「考えが浅いんだよ!」「ツメが甘い!」「なんか表面的だよね」「薄いなあ」「それでちゃんと考えたって言えるの?」「これだけで判断できると思う?」「まさか、今ので考えたこと全部ですって言うつもりじゃないよね?」、等々(「まえがき」より)

多かれ少なかれ、上司からこのようなことばを投げかけられた経験は誰にでもあるのではないでしょうか?

そんなときには、「普段から本当に“よく考えて”仕事をしていますね」と評価され、一目置かれる存在として働けるようになりたいと考えるかもしれません。だとすれば、それを実現するためにはどうしたらいいか?

この問いに対し、大切なのは「考え抜く」ことだと主張しているのは、『トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術』(浅田すぐる 著、日本実業出版社)の著者です。

つまり本書では、非常に抽象度の高いテーマである「考え抜く」ことについてのさまざまなことを、サラリーマン時代の大半を過ごしたトヨタでの具体的な体験・エピソードをもとに解説しているのです。

所属していたのは製造現場ではなく、海外営業部門のオフィスワーカーです。

(中略)そもそもデスクワークでの例しかでてきませんので、どの業界のどの業務に従事されている方であっても、自身に置き換えて読みやすくなっています。(「まえがき」より)

そのため、世の中に数多く存在する「製造現場での働き方に焦点を当てたトヨタ本」を読んでもピンとこなかった人にこそ、本書は役立つというわけです。

なお本書では、さまざまな局面において「TBP(Toyota Business Practice)」というものが重要視されています。

どうやら、それが大きな意味を持つようなのです。そこできょうは、考え抜くことを学んでいくうえで決して無視できないTBPがどのようなものであるのか、その点について検証してみたいと思います。

「トヨタ・ビジネス・プラティクス」とは?

トヨタの研修においては、「トヨタ・ビジネス・プラティクス(通称「TBP」)」に多くの時間が割かれるのだそうです。直訳すれば、「トヨタにおける仕事(=ビジネス)の実践、業務の進め方(=プラクティス)」といった意味合い。

つまりは、「トヨタで働くとはこういうことです」という定義が、明瞭に言語化されているわけです。

そんな“トヨタにおける仕事の定義”は、「TBP 8STEP」と呼ばれる次の8つのステップで構成されているのだといいます。

・STEP1:問題を明確に定義する

・STEP2:問題を分析し、分解する

・STEP3:改善の目標を設定する

・STEP4:真因を分析する

・STEP5:対策を立てる

・STEP6:対策を実行し、最後まで見届ける

・STEP7:結果とプロセスの両方をよく見る

・STEP8:うまくいったプロセスを標準化する

(29〜30ページより)

トヨタでは日本に限らず、世界中の従業員が、これを学んでいるようです。とはいえ、見ていただければわかるとおり難しいものではありません。それどころか、誰でも学ぶことができる開かれた知見であるといえるでしょう。

各ステップについては以後の章で詳細な解説がなされていますが、最初の時点での共通認識にしておきたいことは、8つのステップを通じて読み取れる次の1点だけでOKなのだとか。

「問題の明確化」「真因(とりあえずは真の原因といった理解で大丈夫です)の分析」「対策の立案」等々。(30ページより)

いわばこの8ステップは、「問題解決手法」を意味するわけです。したがって「トヨタにおける仕事とはなにか?」についての定義は、以下のひとことに要約できることになります。

TBP=トヨタにおける「仕事=働く」とは、「問題解決」である(31ページより)

加えて、「仕事=働く」とは、「だれかを楽にすること」でもあるのだそう。いずれにしてもトヨタでは、こうして多くのことが再現しやすいように言語化、フレームワーク化されており、それを「標準化」と呼んでいるわけです。(28ページより)

社員の行動規範をまとめた「トヨタウェイ」がベース

TBPのベースには、より抽象度の高い上位概念として社員の行動規範をまとめた「トヨタウェイ2001」というものがあるのだそうです。

「普遍のものとして絶対視し、思考停止に陥ることがないように」との考えから、つねに「2001年時点」と併記されていたものが、約20年を経て「トヨタウェイ2020」にアップデートされたのだといいます。

その際、これからの時代に求められる行動規範として最初に掲げられたキーワードは“だれかのために”であり、それは公式企業サイトに記載されている解説文にも反映されているようです。

人は人のために努力する、工夫する、頑張れる。

今日もお客様の視点に立ち、待っているだれかの視点に立ち、

自分を超えた自分になる。(37ページより)

自分本位ではなく、「自分を超えた自分」になって問題解決を実践するというこの考え方は、トヨタのみならず、すべての仕事にあてはまるものではないでしょうか? そう考えると、応用範囲の広さを実感できるのではないかと思います。(36ページより)

こうした考え方をベースとした本書には、著者自身がトヨタの現場で働きながら日々体験し、見聞きし、学び、実践してきた「考え抜く力」に関するエピソードやエッセンスがふんだんに盛り込まれています。自身の仕事を「カイゼン」するためにも、手にとってみてはいかがでしょうか?

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Source: 日本実業出版社