米国のコメディアン、ヴィクター・ボーグは「笑いほど人と人との距離を縮めるものはない」という名言を残しています。

まったくその通りで、笑い・ユーモアが、人間関係の向上に役立つことに異論をはさむ人はいないでしょう。

でも、とかくユーモアのセンスがないと自認する日本人のこと、理解はしていても実行するのに高いハードルを感じる人は多そうです。

ユーモアには人生を変える力がある

草刈マーサさんも、かつては「超」がつくほど真面目な性格だったそうです。

それが、米国で夫婦ともども交通事故に遭ってケガを負い、憂鬱な気分で病院にいたときに、看護師から「あんれまぁ、派手な夫婦喧嘩ねぇ。どっちが先に手を出したの?」と言われ、ユーモアの重要性に気づきました。

今では米国ユーモア応用治療協会に所属し、一般人を対象にユーモアコミュニケーションを教える草刈さんは、ユーモアには人間関係の潤滑油以上の、「よりよい人生」を実現させるほどの効用があると説きます。

著書の『ユーモアコミュニケーション 場の雰囲気を一瞬で変える!』(芸術新聞社)は、そんなユーモアのセンスを身につけるノウハウをまとめたものです。

はたして本書にどのような手法が載っているのでしょうか。そのいくつかを紹介します。

「ユーモア」=「お笑い」ではない

「ユーモアセンス」と聞くと、どうしても「お笑い」と結び付けて考えますが、草刈さんは「ユーモアセンスとは、面白いことを言う能力ではなく、面白いことを見つける能力」だと定義します。

私たちは味覚があることでおいしいと感じます。

でも同じものを食べてもおいしいと思う人とおいしく感じない人がいますよね。

同じ状況でも面白いと感じる人と何も面白くないと思う人がいる。

その面白さを感じる感覚がユーモアセンスなのです。(本書20pより)

ユーモアの目的は、人を笑わせることではないとする草刈さんですが、ユーモアセンスを得ると自然と面白いことを思いついたり、言えたりするようになるとも。

ところで、草刈さんのクラスでは、受講生に「こんにゃくダンス」なるものをしてもらうそうです。

以下の要領で、一度やってみてください。

ユーモア度がわかる「こんにゃくダンス」

  1. 首、あご、肩、背中、胸、腰、肘、膝の力を意識して抜き(特にあごの力を抜くことが大事)口は半開きにし「脳みそがどこかに飛んでいってしまった~」というような顔をする。
  2. こんにゃくのように身体を「ふにゃふにゃ」「くにゃくにゃ」と10秒ゆする。

草刈さんは、受講生がこんにゃくダンスをしている姿を見るだけで、その人のユーモアセンスを把握できるそうです。

ご想像のとおり、あまり体を動かさない人は、表情も乏しく、発言も硬くてユーモアと縁遠いライフスタイルになっています。

本書の前半には、そのような状況からでも、笑い顔が板につくエクササイズが多数掲載されています。

ユーモアコミュニケーションには、傾聴が重要

ユーモアコミュニケーション」とは、ユーモアセンスを適宜発揮させながら、他者とやりとりすることです。

もちろん、これもいかに相手を笑わせるか、ではありません。

相手を楽しませたいという思いやりの気持ち(おもてなしの心)を発露し、笑顔そして実りある人間関係につなげてゆくものです。

意外に思えますが、最初に草刈さんは「よく聴く」ことの重要性に言及しています。今注目のアクティブリスニング(傾聴)こそ、ユーモアコミュニケーションの達人への第一歩となります。

草刈さんによる傾聴のポイントの1つは、「一言目は受け止めの言葉で始める」。

何か言われたら、「そうだね」「そうだったんだね」「そうなんだ」などと受け止める。

「今日は大変な一日だった!」に対して「私だってくたくたよ」というような受け答えはNGです。

「でも、それは〇〇だからね」といった否定的な反応も極力避けます。

傾聴に関連して、ほかにも「相手の“好き”を見つける」「躊躇せずに質問する」などコツがあり、奥が深いものなのです。

思ったことをパッと言うと笑顔になりやすい

失敗することを怖がらず、思ったことをパッと言う」──これがコミュニケーションを面白くする最大の秘訣だと、草刈さん。

例えば、料理を見たとたん「うぁー、美味しそうだね!」。

観光に来た外国人にどこの国から来たのか尋ねて、「イギリスです」と答えたら「遠いですねぇ!」というふうに。

面白いことを言ってなくても、ちょっとした一言をパッと出すだけで、相手に笑顔が生まれやすくなるそうです。

多くのアメリカ人は、条件反射的ともいえるくらいこの「思ったことをパッと言う」が身についていますが、我々日本人もちょっとしたトレーニングで会得できます。

「ルック&トーク」トレーニングでユニークに

その1つが、「ルック&トーク」。やり方は以下のとおりです。

まずは写真や絵、スライドを用意します。

スマートフォンの写真でも構いません。目に付いたものについて即興で話してもらいます。

その時、絵の説明をするのではなく、その絵を見て感じた気持ちを言葉にするのです。

例えば、桜の写真だったら「きれいですねぇ。去年〇〇にお花見に行った時のことを思い出します」 ジェットコースターだったら、「あ~、これ私は苦手なんですよ~。よく乗れるなぁといつも感心しています」(本書137~138pより)

さっそく1つやってみましょう。

以下の写真を見て30秒ぐらい話してください。

写真を見て30秒ぐらい話します
写真を見て30秒ぐらい話します
Source: PAKUTASO

対話では「イエス・アンド」を心がける

「思ったことをパッと言う」を、他者との会話に応用したのが、「イエス・アンド」です。

草刈さんは、これを「相手のアイデアを受け入れて、そこに自分のアイデアを加えていくこと」だと説明します。たとえば──

「いい天気だからピクニックに行きましょうよ」に対して、

「いいねぇ!(イエス) 黄色のバスケットがあるから、それに食べ物を入れていこう!(アンド)」と答え、それに対して相手も、

「いいわねぇ! 昨日焼いた鮭が残っているから、それをおにぎりにして持っていきましょうよ」 などとつなげていきます。

慣れてきたら、「いいねぇ!」は、はしょって会話を続けますが、あくまでも内容は「イエス・アンド」であることに注意します。

往々にして「イエス・バット」になりがちですので、特に話すことに苦手意識がある人は、「イエス・アンド」を意識するように心がけます。


このような感じで、本書には、ユーモアセンスを磨き、コミュニケーションに生かして、より良い人生を送るためのエッセンスが詰まっています。

ユーモアのなさで、損をしているなと感じているなら、読んで参考にしてみてはいかがでしょうか。

──2019年12月4日公開記事を再編集して再掲しています。

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執筆: 鈴木拓也 / Source: 芸術新聞社