『選ばれる会社になる ブランディング経営』(川﨑英樹 著、あさ出版)の著者は「中小企業診断士」。端的にいえばその役割は、コンサルティングを通じ、困っている小さな会社を助けることだといいます。
そして中小企業診断士として現場で支援を続けるなかで確信したのは、中小企業の究極の戦略は「ブランディング」であるということだったそう。
ブランディング戦略において重要なのは、小手先の見せ方やテクニックではなく「品質」。品質がよくなければお客さまは離れていきますし、継続的な関係性は見込めません。
しかも、それでは社員のなかに「自分達にしか提供できないものを持っている」という誇りは生まれないため、仕事に対するモチベーションも上がらないわけです。
真のブランディングとは、中小企業だからこその独自の武器、強みを活かした高い品質の商品・サービスを開発し、創り上げていくことです。
そのクリエイティブなプロセスの中に仕事のやりがいが生まれ、社員の幸福――ひいてはお客様の幸福もまた、存在するのです。(「プロローグ」より)
コンサルタントは、さまざまなテクニックを駆使してお客さまの開拓や集客の仕方を教える仕事だと思われている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし中小企業診断士のコンサルティングは、テクニックなどの「やり方」ではなく、「あり方」こそが問われるのだと著者は述べています。
つまり、クライアントにどれだけ寄り添うことができるかーーそのマインドがいちばん大事だということです。
だとすれば、中小企業にとってのブランディングについてもう少し詳しく知りたいところ。そこで、本書の第1章「真のブランディングとはなにか」内の01「中小企業が求められるブランディング戦略」に焦点を当ててみたいと思います。
中小企業が企業価値を高めるために欠かせないものは
企業価値を高めるためには、まずなによりも価値のある商品やサービスが必要。そして、ここで大切なのは「商品」と「製品」は違うということ。商品とは「商い」をする「品」、製品とは「製造」された「品」と書きますが、ここには根本的に捉え方の違いがあるというわけです。
なお著者は、「商い」を「“価値”をお客様に与えて、お金をもらうこと」だと定義しているのだそうです。では、“価値”とはなにを指すのでしょうか?
たとえば洋服屋さんでは、洋服そのものが価値なのではありません。その洋服を販売する会社に関わっている人たちの「想い」にこそ価値があるのです。
つまり、本当の商品は、人の「想い」なのです。
洋服を仕入れて来たバイヤーの「想い」。
洋服を仕入れて、お客様に提供しようとする経営者の「想い」。
洋服をここに掛けて、見やすくしようとする店長の「想い」。
洋服をお客様に着てもらい、素敵にしてあげようとする販売スタッフの「想い」。
それら全てが商品です。
お客様は、その「想い」の詰まった洋服に「お金を払おう」と思います。その「想い」こそが「価値」なのです。(29ページより)
つまり「価値」とは、お客様に歩み寄ろうとする企業努力から生まれるものだということ。企業価値と企業努力の結晶こそが商品であり、その商品に「価値」があると感じるからこそ、お客様はお金を払ってくれるのです。
そして、その企業価値を端的に表したのが「企業理念」。だからこそ企業の経営理念は単なる理想的な建前ではなく、究極のキャッチコピーになるのだという考え方。
なお著者は、大手アパレル企業はほぼ製品で勝負していると考えているそうです。大量に安く仕入れ、安い価格で販売することに、企業としての大きな価値を位置づけているということ。しかし中小企業の場合、そういったやり方で勝負することはできません。価格で大手にかなうはずがないからです。
中小企業が企業価値を高めるためには、その会社だけが武器が持つ武器を磨き、それを経営理念に根ざした価値に高め、お客様に提供する姿勢が求められるわけです。
物だけなら価格の勝負になります。しかし、そこに「想い」がこもることで価値になり、価値があるから高くても買ってくれるのです。
製品に「想い」が宿ることで、付加価値が付き、高く売れるーーこれがブランディングです。(30〜31ページより)
「想い」のこもった商品・サービスを創り、お客様に提供することが企業価値になる。そして、それがそのまま売上アップにつながっていくということ。(28ページより)
売上をアップするためには
売上は、「客数と客単価の掛け算」。他にもいろいろあるでしょうが、中小企業のマーケティングを鑑みたとき、この掛け算がマッチするのだと著者はいいます。そしてこの掛け算では、売上を増額するためには次の3つの方法しかないのだとか。
1. 客数と客単価を両方上げる→売上は上がる
2. 客数はそのままで客単価を上げる→売上は上がる
3. 客数を上げて、客単価はそのまま→売上は上がる
(32ページより)
では、この3つのなかでいちばん優先順位が高いのはどれでしょうか? この問いに対して著者は、本当に売上を上げるためにまずやらなければならないのは、「客数を上げること」だと述べています。
客単価とは、いいかえればお客様の財布の中身。1人の客様に出せるお金には限界があります。財布に1万円しかないとき、3万円の買い物はしないでしょう。予算に限界があるからです。
つまり企業が売上を上げたい場合、最初に増やさなければいけないのは客数。しかも重要なのは、「たまたま客」ではなく、「わざわざ客」=「顧客」を増やすこと。それが、もっとも売上アップにつながりやすい方法だということです。
実は、これはブランディングと繋がる話です。ブランディングとは、たまたま客をわざわざ客にするためにこそあるからです。ですから、企業としてのブランディングを進めていくと、当然、売上がアップしていきます。(33ページより)
したがって、まずはその企業の顧客(ファンやリピーター)の数を増やす必要があるわけです。(31ページより)
コロナ禍に伴って業績の落ち込みや人材不足などに見舞われ、打開策を模索している中小企業も少なくないはず。
そうした企業を救いたいという思いがあったからこそ、著者は本書を著したのでしょう。現状を打破したいと模索している中小企業経営者、また、そこで働く方々にとって、本書は大きな支えになってくれそうです。
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Source: あさ出版