セレンディピティ」という言葉をよく聞くようになりました。

定義はいくつかありますが、基本的には「偶然と人間の行動が絡み合い、好ましい結果となる」ことを意味します。

不思議な語感のこの言葉は、セレンディップ(古代スリランカ)の3人の王子のおとぎ話を元に、18世紀のイギリスで生まれた造語です。

起業家の間でも注目されているようで、ライフハッカーの過去のインタビューなどでも、この言葉が登場しています。

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ところで、気まぐれに降りかかってくる「ラッキー(幸運)」と違い、セレンディピティはある程度は意図的に起こせるのです

今回は、セレンディピティを起こしやすくなるコツを紹介します。

人生の節目を直感で感じたら、流れに身を任せてみる

少し長くなりますが、まず筆者の個人的な体験をお話しします。

筆者は、執筆記事のネタを探すため、週に1回ペースで図書館に行きます。

その日も図書館で書棚を見回っていると、とある風景写真集に目が留まりました。それは屋久島の自然を撮ったもの。それまで屋久島は、「日本一雨が多い島」程度の認識しかなく、晴れ好きな自分としては、一生行かないような場所でした。

ところが、その写真集にある屋久島の森林になぜか心が惹かれ、気持ちが180度転換。どうしても行きたい場所になりました。

とはいえ仕事はあるし、ホテルは軒並み高いし、航空運賃も高いし…そう簡単には行けません。

突然の立ち退き要求。呼び寄せられるように屋久島へ

さて、その頃の筆者は、京都市内の借家に住んでいました。ところが、ここを大家さんが売却してしまい、立ち退くことになりました

京都が好きなので、近所のほかの物件を探そうと思っていましたが、なぜかその気になれません。代わりに、ふと「その前に屋久島に長期滞在しよう」というアイデアが閃いたのです

ダメ元で、長期滞在者向けのゲストハウスか何かないかと探したら、1軒だけありました。しかも、コワーキングスペースが併設されているなど、ワーケーションをする環境が整っていました。

あいにく部屋はすべて埋まっていましたが、「1部屋だけ2月初旬に空きますよ」と、ゲストハウスのオーナー。しかも、その時期はまさに自分が借家を退去する日と重なっていました。また、航空運賃が安い時期であることも判明。一も二もなく、ゲストハウスと航空機の席を確保しました。

結果、屋久島には5カ月間滞在しましたが、自分の価値観や人生観を微調整させるに足るインパクトがあり、行って良かったと感じる経験となりました。

「意志」と「流れに身を任せるスタンス」がセレンディピティを呼ぶ

すでにお気づきのように、このエピソードにはいくつものセレンディピティが含まれています。

ここで強調したいのは、単なる偶然や幸運ではなく、すべての出来事に対して筆者の意志が関わっていること。

もしも筆者が、「仕事はあるし、滞在費は高くつくから無理だろう」という考えを曲げなかったら、上記で述べたことは起きなかったのです。

筆者は、この時一種のフロー状態にあり、起きる出来事には抵抗せず、流れに身を任せようという気持ちになっていました。このマインドセットが、結果として功を奏したというわけです。

セレンディピティを引き寄せるには、この「流れに身を任せる」というスタンスが、重要になることがあります。その流れのタイミングは本当に人それぞれですが、それが起きた時は直感でわかるものです。

というわけで、直感が「これは人生のちょっとした節目だぞ」とささやきかけたら、その後しばらく起きることはことには抵抗せず、流れに身を任せてください

仕事も家族も、義務も責任も背負っている身としては、ちょっと怖いかもしれません。でも、案ずるより産むが易し。セレンディピティが、人生を引き上げてくれる場所へといざなってくれますから。

セレンディピティは日常にある。予想外への意識を高めよう

2022年2月に刊行された翻訳書『セレンディピティ 点をつなぐ力』(クリスチャン・ブッシュ 著、土方奈美 訳、東洋経済新報社)では、ある心理学の実験が紹介されています。

実験では、コーヒーショップの入り口に5ポンドの紙幣を落としておき、店内の各テーブルには、お客さん役の仕掛人を1人ずつ配置。

そして、その店に「自分をとびきり運が良いと思っている人」と「とびきり運が悪いと思っている人」を行かせます。

結果は次のようなものでした。

「幸運なマーチンは店に歩いていき、5ポンド札を見つけて拾い、店内に入った。コーヒーを注文するとビジネスパーソンの隣に座った。そしてビジネスパーソンに話しかけ、仲良くなった。

一方、不運なブレンダは5ポンド札には気づかなかった。やはりビジネスパーソンの隣に座ったものの、実験が終わるまでひと言も話さなかった」

(本書より)

この実験には、セレンディピティを引き寄せるヒントが隠されています。それは、なんの変哲もない日常の枠外にある、「予想外なことへのオープンな姿勢」です。

じつは、セレンディピティの種は、その辺にいくらでも落ちていて、その気になればいくらでも拾うことができると、考えることもできます。

それを拾う意欲がある人はセレンディピティに恵まれ、そうでない人は決まりきった日々が続くことになるのではないでしょうか?

もしも、「最近良いことがないなあ。悪いこともないけれど…」と、不満を感じているなら、ちょっとだけ自分の殻を破ってみると良いでしょう。

この意識づけは内向的な筆者にとっても課題ですが、たとえば、何度も同じカフェに行かない、短期のカルチャースクールを渡り歩き、毎回参加者とおしゃべりをするなど、細かい工夫を重ねています。

「何か」が起きるまでの辛抱強さは必要

セレンディピティを追求するにあたって注意したいことが1点あります。

それは、何か1つの兆候が見えてから、具体的に「これはセレンディピティだ!」と思えることが起きるまで、結構なタイムラグがあることです。

これは、前掲書では「インキュベーション(培養)期間」と呼ばれています。

セレンディピティを、1回だけの小さな幸運で終わらせず、大きな結果を導くには、このインキュベーション期間を辛抱強く過ごすことが肝心。それには「レジリエンス」が必要であると、本書の著者は力説しています。

レジリエンスとは、心理学的には「困難に際してうまく適応できる能力」を意味します。ここでは、セレンディピティの前に起こりやすい大小のハードルを乗り越える力と言い替えられるでしょう。

レジリエンスを後天的に身につける方法は、本書でいくつか紹介されています。その1つは以下のようなものです。

これまで上手に対処できた状況をいくつか覚えておき、新たに困難な状況に直面した時には、それを思い出してもいい。私は新しい研究論文を書き始める時、よくそうする。

まっさらのページと向き合うのは辛いものだが、これまで何度もそれを乗り越えてきたという事実が、不安を少し和らげてくれる。

とにかく一通り原稿を書いてしまい、2巡めから本格的に仕上げていくという方法も役に立つ」

(本書より)

「今日の不運が明日のセレンディピティになる」という言葉もあります。

筆者は、「セレンディピティの種リスト」というものをつくっています。予兆と思える小さな幸運だけでなく、「好ましくはないけれど、もしかしてセレンディピティに変貌する?」と感じたものを書きこむのです。

時々そのリストを見返せば、これから起きるかもしれないセレンディピティをしっかりつかむ確率が上がると考えています。

リスト自体はシンプルなTo Doリストと同じように箇条書きすれば良いだけなので、誰でも簡単にはじめられます。

ぜひみなさんも、まずは日常の些細な出来事から目を向けてみて、セレンディピティを呼び寄せる練習をしてみてください。