身も蓋もないことを言えば、数千〜数万円という高級なボールペンと150円のボールペン、比べてみても書き味に関してはほとんど差はないはずです。
というのも、高級筆記具のお値段はほぼ軸の素材(金属軸など)とデザインにかかっているから。書き味を決めるリフィル(芯)は数百円台のペンと同じ、なんてこともよくあることです。
それに対してハサミは、加工精度や素材品質の高さがそのまま性能につながるので、価格と切れ味が正比例しがち。
もちろん500円前後のハサミでも問題なくよく切れるのが日本の文房具クオリティなんですが、そこをあえてもう一声、たとえば2〜3000円ぐらい出すことで、めちゃくちゃ満足度が上がるんです。
ハイクラスハサミは機能美が大きく違う
日本の文具ハサミ(主に紙を切るためのハサミ)は安くて高品質。ベーシックな500円前後の製品でも、普通に使う限りはまず切れ味に不満を持つことはないでしょう。
価格帯としては、その次に上位機種である1000円オーバー帯があり、2〜3000円を超えたアイテムは一般的にハイクラスと区分されます。
10月に発売されたばかりのコクヨ「HASA」シリーズは、まさにそのハイクラスハサミの新製品なんです。

こちらは、写真左から順に、以下の通りに用途分けされています。

じゃあ、これが今までの安いハサミとどう違うか?
「普通のハサミだってちゃんと切れるんだから、安いほうが得でしょ」と考えるのも当然。
しかし同じ「切れる」にしても、500円帯のハサミとハイクラスなHASAでは、なにより切った際の気持ち良さが違うんです。

単にコピー用紙に刃を入れるにしても、500円帯が「ジャキ、ジャキ」という手応えで切れるのに対して、HASAは「シューッ、シューッ」という滑らかさ。抵抗なく紙が切れていく感覚がとても気持ち良いのです。
これまでハイクラスハサミを使ったことのない人であれば、切れ味の良さとはこういうものか! と間違いなく驚くはず。
作業の効率化などにはまったく寄与しませんが、切る時の手触りが爽快で気持ち良い、という官能性だけでも充分に入手する価値はあると思います。

もう1つ、ハサミの切れ味を試すのに最適なのが、梱包用のエアクッションシート。
一般的にプチプチと言われているアレは、切りづらい薄いフィルムシートが二重になっているため、よほど鋭いハサミでない限り、きれいに切るのが難しい。
もちろんHASAならプチプチもスパーッと切り口鮮やか。優秀さを体感するのに、ぜひ試してみてもらいたいです。
見た目の地味さは、誠実につくった証
とはいえHASAシリーズの見た目は、「徹底的に地味〜!」のひと言。とても数千円するハサミとは思えないシンプルなビジュアルでしょう。
ですが、実はこの地味さにこそ、ハサミの高品質さが凝集されているといっても過言ではありません。

まずスマートとは言い難いボテッとした樹脂ハンドルは、手への当たりを和らげるために徹底的にエッジを削ぎ落としてあります。
この握りやすさは本当に特筆もので、力強くグッと握って厚手のダンボールを切り進めるなどしても、指にフィットして痛くなりにくい!

また、板厚の厚い刃は二段階に分けて刃付けをしてあり、鋭利さと、刃が欠けにくい頑丈さを併せ持っています。
さらに刃がハンドルの手元側までほぼ貫通していることで、手の力がしっかりと刃に伝わる構造も重要です。
逆に言うと、ハサミに本当に必要なこれらの機能を突き詰めて余分を削ぎ落とした結果が、地味な…言い換えれば、誠意のあるビジュアルにつながっているというわけ。
もちろん、紙を切るだけに数千円はもったいない、という意見もごもっとも。いくら誠意を込めてつくられたすごいハサミであっても、そこに価値を感じなければまったく無駄ですし。
なので今回は無理にオススメはしません。ただ、ハイクラスならではの切れ味の良さと気持ちよさを感じてみたいというのであれば、絶対に買って損はないと思います。