「リスキリング」ということばは、「学びなおし」を意味するものと解釈されています。しかし、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事である『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』(後藤宗明 著、日本能率協会マネジメントセンター)の著者によれば、それは“半分正解で半分不正解”なのだとか。なぜならリスキリングは、

「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」(「はじめに これからの時代を生き抜くために必要な『リスキング』」より)

を指しているから。そして、そのような考え方に基づく本書は、「日本のビジネスパーソンが新たなスキルを身につけ、社内で新しい業務に就く、また転職して新しい職業に就く支援をしたい」という思いをもと書かれたものなのだそうです。

僕は、これからの時代、誰もが身につけるべき最も重要なスキルは、自分自身を「リスキング」するスキルそのものになると考えています。

人生100年時代、定年後に平和にゆったり隠居できる時代ではなくなってきており、50代、60代からでも外部環境の変化に合わせて自分自身で新しいスキルを身につける「リスキング」を習慣づける必要があるのです。

(「はじめに これからの時代を生き抜くために必要な『リスキング』」より)

しかも40代、50代のみならず、20代、30代といった早い段階で自分のスキルをアップデートする(リスキリングする)方法を知っておいてほしいのだといいます。

だとすれば、リスキリングの基礎を改めて確認しておきたいところ。そこできょうは第1章「なぜリスキリングする必要があるのか」内の1「リスキリングとは?」に焦点を当ててみたいと思います。

リスキリングとアップスキリングの違い

まず気になるのは、「スキルアップ」とリスキリングとの違いです。そもそもスキルアップは和製英語ですが、英語には、スキルとアップの順序をひっくり返した「アップスキリング」ということばがあるのだといいます。

わかりやすいアップスキリングの事例として思い浮かぶのは、経理部の社員が高度な経理業務に必要なスキルを身につけることなど。世界有数の顧客管理プラットフォームであるセールスフォース社はそれを、「従業員がそれぞれの現在の分野で、適切な役割を果たせるように訓練機会を提供すること」と定義しているのだそうです。この、“現在の分野で”という部分がアップスキリング

やや理解しづらい側面があることも否めませんが、「現在の業務の専門性をさらに向上させるために新しいスキルを獲得する」手段であるアップスキリングは、はしごをのぼった人が垂直に上がっていくイメージ。

それに対し、「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」を意味するリスキリングとは、新しいことを学び、まったく新しい業務や職業に就くことを意味するということです。

そしてもうひとつ、アウトスキリングという単語も存在します。

これは、収益悪化が原因で人員整理を行う必要に迫られた会社が、その対象となった従業員に対し、退職前にリスキリングの機械を用意し、成長産業での転職が可能となるように行う支援策。

とくに新型コロナウイルス感染症の影響で収益が悪化したアメリカやイギリスの企業で注目された手法だといいます。(23ページより)

リカレント教育とリスキリングの違いは?

なお著者はよく、「リカレント教育との違いはなんですか?」という質問を受けるそう。

ご存知のとおりリカレント教育は、スウェーデンの経済学者であるゴスタ・レーンが提唱したとされる概念で、教育と就労のサイクルを繰り返す生涯教育手法のひとつ。リカレントが「反復」を意味するところからもわかるように、「働く→学ぶ→働く→学ぶ」のサイクルを続ける「学びなおし」を指しているわけです。

なお、以下がリスキリングとリカレント教育の違いだそうです。

1.背景の違い

とくに大きく異なるのが背景。リカレント教育が注目を集めるきっかけになったのは、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏による『ライフ・シフト』が世界的なベストセラーとなったこと。対してリスキリングは、技術的失業、テクノロジーが人間の労働を代替するという社会問題の解決策として注目されているわけです。

2.目的の違い

リカレント教育においては、「学びなおし」そのものが目的であり、職業と無関係な学びも含むことになります。しかしリスキリングは新しい職業に就くことを目的としているため、職業に直結するスキルの習得を指しているのです。

3.実施責任の違い

リカレント教育は個人の関心が原点で、個人が自分の好きなことを学ぶ機会を探し、私的な活動として取り組むことが基本。そのため実施責任は個人にあります。

対するリスキリングは、技術的失業を背景として、企業の生き残りをかけた変革ニーズに基づくもの。企業が従業員へリスキリング機械を提供するため、実施責任は企業にあります。

4.講座提供の違い

生涯学習のひとつの手法であるリカレント教育において、大学や大学院などの教育機関がメイン。しかしリスキリングにおいては民間のオンライン講座運営を専門に扱うEdTech(エド・テック、教育フィールドのテクノロジー)関連のスタートアップが講座を提供しているそうです。(26ページより)

著者のこれまでのリスキリングに関する調査研究結果と政策提言、そして自治体や企業へのリスキリング導入支援の経験をもとに書かれたという一冊。自分自身で新しいスキルを身につけるために、ぜひとも読んでおきたいところです。

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Source: 日本能率協会マネジメントセンター