仕事もプライベートも充実させて、健康で毎日を過ごすためには運動は重要です。
その重要性は年齢を重ねていくとともにますます痛感せずにはいられません。また、スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセン著の『運動脳』にもあるように、身体だけではなく運動がメンタルに与える影響も無視できません。
そのため、筆者はパンデミックがはじまってから、まじめに宅トレを続けています。
アメリカで大人気の「Hybrid Calisthenics」
筆者が住んでいるアメリカでは、特に肥満が社会問題になっています。
運動をはじめたは良いけれど、体型や運動能力を気にしてワークアウトに躊躇したり、体育会系の厳しいトレーナーが苦手でジムには行きたくないという人が大勢います。日本でもジム通いに気後れしている人もいるでしょう。
そんな状況を背景に、今アメリカで幅広い層から支持されて注目を浴びているワークアウトYouTubeチャンネルをご紹介します。
それは「Hybrid Calisthenics(ハイブリッド体操)」。チャンネル開設から2年半ほどで、現在の登録者数は300万人を超えています。
わかりやすさと親しみやすさが魅力
コンテンツクリエイターは、アーカンソー州のフィットネストレーナー、ハンプトン・リウさん。
2020年から公開しているワークアウト動画が多くの人気を集めるのには、いくつか理由があります。
まず、超初心者でもはじめやすく、ワークアウトを基礎から少しずつレベルアップしていく、段階的なわかりやすい内容が魅力です。
そして、マッチョではない体型に、Tシャツとビーチサンダル姿の近所のお兄さん、といった雰囲気と、ソフトな口調でユーザーに寄り添った指導をするハンプトンさんには親しみが感じられます。
裏庭や公園などで撮影した動画に「ジムやウェア、ツールがなくても運動はできる」という彼のメッセージを感じます。
超初心者でも確実に力がつく、腕立て伏せのバリエーション
ハンプトンさんが教えるエクササイズのキーワードは「progression(進歩)」。
つまり、簡単なものから難度と負荷が高いものへと段階を経て少しずつ実践してレベルアップしていくのがポイントなのです。
たとえば、腕立て伏せをやったことがない超初心者が通常の腕立て伏せをやろうとしても、手の位置や姿勢などについていろいろ疑問があるかもしれませんし、筋力も足りないかもしれません。
そんな時、ハンプトンさんの手ほどきは特に心に刺さります。
腕立て伏せの場合ならいきなり床を使うのではなく、壁を利用した「ほぼ立ち姿勢」での腕立て伏せから開始。そこから、腕立て伏せのバリエーションをこなしていくと、通常の腕立て伏せをするスキルと筋力が養われるという仕組み。もちろん自信もついてきます。
筆者が2年ほど前に宅トレをはじめた時には、手のひらと足先だけを床につけた通常の腕立て伏せができませんでした。
そこで、ハンプトンさんが動画で教えている膝つき腕立て伏せからスタート。段階を踏んで週3回のワークアウトを続けてきたら、今では通常の腕立て伏せが20回以上できるようになったんです。
5週間のブランク後も効果を発揮! 動画で学ぶ段階的ステップ
今夏、日本への里帰り&その後の時差ボケと睡眠不足で5週間ほどまったくワークアウトができなかった期間がありました。
ようやく通常の睡眠パターンが戻り、ワークアウトをしようとしたものの、気持ちも体もついて行かず。数週間やらなかっただけですでに体力の低下を実感…(涙)。
そんな時に、ハンプトンさんの動画を思い出して復習することにしたのです。
上の動画は、2022年5月にアップされた腕立て伏せの最新版。
筆者が最初に利用した2020年の動画と同じように、もっとも負荷の軽い一番簡単なバリエーションから紹介されています。
2年前の動画と比べて、肩の位置、腕や肘の位置、足の位置や幅、姿勢など細かいアドバイスも含まれていて、特に超初心者が感じるような疑問には答えが提供されています。
では、動画で紹介されている腕立て伏せのバリエーションを見ていきましょう。
Wall Pushup(壁を使った腕立て伏せ)3:28〜

