建設会社役員など複数の職業を持ち、多数の著書も出しながら定時退社を実現している石川和男さん。
これほど目覚しい働きぶりを発揮する秘訣の1つが、「朝時間の活用」だと力説します。
近著の『ワークブック 仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「力の抜き方」』(PHP研究所)や『人生をマネジメントする 1日を27時間にする思考法』(ぱる出版)は過去にライフハッカーでも紹介。朝一の仕事の重要性が繰り返し説かれています。
夜更かしタイプの人から見れば、「夜の1時間も朝の1時間も一緒」と、思われるかもしれません。
ですが夜は、「このテレビを見てから」「SNSに投稿してから」などと、ついつい先延ばしにできてしまう魔の時間帯です。石川さんは著書の中でこう書いています。
一方、朝時間には出社時間という究極の期限があります。
期限は人を集中させます。
さらに、「せっかく起きたんだから、無駄にしないようにしよう。実行しよう。行動に移そう」という心理が働きます。
(『ワークブック 仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「力の抜き方」』より)
つまり、夜の1時間と朝の1時間はまったく別物なのです。
早起きできない原因は、見落としがちだが単純なこと
こうした威勢の良いフレーズを引き合いに出すと、「それは特別な能力に恵まれた人だからできるのであって、自分には無理だよ」という声が聞こえてきそうです。
かくいう筆者も、早朝を有効活用するようになったのは、30代も半ばの話。それ以前は、できるだけ遅くまで寝ていて、始業前のギリギリに出社する毎日でした。
「このままではいけない」と一念発起したのは、転職してしばらくのこと。新たな職場では習得すべきスキルが非常に多く、オフタイムの時間を学習に充てる必要に迫られたからです。
そこで、朝5時に起きるという目標を打ち立てました。
その目標を実現するためにしたことといえば、「その分早く寝る」というシンプルな対処法。拍子抜けしたかもしれませんが、早起きできる最強の方法です。
早起きに挫折する人の多くは、夜更かしはそのまま堅持しようとしています。つまり、早起きと同時に短眠にもチャレンジしてしまっているということ。
遺伝的に、日本人のショートスリーパーは1割足らず。残り9割強は、特別な訓練をしなければ短眠にはなれません。
それを根性でどうこうしようとすれば、挫折は約束されたようなもの。石川さんも、「早起きでない人の多くは、起きる時間を決めるだけで、寝る時間を決めていません」と話します。
筆者のおすすめとして、「最終目標は夜の10時台に寝る」と決め、まずは11時前後に眠るところからはじめましょう。
入浴の時間帯がカギに。何時のお風呂が正解?
以前、夜型の知人と雑談していた時のこと。
自分が夜更かしをやめて朝型になったことを話すと、「夜早く寝るのは、なんかもったいない気がする」と言われました。
早寝早起きになるまでの、最初にして最大の壁は、この「もったいない」という気持ちかもしれません。
そう感じるのは、いつも視聴している深夜番組のせいかもしれませんし、居酒屋で閉店まで過ごす時間のせいかもしれません。
何かしら夜にしたいことがあるから、そう感じるのでしょう。いきなり週7日の早寝早起きをはじめようとすると、得てしてこの感情に捕らわれやすいと思います。
そこで、まずは週に1日だけ、見たい番組のない曜日や休肝日に早めに就寝することから心がければ上手くいくのではないでしょうか?
もう1つの問題として、早めに床についたところで、目が冴えて眠れないというのもありますね。
入眠を健康的に早めるにはいくつかのコツがあります。一番のおすすめは、入浴時間の調節。
『スタンフォードの眠れる教室』(西野精治著、幻冬舎)によれば、深部体温(体内の温度)が下がれば「覚醒のスイッチがオフ」になり、眠りにつきやすくなるそうです。
深部体温は、一旦上げるとその後下がる性質があります。つまり、入浴で深部体温を一時的に上げ、下がる頃合いに就寝するというテクニックです。
具体的には、38~40度のお湯に15分ほどつかります。そこから覚醒のスイッチがオフになるほど深部体温が下がるのは、1時間半から2時間ほど後。理想の入眠時間を夜の10時台と仮定した時、逆算すると夜の9時台に入浴するのが良いということになります。
また、この種の話題でしばしば「スマホのブルーライトは良くない」と言われますが、最新の研究ではそれほど影響はないそうです。
問題になりうるのはむしろ、メールやSNSで感情的なやりとりをすること。これでは、脳は過緊張になって、眠るどころではなくなりますのでご注意を。
早起きしたら! 第一に「その日にすべき仕事」に着手
朝活の成功談を読むと、「朝の勉強で公認会計士の試験に合格した」「ランニングと筋トレで体脂肪率10%を達成した」といったエピソードがたくさん出てきます。
こうした話を読むのは、モチベーションを高める意味では効果的でしょう。しかし、いきなりこのレベルは目指さないことが、早起きを続けられるコツなのです。
まず、いつもより30分でも早く起きられるようになったら、以前は夜にやっていたことの消化に注力してみましょう。たとえば、見逃した深夜番組の録画を見る、SNSを一通りチェックして投稿するといったことです。
しばらくすると、「せっかく朝早く起きても、こういうことをこなすだけではもったいないかも」と心境が変化してくると思います。むしろ、実は元々「それほどしたいとは思っていなかった」ということに気づくかもしれません。
そうなればしめたもの。そこから徐々に、早朝に起きたら本当はしたかったこと、あるいはすべきことへとシフトしていけばいいのです。
ところで、在宅勤務やフリーランスの方におすすめしたいのは、その日の仕事を起きたらすぐはじめてしまうこと。
着替えやマウスウォッシュといった最低限のモーニング・ルーティンを済ませたら、デスクに向かってしまいましょう。この時に取り掛かる仕事は、その日のうちに絶対片付けなくてはならない仕事に限ります。
それが一段落ついたところで、メールのチェックや朝食を摂ったりするのです。
このワークスタイルは、生産性を劇的に上昇させるポテンシャルを秘めています。
まず、頭がクリアな状態で仕事をしているので、とても捗るというのが一点。また、この日にすべき仕事を早々に進めていることで、心の余裕が生まれます。
その心理は、日中の仕事にも好影響を与えます。それは、「始業時間ギリギリになって、メールのチェックからはじめる」という、これまでのワークスタイルとはまったく異なる世界。
一旦習慣づいてしまうと、もう元に戻りたいとは思わなくなるほどです。
ここまでくれば、朝の時間帯を支配したのも同然。「もっと早く起きて、資格の勉強や運動もしたい!」などと、好循環が生まれてくるはずです。