タイトルからもわかるように、『人生はあなただけのものじゃない』(トム・ラス 著、林田レジリ浩文 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、「人生は自分だけのものではない」と考えているそうです。「自分以外の人に、いったいなにができるだろう?」と考えて生きていくべきで、そこに早く気づけば気づくほど、自分にできることは増えていくのだと。
この20年、僕は人の幸せについて考え、本を何冊も書いてきた。
そしてわかったのは、人が幸せになるためには、自分の幸せだけを追い求めていてはいけないということ。それでは幸せになれるどころか、反対に幸せから遠ざかってしまうことだってある。
逆説的に聞こえるかもしれないけれど、幸せになりたいなら、自分の幸せではなく、まず他人を幸せにすることから始めないといけない。(「はじめに あなただけの人生の意味を見つけよう」より)
「きょう、誰かのためになにをしてあげられるだろう?」という問いかけはシンプルながらも効果的なものであり、その問いに答えることが自身のエネルギーを高めてくれるということです。
誰の人生にも終わりが来る。僕にも、そしてあなたにも。
でも、終わりが来ても、あなたが生きているうちに他の人のためにしたことは、消えることはない。大切な人やコミュニティにあなたが費やした時間や労力やお金。あなたがいなくなった後にも、それは消えないで残っていくものだ。(「はじめに あなただけの人生の意味を見つけよう」より)
こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第2部「大切な人たちにあなたができる限りのことをしよう」に焦点を当ててみたいと思います。
物事をポジティブに受け止める
一つひとつの付き合いを大切にすること。世界に何を残そうかと大きく考えても、まずはそこから始めるしかない。でもその一つひとつの小さな積み重ねが、新たな人たちとの良い出会いや、すでに築いている人間関係をより強固なものとすることにつながっていく。(34ページより)
著者はここで、「日常的な、ささいな触れ合い」についての調査の話題を持ち出してします。それによると、たったひとつの不愉快なやりとりがあると、他にいくつか良好なやり取りがあったとしても、それを帳消しにしてしまうことがわかったというのです。
また、「1日に5つの“良好なやりとり”があり、“嫌なやりとり”は1つあった」という5対1の割合であれば、その人のよい気分はまわりの人にも伝染していくのだそうです。そして著者の研究によれば、人々との良好なふれあいを持っている人は、そうでない人にくらべて5倍も幸福感を持てることがわかったのだとか。
とはいえ、こちらがどれだけ良好なやりとりをしたいと思っていたとしても、相手からどんな反応が返ってくるかはわからないもの。しかしそれでも、返ってきた反応の捉え方は自分が決められるのだといいます。
生きていれば、たまにはひどい一日だな、と感じる日はあるだろう。何でこんなことを言われないといけないの、と思うほどひどい言葉を他人から投げつけられることもある。
それでも、その嫌な気分を手放さずに沈んでしまうか、「ま、こんなこともあるか」と気を取り直すかの選択はあなたにゆだねられている。
そんな一つひとつのあなたの選択が積み重なって、一日一日を良い日にも、ひどい日にもしてしまうのだ。(35〜36ページより)
なんにせよ、「出来事をどう捉えるか」の選択権は自分自身にあるもの。だからこそ、なにが起こったとしても、まずは「他の人はこちらによかれと思って動いているものだ」と思うことから始めるべきだということです。(34ページより)
スマホを置いて、相手の話を聞く
たった15分であっても、相手の話を心から、真摯に聞く。たとえそれだけでも素晴らしい貢献だと著者は述べています。しかもそれはきょうから、いますぐにでもできることでもあります。
相手に興味を持って質問をし、相手の話を聞く、そんな簡単なことこそが、僕らが仲間に、恋人に、伴侶に、そして家族や同僚に最も強く求めていることじゃないだろうか。でも刺激の溢れているこの世界で、僕らは往々にしてその逆をやってしまう。相手とつながりたいと思っているのに、相手に伝わるそのメッセージは全く逆になってしまうなんて悲しい。(44ページより)
いうまでもなく、スマホはとても便利なツール。子どものころからガジェット好きだった著者も、世界とつながることができ、どんな情報も瞬時に手に入る小さな機械に大きな価値を見出していたそうです。
ところが数年前、ある研究を読んで考えをすっかり改め、生活習慣も行動様式もガラッと変えたのだといいます。200人を対象としたそれは「iPhoneエフェクト」と題された、スマホの影響についての研究。スマホを目の前にした人にどのような影響が生まれるかを調査したものなのだそうです。
それでわかったのは、ただスマホが視界に入っているというだけで、交わされる会話の質が落ちてしまうということだった。たとえスマホが鳴っていたり、バイブレートしたり、電源が入っていたりしていなくても、だ。スマホがただそこにある、というだけで実験の参加者の意識がそらされて、相手に対しての興味がそがれ、会話そのものに気持ちが入らない、という結果になってしまう。
スマホを取り出している、ということそれ自体が、「この小さな機械はわたしにとってはあなたと話すよりも大切だ」とメッセージを発しているにも等しいというのだ。(45〜46ページより)
その研究を知ってから、著者は仕事中でもプライベートでも、意識的にスマホを遠ざけるようになったといいます。その結果、いまではスマホを手に取るときにはなんらかの急ぎの用があるのだろうということを周囲が察してくれるようになったそう。そして、そんな経験をしたからこそ、次のようにも述べるのです。
結局、相手に対してどれほど真摯に向き合えているかが、その人をどれほど大切に思っているかの物差しになる。話をしている相手に心から耳を傾けること。それが新たに出会えた人との関係を素晴らしいものにもできるし、すでに知っている人たちとの関係なら、さらにそれを深められる。(47ページより)
つまり重要なのは、いつでも、どんな触れ合いであってもそれを大切にすること。したがって、そこから始めてみるべきだというのです。(44ページより)
自分だけのことを考えるのではなく、“自分を超えて残るもの”を見つける。それがひいては自分に力を与え、もっと楽に、もっと自由に生きられることにつながるのだと著者はいいます。悔いのない人生を生きるために、こうした視点を生かしてみてはいかがでしょうか?
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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン