会社のサーバーにログオンできなかったり、Zoomにアクセスできなかったりすると、多くの仕事をこなすことはできないでしょう。
けれども、ある程度の技術的な準備が不可欠である一方で、スムーズな新人研修において最も重要なのは、技術ではなく人、それも、ある特定の人であることを、マイクロソフトは発見しました。
「直属の上司との直接的なつながりが、何よりも重要であることがわかりました」とナデラ氏は説明します。
以前は、「1週間なり1日なり、新人研修の期間がありました。そして、多くの人がいろいろなことを手助けしてくれました。ですが今では、あなたの上司が、フルサービスのコンシェルジュのようになっています」。
その上司が責任を持って全過程を指導しなければ、信頼や文化的理解、人脈はなかなか築けないのです。
では、具体的にはどうすればよいのでしょうか? ナデラ氏は、新入社員のガイド方法に関して、以下のように主張しています。
「福利厚生は万全? 事務処理で困っていることはない?と尋ねたり、知っておく必要のある社内外の人たちを紹介したりする必要があります。
ナデラ氏は、マイクロソフトで成功したあるリーダーの例を挙げました。その人は、新入社員を「すべての人にじきじきに」紹介することに気を配っていたそうです。
「実例を挙げると、Teamsの通話をセットアップし、互いを紹介したら、自分はTeamsの通話を離れて、(新入社員が)1対1で話せるようにしていました」とナデラ氏は語っています。
人間的な触れ合いをないがしろにしてはいけない
それは、一部のリーダーたちにとっては大変な作業に聞こえるかもしれません。ですがナデラ氏は、直接会うことができない場合、既存のチームと新しいメンバーの間に強い絆を築くには、これが唯一の効果的な方法だと主張しています。
こうしたアプローチは、大量の時間とリソースを要するかもしれませんが、ナデラ氏は、「口で言うだけでなく、実際にコストをかける必要がある」ことと、「そうしたマネジメント能力を高めることに集中しなければならない」ことを説いています。
ここでリーダーが学ぶべきことは、複雑なことでも、目新しいことでもありません。リモートでの新人研修を成功させるためには、必ずしもクリエイティブな戦略(英文記事)や、最先端のテクノロジーが必要なわけではありません。
必要なのは、新入社員にパーソナルな関心をもつことができ、本気で気遣ってくれる上司です。
結局のところ、リモートでの新人研修においては、「実際に助けになってくれる人間」の代わりになるものはないのです。
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