「睡眠は長さより質が大事」「眠いときに眠れ」など、睡眠に関するアドバイスはさまざま。
一体、何がいいのかわからなくなりますが、まずは基本を重視することからはじめるのが良さそうです。
2017年にアメリカで出版されベストセラーにもなった『Why We Sleep: Unlocking the Power of Sleep and Dreams(和訳:睡眠こそ最強の解決策である)』は、睡眠の力について書かれています。
これは、カリフォルニア大学バークレー校の教授で睡眠を研究する、マシュー・ウォーカーさんがこれまでの研究結果をまとめたものです。
今回はその中から、睡眠の質を高める方法をご紹介したいと思います。
睡眠研究者が8時間睡眠を死守する理由
この本で注目すべきは、レム睡眠とノンレム睡眠の割合が、睡眠の初め(深夜)と終わり(早朝)では変化するという事実です。
レム睡眠は「夢を見る状態」、ノンレム睡眠は「脳が休息している状態」で、寝ている間の脳はこのサイクルを繰り返しています。
研究によると、朝に近くなるほど、夢を見るレム睡眠の割合が多くなるそう。だから、目覚めたときに覚えている夢は起きる直前まで見ていたような気がするんですね。
このレム睡眠とノンレム睡眠のバランスを取るには、7〜8時間続けて寝なければなりません。だからこそ、睡眠時間は8時間を死守するというウォーカーさん。
睡眠不足が心身に与えるさまざまな悪影響(しかも通常は自覚がほとんどありません)は「あとから寝だめしても帳消しにはできない」と言い、6時間以下の睡眠には警鐘を鳴らします。
質の高い睡眠をとるための12カ条
8時間睡眠はどこでも聞く定説ですが、忙しいビジネスパーソンはそこまで寝る時間がないでしょう。
では、そのほかに睡眠の質を高める方法はあるのでしょうか? ウォーカーさんは著作の終わりに、アメリカ国立衛生研究所の「良い睡眠を取るための鉄則」を紹介しています。
良質な睡眠の鉄則12
- 毎日同じ時間に就寝、起床する
- 寝る前にエクササイズはしない
- 特に午後には、カフェインとニコチンを摂らない
- 寝る前にアルコールを摂取しない
- 夜遅くにたくさん飲食をしない
- 睡眠を遅らせたり妨げる薬をできるかぎり飲まない
- 午後3時以降は昼寝をしない
- 就寝前はリラックスする
- 寝る前に熱いお風呂に入る
- 寝室は、暗く室温は低め、デバイスなど気が散るものを置かない
- 日中には適量の日光を浴びる
- ベッドに入っても寝つけないなら起きて、リラックスすることをして、眠くなったらベッドに戻る
どれもどこかで聞いたアドバイスですが、ウォーカーさんは、12カ条の中でも1が最も大事だと言います。
8時間睡眠を毎日とれない人でも、まずは就寝、起床時間を決めることからはじめてみるといいでしょう。
健康に最重要なのは、食事よりも運動よりもまず睡眠
良い睡眠は健康に不可欠。ウォーカーさんは、その重要度を指摘し、実は睡眠・食事・運動の3本立てではなく、睡眠がなんといっても基本でその次に食事と運動があるという「睡眠最重要説」を唱えています。
だからこそ、日本語訳では「睡眠こそ最強の解決策である」というタイトルになったんですね。
ほかにも、睡眠薬や飲酒で眠くなるのは本当の意味での「睡眠」ではないこと、夢を見る理由と効用などを紹介しており、読んだら寝ずにはいられない1冊です。
睡眠に興味がある方は、読んでみるといいでしょう。でも、夜に手にすると睡眠を犠牲にしても読み続けたくなるかもしれないので、ご注意を。
──2020年10月10日の記事を編集のうえ、再掲しています。
執筆:ぬえよしこ
Source: Simon and Schuster, NIH Medline Plus, Amazon.co.jp(1, 2), Instagram