iDeCoこと個人型確定拠出年金、すでに260万人が利用している「老後の準備をお得にする制度」です。

個人が自由に加入し、自分のお金を老後のために蓄えれば、所得税や住民税が軽くなり、また運用で得られた利益は非課税になります(受取時は非課税枠と軽減税率が適用されるので無税もしくはわずかな負担ですむ)。

前回(2017年1月)の法律改正で多くの人が加入可能になったこともあり、マネー雑誌の多くが「iDeCoオススメ!」と特集を組むようになりました。ネット証券会社を含め熱心に取り組む金融機関も増えています。

しかし、「私もiDeCo入ろうかな!」と思っていたら、実は加入できないと言われた、いわば取り残されていた人がいました。

それは「会社が企業型の確定拠出年金を採用している会社員」です。

確定拠出年金の非課税枠は1つなので、iDeCoと企業型確定拠出年金の同時加入は制限されていたのです(ごく一部、同時加入できるケースがあったのですが、ほとんど利用されていなかったので、解説は省きます)。

2022年10月より、約780万人が新たにiDeCo加入OKに

2022年10月度の改正により、原則無条件でiDeCoに同時加入できるようになります。対象者はおよそ780万人とされています。

今回対象になった人はもちろん、そうでない人も含め、「実は私も、iDeCo入りたかった!」という人のために今回はiDeCoの基本をおさらいしてみたいと思います。

iDeCoの基本は「自分の老後に仕送りすると税金が得になる仕組み」

冒頭に、基本的なiDeCoの説明はしましたが、より詳しくおさらいをしておきます。

iDeCoの基本7つ

  1. iDeCoは自分で入る(強制されない)
  2. 好きな金融機関を選んで入る(各社の違いがある)
  3. 加入した人は税金でお得になる
  4. 国の制度だがお金は個人のものとして管理され、将来確実に受け取ることができる
  5. ゼロからはじめて、毎月一定額を積み立てていく(まとめて入金はできない)
  6. 銀行預金などの安全資産と投資信託などのリスクのある運用方法があって自由に組み合わせられる
  7. 原則として60歳まで解約できない

将来に備えて今のお金を貯めておくと、老後にそれを使える(利息や運用収益があれば増えたお金を使える)という、言ってしまえば「自分の老後に自分で仕送りをする」仕組みがiDeCoです。

未来の自分にお金を送るだけで税金で得をするわけですから、「老後に2000万円」といわれて、「自分の将来のためにもお金を貯めておかなくちゃ」と考えている人には最適の制度といえます。

積立の全額が老後へ繰り越し。運用で増やしても税負担はわずか

ちなみにこの税制優遇は、所得税と住民税の軽減、運用収益の非課税の二段階で受けられるのですが、前者の効果がとても大きいものがあります。若い世代だと、だいたい20%くらい税金に引かれ(年収や家族構成などで異なる)、普通1万円を稼いでも「手取り:8000円」になります。

これがiDeCoに積立をすると「iDeCo掛金:10000円」となり、全額が自分の老後に繰り越しされます。この段階である意味「25%増えた」と言えるほどのインパクトがあります。

さらに、運用で増やしたうえで受取時に精算課税となっても、軽減税率および非課税枠があるので、多くの場合は無税もしくはわずかな税負担で老後に受け取ることが可能

すでに多くの人たちがiDeCoを利用して自分の未来のために備えています。この税金のお得は、iDeCoに加入して積立をした人だけが手に入れられるので、早くはじめないともったいないです。

ただし、気をつけなければいけないのは「60歳まで解約できない」ということです。毎月の家計のやりくりがプラスになっていること、また子どもの学費準備や住宅ローンの返済には支障がない状態をつくって、そのうえでiDeCoに積立をしていってください。

