夏のうだるような暑さに湿気が加わると、厚手の毛布に包まれているような感じになります。
さらに、高温多湿の環境では、熱中症のリスクが高まることが知られています。
カラッとした暑さと、ムシムシした暑さの違いとは
同じように気温が高くても、湿度が低い時と高い時では状況が異なります。大きな違いは、体温を下げるために大切な、皮膚の表面から汗が蒸発するプロセスが、湿気によって阻まれる点です。
「空気が乾燥していると、汗が体から蒸発しやすいのですが、湿度が上がると、汗をかいて効率的に体温を下げるのが難しくなります」と説明するのは、高温多湿の環境で知られるテキサス州ヒューストンにあるヒューストン・メソジスト病院で救急医を務めるNeil Gandhi氏です。
汗が蒸発せず、皮膚にまとわりついた状態になると、実際の気温よりも暑く感じます。
アメリカで広く用いられているヒートインデックスは、気温に湿度を加味した、体感温度を示す指標です。
気温と湿度がそろって高まると、ヒートインデックスの数値も上昇します。
熱中症を避ける方法
Gandhi氏によれば、熱中症で病院に運ばれる件数が増えるのは、次の3つのタイミングだそうです。つまり、「人がまだ暑さに慣れていない初夏の時期」「ヒートインデックスの数値が特に高くなる熱波が訪れた時」、そして「アメフトの練習が始まる学校の夏休み明け」です。
熱中症を避けるために心がけておきたい、重要な対策があります。
それは、体を徐々に暑さに慣らしていく暑熱順化と呼ばれるプロセスです。数日、あるいは1週間かけて体を慣れさせるようにすると、暑さに対応する生理学的な変化が起き、発汗量や皮膚の血流量が増加し、体を動かしても心拍数や深部体温の上昇を抑えることができます。
「人の体は、驚くほどよくできています。慣れるための時間を長くかけるほど、うまく適応できるでしょう」とGandhi氏はアドバイスしてくれました。
もちろん、熱中症を避ける方法はほかにもあります。
1日の中でも特に暑い時間帯は屋内にいるようにすることも、ひとつの方法です。また、極端に気温の高い環境に身を置くことをなるべく避けましょう。
水分補給を欠かさないようにするのも、対策として挙げられます。
体に水分を与えるだけなら、何も入っていない水で十分ですが、塩分が入った飲み物を飲むほうが、体調が良くなるように感じるなら「ぜひそれを続けてください」とGandhi氏は述べています。
エビデンスを見ると、塩分には悪影響はありません。つまり、少量の塩分であれば、人体には害はないということです。ただし、生理学的なレベルで言えば、水にはあらゆるスポーツドリンクと変わらない効果があると言えます。
熱中症を疑うべき危険なシグナルを知ろう
熱中症を疑うべき危険な症状としては、意識障害、意識の喪失、嘔吐、皮膚が乾き熱くなる、大量の発汗、体温の異常な上昇などが挙げられます。
自分や周囲の人にこれらの症状が発生していると気づいたら、すぐに助けを求めてください。熱中症を起こしやすい小さな子どもや高齢者の場合は、特に注意が必要です。
「熱中症は、医療措置が必要な緊急事態です」とGandhi氏は警告します。
こうした症状が出ている人は、速やかに医療機関の救急部門に連れていかなくてはなりません。処置が遅れると、体に取り返しのつかない障害が残ることもあり得ます。
とはいえ、早い段階で発見して適切な処置をすれば、「大半の患者さんは非常に順調に回復します」と、Gandhi氏は教えてくれました。