「SNSマーケティング」と聞いて、何を想像されるでしょうか? 勤務先では何か効果的な施策をされていますか?
これまでコーポレートサイトしか作っていなかった企業が、SNSを活用したマーケティングをはじめる例が増えています。
筆者にはあるメーカーに中途入社した知人がいるのですが、彼女の会社もSNSマーケティングをスタート。しかし、関連知識が乏しいまま1人で担当を任され、リモート環境で悪戦苦闘しているようでした。
しかし、どうやらこれはレアケースではないようです。
こんなに多いSNSマーケティングの業務
ひとりぼっちのSNS担当者は非常にリスクが高いーーそう話すのは、SNSエキスパート協会の代表理事・後藤真理恵さん。
SNSマーケティングと聞くと、筆者のような門外漢には、いつかバズる日を夢見て、SNSに商品情報を日々投稿する…くらいしかイメージがわきません。しかし実は、非常に多岐にわたる業務をこなす必要があるのです。
「日々のSNS投稿案の作成、フォロワーからのコメントやメッセージへの返信、炎上対策、効果測定など、SNSアカウント運用だけでも、その業務範囲は多岐にわたります。
さらにSNS広告やキャンペーンなど他の施策も並行して進めることも多く、高いスキルや長時間労働が求められがちです」(後藤さん)
著書『SNSマーケティングはじめの一歩 無理なく成果を出し続ける運用のコツ』(技術評論社)の筆者である後藤さんは、担当者の仕事をこのように概説します。甘く考え、1人ですべてこなそうとする危険性に警鐘を鳴らしています。
ディレクター、クリエイター、リーダーの3名体制が理想
SNSマーケティングの専門エージェンシー、コムニコ社の調査によれば、一般企業のSNSアカウント運用チームは平均2.5名。専任でなく、ほかの業務を掛け持ちしていることが多いそうです。
後藤さんは、チームの基本構成として、メイン担当のディレクター、サブ担当のクリエイター、責任者であるリーダーという3名の陣容を挙げます。そうでなければ、なかなかSNSマーケティングが実を結ぶことが難しいようです。
この場合、ディレクターの主な業務は、スケジュール管理やフォロワーとのコミュニケーションなどがあり、クリエイターは(文章や写真などの)投稿コンテンツの企画・制作、リーダーは、 KGI・KPIの設定・管理や投稿可否の最終決定などの役割を担います。
加えて、SNSマーケティングエージェンシーといった外部の力を借りることもあります。さらに、チームの立ち上げ時には、社内外に向けたSNSのガイドラインやポリシーを作成し、運用マニュアルを整備することも必要。
こう見ていくと、ひと口にSNSマーケティングといっても、全社的な理解と協力が不可欠であることがわかります。
運用マニュアルといえば、忘れてはならないのが作業フロー図。後藤さんは、「月ごと、週ごと、日ごと、または随時発生する個々の作業ごと」にフロー図を作っておくことをすすめます。以下、月次の作業フロー図の例を掲載しますので、参考にしてください。

キャンペーンは効果的だが“懸賞ハンター”には要注意
SNSをはじめたばかりの頃は、当然ながらファンもフォロワーもほとんどおらず、ただ投稿を続けてもなかなかすそ野は広がらないもの。
そこで、フォロワーを増やす施策が必要となります。後藤さんはその方法として、コーポレートサイトや広報誌など自社資産の活用、「フォロワー獲得広告」などの宣伝活動、キャンペーンの実施の3つに大別して挙げています。
ここでは、キャンペーンの実施にフォーカスを当てましょう。
キャンペーンといえば、フォローを条件として、抽選でプレゼントを進呈するやり方を思い浮かべる人が多いと思います。実はこの方法、Twitterでは問題ないですが、FacebookやInstagramでは規約違反となるケースもあるのだとか。
また、Twitterでこうしたキャンペーンを行なう場合、後藤さんは「万人受けする現金や金券だと、“懸賞ハンター”の応募割合が高くなる」と指摘。懸賞ハンターは自社の商品・サービスに関心を持っているとは限らず、キャンペーンが終了するとフォローを外されることもあります。
そのため、プレゼントするなら自社商品・サービスの購入に使えるクーポン券など、自社のファンやファンになりそうな人が喜ぶものがベストです。
後藤さんは、応募してすぐに当落がわかるインスタントウィンキャンペーンの検討も薦めています。これは気軽に参加でき、ゲーム的要素もあって人気が高いというメリットがあります。
実施する際は (ATELUなど)SNSキャンペーンツールを導入すると、業務の手間がかなり減らせるでしょう。
「やさしきタイ」の投稿で関係を深めよう
ファンやフォロワーがある程度増えてきたところで力を入れたいのが、彼らと「関係を深める」こと。
そのために必要なのが、新発売のお知らせ的な投稿だけでなく、純粋に楽しめたり、喜んでくれる要素の含まれた投稿です。後藤さんは、そうした投稿を考える上で必要な要素は「やさしきタイ」だと言います。
や:役に立つ
さ:参加できる
し:親しみやすい
き:共感できる
タイ:タイムリーである
例えば、「親しみやすい」だと、「おはようございます」といった挨拶、かわいいキャラクターを使った投稿、社内舞台裏の打ち明け話など。これを、SNSごとの仕様・トレンドに合わせて作り込んでいきます。
そして、こちらからの投稿に対して、ファンやフォロワーからコメントがあった場合、返信をするかどうか。これは事前に社内で検討して、ルールを決めておく必要があります。
返信したりしなかったり、「いいね」をつけたりつけなかったりだと、「不公平感や不信感を与えてしまう危険性」があるからです。そうした方針を決めたら、SNSのプロフィール欄に明記しておきましょう。
さらに後藤さんは、アクティブサポートとアクティブコミュニケーションを積極的に行なうようアドバイスします。
「SNS上で自社商品やサービスに対する疑問、不満、要望、感想、意見などを投稿しているユーザーを『エゴサーチ(ソーシャルリスニング)』で見つけ出し、企業公式アカウントから能動的に話しかけてみましょう。
ユーザーの疑問・不満の解消、ユーザーの満足度向上、ユーザーとの良好な関係構築などを目指せます」
この時、相手の過去の投稿や自社とのやり取りが既にあるかどうかをまず確認。内容的には相手が必要としている回答や提案にとどめ、宣伝・営業はしないことが肝心です。こうした点に留意して、ユーザーへの働きかけを行ないましょう。
少し長くなりましたが、これでもSNSマーケティングのごく一端を紹介したにすぎません。これからSNSマーケティングをはじめようという方、まだはじめて間もないという人は、本書を手引きに取り組んでみてはいかがでしょうか。