断言しよう。
正解も連続性もない、不安定な時代だからこそ必要なのは「何をするか」ではなく、「何をしないか」を決める勇気。
習得するべきは「何かを得る」スキルではなく、足るを知る極意と「何かを削ぎ落とす」ミニマル術だ。(中略)
安定せず急変し続ける社会に対応できる身軽さ、経済の混乱に振り回されない身のこなしこそが、現代における強みとなる。(「はじめに」より)
『超ミニマル主義』(四角大輔 著、ダイヤモンド社)の著者はこのように主張しています。「本書は、余計なコト・モノを手放して、身のまわりをミニマル化し、楽でシンプルな働き方を手にするための教科書である」とも。
たしかに周囲を見渡してみれば、“余計なコト・モノ”が意外に多いことに気づきます。それは仕事に関しても同じでしょうが、本書を読めば、「どうでもいいこと・押しつけられた仕事」のために奪われる時間を最小化し、「本当に大切なこと・自分にしかできない最高の仕事」に集中できるようになるそう。
仕事に喜びを感じ、楽しく働ければ、日々の生活の充実感が増す。満たされた暮らしは、心を整えて体を健康にし、持続可能な働き方を後押しする。すると、労せずいいパフォーマンスを維持できるから、持続的な成果が自然についてくる。
この好循環に入れば、人生の幸福度はどんどん高まっていく。
これこそが、筆者が伝えたい『超ミニマル主義』の真髄だ。(「はじめに」より)
このような考え方に基づく本書のなかから、きょうはSTEP6「タスクの軽量化」に焦点を当ててみたいと思います。
マルチタスクを手放す
ビジネス書などではよく、「マルチタスク」の重要性を説く記述を目にします。しかし、人間の脳はひとつのことにしか集中できない構造になっているため、マルチタスクなど不可能なのだと著者は反論しています。
実際、マルチタスクの無意味さを示す研究はいくつもある。スタンフォード大学は「記憶力と集中力の低下」を、ロンドン大学では「IQを下げる」ことを発見。サセックス大学は何と、「脳の形を変える可能性」を示唆した。
難しい仕事、小さな雑事に関係なく、ただ実直に一つひとつ片づけていくしかない。だからこそ、優先順位をつけるのだ。(256ページより)
つまり、「いまここでやるべき、いちばん重要なタスクだけ」に集中すべきだということ。「シングルタスク」を次々と繰り返すことこそが重要であり、そこでは「優先順位づけ」と「捨てる勇気」こそが大きな意味を持つというのです。
したがって、まずやるべきは、自分がいま抱えているタスクをすべてリストアップし、カテゴリー分けすること。そしてカテゴリーごとにタスクの優先順位を考え抜いたうえで、意を決して不要なタスクを捨てるべきだということです。
難しいことのように思えるかもしれませんが、あるテクニックを活用し、シンプルな仕組みさえつくってしまえば誰でもできるようになるのだとか。キーワードは「取捨選択」「メリハリ」「一点集中」だそうです。(256ページより)
頭のなかを軽くする
日々の「小さな気がかり」と向き合わずにいると、脳はどんどん疲れていくもの。それは恒常的なストレスとなっていくため、じりじりとパフォーマンスが下がっていく可能性もあります。
「やることが多すぎる」「でもやらないと」というような焦りが先走り、気が散ってしまいがちになり、なかなか仕事に集中できない。タスクに追われて1日が終わり、あっという間に1週間が、1か月が、1年が過ぎ去ってしまうーー。そんな実感を持っている方も少なくないでしょう。
心理学的にいうとそれは、過度な焦燥感やストレスによって、頭が混乱してうまく働かない“小さなパニック状態”なのだと著者は述べています。
そもそも、世の中には「多い/たくさん」なんて数は存在せず、正確には「今日のタスクは8個ある」とか「14個ある」ということのはず。
まずやるべきことは、深く深呼吸して脳に充分な酸素を送り込みながら、手持ちのタスクをすべて書き出すことだ。「大量」というぼんやりした認識から脱すべく、手を使って数値化し、「具体的な量」を割り出すのである。(259ページより)
タスク関連のメモがPCや手帳などに散らばっているのであれば、それらすべてをーー1冊のノートに書き写すようにーーPCの「TO DOリスト」に統一すべきだといいます。ポイントは、「すべてを1か所にまとめる」こと。
なお、「タスクの整理整頓」は朝に一気に終わらせることが重要で、目標は2時間以内。しかも集中力がもっとも高い早朝から開始し、世の中が喧騒化するまでに終わらせるのが理想。ノイズレスな環境で行うと、夢中になることができ、「脳のクリーンアップゲーム」のように楽しめるのだそうです。
ただし、「TO DOリストづくり=タスクの整理整頓」には3つの注意点が。
① 文章ではなく箇条書き
文にしようとすると、「うまく書こう」という意識が働いてテンポが悪くなり、すべてを書き出せなくなる可能性がある。
ただ淡々と、「A社へのアポ」「営業報告書」「◯さんに電話」というように、断片的な言葉をリストアップしていく
② 書く時は手を止めない
大切なのは勢い。一度始めたら「何一つ逃さず拾い上げる」という気迫で、このワークだけに没入して一気に行う。重複があってもかまわない。「これ書いたかな?」など考えず、とにかく手を動かす。重複したものは後で削ればいい
③ クリエイティブになる
頭のなかの「やらなきゃ」の洗い出しは、退屈な作業じゃない。脳の「ひらめきの源泉」にアクセスする、クリエイティブワークだ。気分を高めて思考を柔らかくし、そこから出てくる「何か」にワクワクしながら、楽しみながらやろう
(以上261〜262ページより)
このワークに夢中になると、やるべきタスク以外にも、「仕事でやりたいこと」「挑戦したいプロジェクト」といったアイデアや着想が湧いてくるといいます。さらに、仕事とは無関係な、プライベートや趣味の世界で「やってみたいこと」「夢」まで飛び出してくるそうです。(259ページより)
『超ミニマル主義』は、思考を衝撃的にリセットし、脳の初期設定を書き換えるだろうとまで著者は述べています。
ただし忘れるべきでないのは、本書の目的が「行動すること」にあるという点。実際に動くことで現実を変え、習慣化し、人生をアップグレードできるということ。“余計なコト・モノ”を排除してよりよい生き方をするために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
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Source: ダイヤモンド社