多くのビジネスパーソンの間で信じられている説の1つに「仕事ができる人はメールの返信が早い」というのがあります。
実際、「即レス」を信条とする人は多いですね。
筆者も、以前は即レスするタイプでした。
メールの通知をオンにして、1日に何度もメーラーをチェックしては返信していました。
それをやめたのは、およそ3年前のことです。
理由は、メールのチェックと返信の回数が多くなることが災いし、本来業務に支障をきたしていると実感したからです。
言うまでもなく、メールのやり取り自体は、欠かせない業務の1つです。
ですが、そのせいで自分の評価と収入に直結するメインの仕事が、何度も中断され、生産性が落ちてしまってはダメでしょう。
基本は「即レスしない」
建設会社役員をはじめ6つの職業を兼務する石川和男さんの著作に『人生をマネジメントする 1日を27時間にする思考法』(ぱる出版)があります。
ライフハッカーでも書評家の印南敦史さんが取り上げていますが、最近になって筆者も読みました。
そこには、「メールの返信が速い=仕事ができる人という説を信じないでください」と書かれています。
その理由として、「本業である仕事のリズムが崩れるなら、メールへの対応は本末転倒」とありました。
これには筆者もまったく同感です。
本書は、メールのお作法だけでなく、ワンランク上に成長したいビジネスパーソンなら把握しておくべき知識が盛り込まれています。機会があったら是非読んでみてください。
さて、メールの話に戻ります。
3年前に即レスをやめた筆者ですが、3つの例外があります。
- 速やかに返信しないとクレームかトラブルに発展しかねないもの
- 相手が即レスを求めている場合
- 相手の退職や異動のお知らせ
受信次第、速やかに返事を送るのは、この3パターンのどれかに当てはまる場合だけです。そして、こうしたメールはレアケースです。
もちろん、職種によっては「即レスをしない」ルールが好ましくないところもあります。
たとえば、コールセンターのスタッフは、カスタマーの問い合わせには、すみやかに返信することが本来業務。
必然性のない遅いレスポンスは、顧客とのトラブルの元になるだけでしょう。
メールのチェックは1日2回
それ以外の職種のビジネスパーソンに、おすすめしたいのが、「メールのチェックは朝と夕刻の1日2回。受信したメールは、次のメールチェック時に返信する」というやり方です。
具体的に何時と明示せず、「朝と夕刻」とアバウトに表現したのは、生活リズムや職場によって最適な時間は、人それぞれだからです。
筆者の場合は、朝はおおむね6時頃。
5時台に起床し、いくつかのモーニング・ルーティンを済ませたら、パソコンを起動してメールをチェックします。
このときは、メールの件名をざっと見るだけです。緊急性のありそうなメールだけを「開き」ます。
こちらから新たに書くメールも、このとき行ないます。
こんなルールを設けているのは、朝はできるだけ早い時間帯から本来業務に着手したいからです。
起床してから脳が本格的に活動するまで2時間とか4時間かかるという学説がありますが、個人的にはあまり気にしません。
目覚めてから30分程度でも、頭がクリアであれば、すぐに本来業務に取りかかることにしています。
朝確認したメールに返信をするのは、その日の夕刻、16~17時台です。
これは多くの企業が18時を終業時間としていること、就業時間の少し前にメールチェックをする人が多いことを意識しています。
この際、朝にメールをチェックしたあとに届いたメールをチェックします。
これに対する返信は翌日の朝です。
「朝見たメールへの返信は当日夕刻、夕刻見たメールへの返信は翌朝」というサイクルは、本来業務への影響を最小限に抑えられる点で、非常に有効な方法だと考えています。
メールの本数自体を減らす工夫も
筆者は、3年前にメールのチェック回数を減らすとともに、メールの本数自体も減らす工夫を本格的に始めました。
返信本数をちょっと減らすだけで、メールの作業にかける時間が、結構減らせます。
たとえば、短い時間を置いて、立て続けに同じ相手からメールが来ると予見できる場合。この場合は、2つめのメールが来るまで返信しないでおきます。
例をあげましょう。
「懸案の2つの件についてお知らせします。1つめは無事確定しましたが、2つめはまだペンディングです。こちらについては後ほど、また連絡します」
というメールが来たら、2つめの件に関するメールが来るまで、返信しません。
以前は、「わかりました。引き続きよろしくお願いします」といった返事を返していました。
しかしその返事は不要で、余計な作業が増えるだけだと判断しました。相手に「単なるメール受領の通知を読ませる負担を与える」とも思い、やめています。
また、「Yes/No」で回答してもらうものや、複数の選択肢から選んでもらう表現も活用しています。
仕事柄、取材をすることがありますが、相手とのアポイント日時のやり取りは、「では、来週のいつ頃がご都合よろしいでしょうか?」と漠然と聞くのはNG。
「当方は来週の火曜と水曜の午後3時があいております」などと候補をあげ、相手に選んでもらうかたちにします。
以前は「こういう尋ね方はぶしつけかもしれない」と、持って回った聞き方をしていて、アポイントが決まるまで、10回近くもメールのやり取りをしたこともありました。
やり取りの回数を減らしたいのは、相手のニーズでもあります。
省力化できる表現は、節度を持って省力化し、メールの回数を減らしていきましょう。