働くことについての価値観が激変した現代を生き抜くためには、自分の価値を高めて「稼ぐ力」を身につけることが必要。『キャリアリテラシー 新時代を生き抜く88の教え』(漆沢祐樹、海野 翼 著、幻冬舎)の著者はそう主張しています。
ポイントは、お金を「もらう」時代から「稼ぐ」時代に変わったという事実。お金を稼ぐというのは会社や世の中に貢献した対価をもらうということなので、「誰かの役に立ち、喜んでもらえる人になる」必要があるというのです。
私たちは「稼ぐ力を高めて、自分の人生を自分で切り拓ける人にならなければならない」という認識を共有して、キャリア形成をゼロから学べるビジネススクールを運営しています。
キャリアは、一般的には収入アップや仕事に活かせるスキルアップなどを表す言葉として使われますが、そうではありません。
キャリアは生き方そのものです。自分に合う稼ぎ方を選択し、その道を本気で突き進むことによって周りの人を豊かにし、自分自身も豊かになることです。
自分がどう生きたいか、どうやって稼ぎたいかを考えれば、自分がやりたいこと、できること、得意なことが見えてきます。(「はじめに」より)
やりたいことが見えれば、時間やお金を浪費しないですみます。また、「できること、得意なことはなにか」を考えることにより、現実的な視点に基づいたキャリア形成も可能になるわけです。
そこで本書では、著者が学び取ってきたことを踏まえつつ、稼ぐ人になるために不可欠な思考法と、理想的なキャリアを最速で実現するポイントをまとめているのです。
きょうはそのなかから、第2章「『働く』とはーー夢と目標の違い」に焦点を当ててみたいと思います。
人生を生き抜くための3つの力
稼ぐ力をつけることも、稼いでお金を貯めることも、働くことによって実現するもの。稼ぐために必要な知識や技術は働くことで身につきますし、働いた結果としてお金も貯まっていくことでしょう。したがって、働くということの詳細についても深掘りする必要があると著者は述べています。
そのとき重要なのは、会社に頼らないこと。会社の力を使ってダイナミックな仕事をすること自体は評価に値するものの、キャリア形成まで任せてしまうべきではないということです。この先の人生をどう生きていくかを決めるためには、会社任せにせず、自分で自分のキャリアを考えることが大切なのでしょう。
なお、その要点を理解するためには、経済産業省がまとめている資料が参考になるそう。同省は寿命が伸びて会社や社会と関わる時間が長くなっていく状況のなか、個人としての価値を高めていくためのポイントを「人生100年時代の社会人基礎力」と定義し、以下の3つの能力が必要だと説いているというのです。
① 前に踏み出す力(アクション)
② 考え抜く力(シンキング)
③ チームで働く力(チームワーク)
(59ページより)
「踏み出す力」とは、自分でキャリア形成する人の原動力となる力。具体的には、主体的になること、周囲に働きかけて力を集めること、決めたことを着々と実行することが重要。前に踏み出すことができれば、それが会社任せの状態から抜け出すことにつながるからです。
「考え抜く力」は、従来型のキャリア形成に疑問を抱いたり、自分がどのような人生を歩みたいかを深掘りして考える力。重要なのは、現状を見渡し、振り返りながら課題を発見すること、課題解決の目的と計画を考えること、過去にとらわれることなく常に新たな取り組み方法や価値があると考えること。それらを踏まえることにより、自分が理想とするキャリアをつくり続けていくことが可能になるのだといいます。
そして3つ目は、「チームで働く力」。いうまでもなく会社も社会も、複数の人が共存しているもの。そのため周囲と協力し合う姿勢は大事ですし、独立してひとりで事業を行う場合も、それを仕事として成立させていくためにもまわりの人の支援や評価を意識する必要があるのです。
自分のキャリアを考えていく過程においては、チームのルールを守ることはもちろん、自分が実現したいことを発信し、わかりやすく伝えることも大切。
また、まわりの意見を聞き、考えが食い違う理由や立場の違いを理解すること、相手との関係性を踏まえること、対人関係から生まれるストレスをコントロールする術を身につけることなども不可欠。
こうした点を押さえていけば、まわりの人たちを味方にすることが可能。それを実現できれば理想のキャリアに近づきやすくなりますし、そこへたどり着くまでの時間を短くすることもできるということです。(58ページより)
「忙しい」は思い込み
自分が理想とする姿に向けてキャリアをつくりなおすことができるかどうか、そのために具体的な行動をとれるかどうか、そこはキャリア形成の大きな分かれ道。
しかし実際のところ、「こうありたい」というイメージがあるにもかかわらず、なんらかの理由をつけて後回しにしたり、方向転換しないことを選んでしまう人も少なくありません。それは、夢が夢のままで終わってしまうパターンだと著者は指摘しています。
なお、方向転換できない人がよく上げる理由のひとつが「忙しい」ということ。「いまは忙しいから、手が空いたときに考えよう」「キャリアを考える時間がないから、いまの業務が落ち着いたら考えよう」となってしまいがちだというわけです。
しかし、後回しは必ずしも解決策にならないもの。後回しすることによって時間の余裕ができるとは限りませんし、むしろ職歴が長くなれば責任ある仕事を任されるようになり、忙しさが増していく可能性もあります。また、後回し期間が長引くほど、キャリア形成に向けての意識と熱意も下がってしまうはず。
しかも30代になれば転職なども困難になり、結果的に、求めるあり方に近づけないまま人生が進んでしまうことにもなりかねません。だからこそ、そうなってしまうことを防ぐため、どうにかして時間をつくる必要があるのです。
できないと思ったら永遠にできません。しかしできるかもしれないと思えば、時間の確保などあらゆることができるようになります。少なくとも、どうやったらできるだろうかと考え始めることができます。(59ページより)
方向転換できない本当の理由は忙しいからではなく、忙しいことを理由にして、時間をつくり出すことを諦めているからだということです。(78ページより)
2人の著者は、起業の難しさや課題を実感してきたなかで、稼ぐために必要な能力や、稼ぐ人たちに共通する要素を理解するようになったのだといいます。そういった知見を凝縮した本書からは、これからの時代を生き抜いていくために必要なことを学べるかもしれません。
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Source: 幻冬舎