考える人のメモの技術』(下地寛也 著、ダイヤモンド社)の著者は、“日本でいちばんノートを売る会社”であるコクヨで30年働いている人物。ワークスタイルコンサルタントなどを経て、現在はコーポレートコミュニケーション室という、コクヨ全体のコミュニケーション戦略を考える部門の責任者を務められています。

これまで多くの業務を通じ、日本を代表するクリエイターを筆頭に、あらゆるクリエイティブな仕事をしている人たちと接してきた結果、ある共通点を発見したのだといいます。

その共通点とは、彼らは考えるときに、書くことにこだわりながら、商品企画をしたり、マーケティングを考えたり、顧客への提案をつくっていることでした。

これは言語化すべきだと考え、現場の最前線にいる人たちにインタビューを行い、メモのテクニックをまとめたのがこの本です。(「はじめに」より)

ここで伝えようとしているのは、「正解のない問いに対して、自分らしい答えを出す力を身につけるためのメモの技術」だそう。ただしそれは、効率的にメモをとる方法や、パターン化された答えを引き出すためのメモ術とは異なるもののようです。なぜなら、そういったやり方では、誰が考えても同じ答えになってしまうから。

たしかにメモは“物事を忘れないために書いておくもの”でもあります。しかし、それだけではなく、自分の考えを深めるすごいパワーを秘めているというのです。

人は考えるときに「言葉」を使いますが、それを「文字としてメモする」ことで思考は前進します。(「はじめに」より)

では、メモをとることでどのようなメリットが得られるのでしょうか? そのヒントを得るために、PART 1「インプットメモ:普段の気づきをメモする技術」内の「PART 1/CHAPTER 1「メモの基準を持つ」のなかから「情報を選び取る『感度』を高くしよう」に注目してみましょう。

メモの基準を持つことで、情報感度は磨かれる

著者によると、仕事ができる人は情報を拾い上げる「情報感度」が高い傾向にあるのだそうです。

ピンときたらササっとメモし、書かないでいいやと思った場合はスルー。その判断に迷いがないというのです。したがって、自分にとって意味のある情報だけがノートに積み重なっていくわけです。

対してメモが苦手な人は、気分でメモをするため、内容にムラが出てしまいがち。そのため、ポイントが絞られていない“残念なノート”ができあがってしまうというのです。

この違いがアウトプット、つまり成果物の質に大きな差を生みます。

この情報感度を高めるためにしておきたいことが「メモの基準」を持っておくことです。メモの基準があると、必要な情報が目に留まりやすくなります。

これは『考具』(加藤昌治著)で紹介された、「カラーパス効果」というものです。たとえば「赤」と思って、周りを見渡すと、赤いものが目につくようになる現象です。(80〜81ページより)

人間の脳は特定のことがらに意識を向けると、数ある情報のなかからその特定のことがらに関する情報を認識しようとする性質を持っているのだそうです。だとすれば、それを積極的に活用したいところ。

そこで、「自分のアウトプットを高めるために知っておくべきことはなにかな?」と考え、リストをつくるわけです。

具体的には、メモするノートのトップページに、「どのようなことをメモしたいと思うか」を書いてみることを著者はすすめています。そうすれば、関係する情報を目にした際、「あ、これはいま調べておきたいことに関係するな」と気づきやすくなるから。

そうすれば必然的に、それまで有効な情報かどうか判断できなかったものが、「あ、この前悩んでいたことのヒントがここに書いてある」というように網にかかるようになるわけです。(80ページより)

その情報は、活用したいか? おもしろいか?

では、どのような情報をメモの基準として書き出せばいいのでしょうか? それは、大きく分けて「活用したい情報」と「おもしろい情報」の2つになるそうです。

「活用したい情報」とは、仕事や生活で試してみたい、アイデアの参考にしたい、自分の話の引用に使いたいといった情報

一方の「おもしろい情報」とは、すぐに使えないかもしれないけれど、自分の感性や嗜好性にあっているなと感じる情報。感動したり、ワクワクしたり、刺激を受けるような情報です。

つまり、単に使えそうな情報だけを集めるのではなく、感性に働きかける情報をメモすること、それが自分らしさを磨くうえで重要な意味を持つということです。

メモ活用で「T型人材」を目指す

なぜならこれからの時代は、自分らしい創造的なアウトプットが求められる機会が増えるはずだから。そして、自分らしい発想や行動をするためには、「T型人材」になる必要があるわけです。

T型人材とは、T字のタテの棒が専門性の深さを表し、ヨコの棒が一般常識や教養などの幅を表す、専門性と一般常識・教養の双方のバランスのいい人材のこと。

自分の専門性(タテの棒)を深めるメモだけでは、スペシャリストにはなれるかもしれないものの、他の分野には疎い“柔軟性に欠ける人”になりかねないわけです。

また、一般常識や教養(ヨコの棒)ばかりメモしていたのでは、雑学王になれたとしても、自分の思考のよりどころのない、軸のない人になってしまいます。

よってメモの基準を考えるときは、

・自分の専門性を高めるのに「活用したい情報(タテの棒)」の視点

・直接的には仕事に関係ないことでも、興味の幅を広げることにつながる「面白いと感じる情報(ヨコの棒)」の視点

(85ページより)

この2つを持っておくべきだということ。なお、専門性は1つに絞る必要はないそうです。なんらかの専門知識をすでに持っているなら、それを軸にして周辺の専門知識をさらに増やせばいいのです。

「活用したい情報」と「面白いと感じる情報」を、それぞれ5〜10コ程度、ノートのトップページに書いておくといいでしょう。

そうすることでメモをするときになんとなく意識できますし、新しいノートに変えるときに見返して、メモの基準も定期的にアップデートできるようになるわけです。(86ページより)

毎回、メモの基準を書き写すのが面倒なら、大きめの付箋に書いてノートの裏表紙に貼り、ノートを新調するたびに移し替えてもいいそうです。(82ページより)

メモをとることで情報感度が磨かれ、自分のことばで発言や行動ができるようになると著者は述べています。まわりの人とうまくコミュニケーションがとれるようになり、難しい仕事もパパッとこなせるようになるとも。そこで、仕事をより楽しく充実したものにするために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

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Source: ダイヤモンド社