基本的なルールは「月2万円まで」「会社の制度と合計で月5.5万円まで」

さて、毎月積み立てられる金額には上限があります。今回新しく加入できるようになった人たちは「企業型の確定拠出年金に加入している」会社員ということになります。

まず、会社の企業型確定拠出年金で「マッチング拠出」をしている場合は、これがiDeCoと同等の税制優遇があるので、iDeCoかマッチング拠出を選びます。同時利用はできません。

次に、積立枠は「月2万円まで」です。iDeCoは月5000円から1000円単位ではじめます。

ただし、会社の制度のほうで高額の掛金を出してもらっている場合、上限に制約が生じます「iDeCoと企業型確定拠出年金の合計が月5.5万円まで」となるからです。会社の掛金が3.5万円を超えたら、月2万円は出せなくなり少しずつ減っていきます。会社が月5.5万円を退職金のためにすでに積み立てている場合はiDeCoに加入できません。

この積立可能額は、あなたの会社の確定拠出年金のサービスを提供する金融機関のサポートHPで確認できます。

なお、会社が「確定給付企業年金と確定拠出年金をダブルで実施している」場合、非課税枠を2つの制度で利用しているという判断から、iDeCoの積立枠は月1.2万円まで減少します。iDeCoと企業型確定拠出年金の合計も月2.75万円です。こちらも複雑なので、予めチェックしたほうがいいでしょう。

なお、すでにiDeCoに加入できる人について、以下おさらいです。

  • 企業年金のない会社員:月2.3万円まで
  • 企業年金のある会社員:月1.2万円まで
  • 公務員:月1.2万円まで
  • 自営業者:月6.8万円まで
  • 専業主婦(国民年金第3号被保険者):月2.3万円まで

働き方によって税制優遇枠が異なるのはややこしい仕組みですが、毎月の積立枠はそれほど大きくないので、早くはじめてコツコツ育てていくことをオススメします。

iDeCoの金融機関・運用先の選び方

Image: Shutterstock
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iDeCoのおもしろいところは、国の制度でありながら、民間の金融機関がサービス競争をしていることです。たとえば投資信託のラインナップや預金のラインナップで違いがあります

もし金融機関選びで悩んだら「口座管理手数料無料(金融機関の取り分)」と「投資信託の運用管理費用年0.5%以下」のようなルールでフィルタリング検索してみてください。比較サイトがいくつかありますので、各社のページを見に行かなくても大丈夫です。

運用先で悩んだときは、「国内外に分散投資されるバランス型」と言われる投資信託を選んでみましょう。1つの投資信託を買えば、世界中に投資ができ、かつ株式や債券など複数の投資対象をまとめて運用できる便利な商品です(運用管理費用は年0.5%以下で探す)。

iDeCoは老後の財産づくりですから、短期的な値動きで一喜一憂せず、積立を続けることが大切。むしろ株価が値下がりしている時期が数年くらいあると、「安値でコツコツ仕込む」ことになります。リタイアするころに株価が回復さえしていれば、自動引き落としで続けるだけで大きな資産に育つでしょう。

そもそも節税だけで相当儲かっているわけですから、あまり焦らなくてもいいのです。毎日株価の上下を考える必要はありません。

最初に、iDeCo口座開設をするときに「毎月の掛金のいくらを投資に回すか(あるいはいくらを定期預金で安全運用するか)」だけ、じっくり決断したらあとは「果報は寝て待て」の気分で老後の財産をじっくり育てていきましょう。

毎月の積立をした人にだけ与えられる、iDeCoの税制優遇。利用しない人は「毎月失効している」ともいえます。もしiDeCoに入りたいと思っているなら、そう思った今こそがチャンスです。

ぜひ、iDeCoをスタートして、老後の安心をつかみ取ってみてください。

山崎俊輔

フィナンシャルウィズダム代表。ファイナンシャルプランナー。夫婦で共働き、共家事、共育児しながら子どもふたりを育てている。

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Source: iDeCo公式サイト, 生命保険協会