クリエイティブな仕事を求められる人が、アイデア出しに窮すると大変です。
「スランプだ……」
「何もひらめかない」
「アイデアが枯渇してしまった」
こうした状況を打破するには、どうすればいいのでしょうか?
もしかしたら、SNSを見る回数を減らし、椅子からちょっと立ち上がってみれば、解決できるかもしれません。
スマホを置いて、尊敬できる人が書いた本を読む
アイデアは、無からは生み出せません。
1940年にアメリカで出版され、世界中で長く読み継がれているアイデア出しのバイブルともいえる名著『アイデアのつくり方』 (ジェームズ・ウェブ・ヤング著、CCCメディアハウス)では、アイデアとは既存要素の新しい組み合わせだと解説されています。
その前提として、情報を収集し、あなたの頭の中に要素を蓄えておく必要があります。
しかし、昨今は情報過多社会。過剰な情報収集習慣により脳がオーバーフローを起こし、記憶障害や判断力の低下などを招く「情報過多シンドローム」(脳神経外科医・天野惠市先生が提唱)が起きていると警鐘が鳴らされているほど。
特に意識していなくても、シャワーのように情報を浴び続けているのは、皆さんも感じているところでしょう。
特にSNSは要注意です。
各種SNSはユーザーの可処分時間を1秒でも多く獲得するために、独自のアルゴリズムによりユーザーを惹きつけようと魅力的なコンテンツを次々に表示させます。フォローしている・していないに関わらず、タイムラインには他人の投稿や広告が延々と乱立。
そうしたSNSのアルゴリズムに自分の情報収集の幅を委ねていると、頭の中がノイズでいっぱいになってしまいます。そこで、SNSの閲覧回数を減らし、情報源を厳選することが大切になってきます。

おすすめなのは、読書です。
自分が尊敬できる専門家が書いた、学べる本を読みましょう。
筆者は、赤青えんぴつを持って紙の本に向かっています。手でページをめくりながら、自分にとって重要な箇所に赤で線を引き、青で気づいたことなど補足を書き込みます。こうすることで後から振り返りやすくなるからです。
もちろん電子書籍も読みますが、じっくりと読みたい書籍に関しては、筆者は紙の本を選ぶようにしています。
顔を上げるだけでいい! 情報が整理され、脳がクリアになる
集中して本を読んでいるのに、どうにも頭に入ってこない。でも、頭を上げて本から目を離して周囲を見ているうちに「あ、分かった」と感じることはありませんか。
筆者は移動中に電車で読書をしたり、カフェの窓際のカウンター席に座って本を開いたりすることがよくあります。頭を上げたときに景色がパッと広がるからです。
この瞬間、頭の中がすっきりとして、理解が深まったり、自分ごとに置き換えて気づきが得られたりします。
これはどういうメカニズムなのでしょうか。作業療法士の菅原洋平さんは、脳と運動は密接に関わっていると言います。
脳は情報を仕入れるだけではなく整理もしないと無駄に容量を使ってしまうので、中心を見てばかりでは「頭に入ってこない」と感じます。
そこで、PCやスマホの画面から目を離すと、眼球は周辺をみる「運動」をします。ここで脳内の情報は整理され「分かった!」となります。
理解するためには、運動が必要。
目線を動かすというのはとても小さな動きですが、医学の分野では発声や咀嚼などの動きも運動に含まれるとのこと。本を読んでいるときは、中心を見るという眼球運動をし、頭を上げると周囲を見るという眼球運動をしています。
このように運動を変えることで、情報を仕入れるモードから整理するモードへとスイッチさせることができるのです。
筆者自身も実体験として、電車の窓から遠くを眺めたり、カフェの外を歩いている人を見渡したりするときに、頭が整理されていると感じます。
情報は、仕入れるだけではなく、整理も必要ということ。ささいな運動であっても、動きを変えることで脳が疲れにくくなるのです。
余談ですが、子どもの頃、勉強をしながら鉛筆をくるくると器用に回す同級生をよく見かけました。今思い返せば、あれは情報を仕入れながら、同時に脳内の整理をしていたのかもしれませんね。
起床11時間後の散歩や家事が脳を活性化してくれる!
先の話に戻りますが、『アイデアのつくり方』では、アイデアの元となる要素(情報)を頭の中に読み込んだら、一旦そこから離れることで、突然アイデアがやってくると言います。
筆者自身も、パソコンを凝視しているときではなく、そのことを忘れて歩いている時にアイデアがふっとひらめくことがよくあります。
そこですかさず、スマホのボイスレコーダーアプリを使って、頭の中に浮かんだことを話すのです。
アイデアの輪郭がくっきりと浮かんでいるときはメモ帳アプリに文章を書きますが、ぼんやりとしているときはすかさず話すようにしています。口から発することで、具体化に近づけることができるからです。
ちなみに、人目が気になる場所では、誰かと電話で話しているふりをしながら、「面白いアイデアが浮かんだんだけど、ちょっと聞いてくれる?」と、一人で録音しています。
作業療法士の菅原洋平さんは、「脳をより活性化するには、3メッツ程度の運動をすると良い」と提唱しています。
メッツとは身体活動の強さを示す単位で、ジョギングで7メッツ、ランニングで10メッツが目安。3メッツは軽い運動です。普通歩行、簡単な体操、掃除機がけなど。つまり、歩くことはアイデア出しにとって良いことだったのです。
この効果をさらに高める方法もあります。それは起床11時間後(前後2時間は許容範囲)のゴールデンタイムに運動をすること。
人間の体温は、1日の中で上下します。起床11時間後は体温が最も高く、ここでの運動が脳の効率をより高めてくれるのです。
朝7時起床の場合、夕方18時の前後2時間がベストタイミングとなります。
仕事を終えての帰宅時や、夕食の準備時間などを、この運動に充てるといいでしょう。わざわざ運動の時間を確保したり、スポーツクラブに通ったりしなくてもいいのです。
それでも「軽いとはいえ、運動を習慣化するのは面倒だな」と感じる方は、まずは4日間実施してみてください。最初は辛いと思える運動も、4日間で脳が勝手に習慣化してくれるのです。
エネルギーコストを下げるために、同じ動きをしたがるのは脳が持つ性質です。習慣がその人にとって望ましいかどうかについて、脳は判断しません。いいこともよくないことも習慣化されてしまうのです。
アイデアが出てこない? そんなときはまず立ち上がろう!
今回は、アイデアがどんどん出てくるひらめき脳にするための、生活習慣をお届けしました。
読書と運動。
多くの方にとって、いずれも大した労力が必要なものではありません。でも、意識をしなければ、ついSNS漬けになったり、リモートワークで運動不足になったりしがちです。
ささやかな行動ですので、ぜひあなたの毎日で実践してみてください。