最初は立っている状態で壁を使った壁腕立て伏せです。今回はここからはじめました。
ハンプトンさんのおすすめは50回を3セット。楽勝と思っていたら、この50回が意外に苦しい。
1セットからスタートして少しずつ増やしていき、数日後にはかなりブランク前の感覚が戻ってきました。
Incline Pushup(傾斜をつけた腕立て伏せ)5:42〜

前のバリエーションができるようになったら、負荷を少し増やしたバリエーションに進みましょう。
胸からお腹ぐらいの高さの家具や手すりを利用した、傾斜をつけた腕立て伏せです。40回× 3セット。
Advanced Incline Pushup(もっと傾斜をつけた腕立て伏せ)6:25〜

次は傾斜の角度をもっと大きくして、35回×3セット。
低めのスツールやベンチなどが利用できますが、それが固定されていて動かないことが安全上重要です。
高さ的にはベッドがちょうどいいのですが、マットレスは柔らかくて手が安定しないのでNGでした。
Knee Pushup(膝つき腕立て伏せ)7:24〜

そして床に膝をつけた姿勢で行う腕立て伏せです。推奨は30回×3セット。
今回、筆者は復習として取り組んだので、壁腕立て伏せから膝つき腕立て伏せに移行しました。
膝をつけているのでかなり楽ですが、なるべくコアを意識するようにしています。また、手の位置や肘の角度を調整するのには、このバリエーションが適しています。
Transition to Full Pushup(通常の腕立て伏せへの移行)8:28〜
ハンプトンさんは、膝つき腕立て伏せができるようになったのにもかかわらず、通常の腕立て伏せに苦労している人に、このトランジションをすすめています。
バリエーションの1つ目は、上から下へは通常の腕立て伏せを行ない、下から上へ上がる時には膝つけ腕立て伏せを行なうものです。体を床に下ろすステップを、姿勢を意識してゆっくりやると胸筋とコアに効きます。
動画の9:16から説明されている2つ目は、床に体をつけたままで腕立て伏せをするように筋肉に力を入れてその姿勢を6〜10秒保ち、そのあと20〜30秒休むという動作。
力を入れる時、ついつい息を止めてしまって顔にも力が入りがち。ハンプトンさんは、普通の呼吸を保つようにと指導しています。
これを1〜2回、通常の腕立て伏せのセットの前に取り入れることを推奨しています。筆者も行なったことがありますが、個人的には1つ目のほうが合っているようでした。
上の段階を経て通常の腕立て伏せができるようになったら、片手腕立て伏せ(!)などの上級者用版のチュートリアルもあるので、チャレンジしてみたい方はぜひお試しを。
「筋力はスキル」少しずつ実践すれば構築できる
こうして5週間のブランク後は、壁腕立て伏せを数日、膝つきを数日、そしてトランジションのバリエーション1を少し取り入れ、1週間ほどで通常の腕立て伏せに復帰しました。
そして、通常のワークアウトメニューを以前の4割程度から再開。その後は問題なくブランク以前のレベルに戻れたので、無理せずに軽めの負荷からはじめて正解でした。
Hybrid Calisthenicsには、「フィットネスは旅路なのだから、誰でもはじめられるところからスタートすればいい」というハンプトンさんに同感する人たちのコミュニティも誕生。ワークアウトのセットメニューPDFなど、誰でも利用できる無料リソースがたくさんあります。
筆者がメインで利用しているのは腕立て伏せですが、ほかのエクササイズももちろんあるので、その時点での自分に最適な、もっとも取り入れやすいレベルからエクササイズ経験を積み上げていくのにぴったり。
今は筋力に自信がなくても、「筋力はスキル」だと話すハンプトンさんのワークアウトを少しずつ実践していけば、きっとそのスキルを構築することができるでしょう。
Video and images are used with permission from Hybrid Calisthenics.
Source: Hybrid Calisthenics(1, 2, 3), Newsweek, YouTube(1, 2)