何もすることなく、ただ待っている。
病院の待合室や、車の修理工場、あるいは、静かな職場などで、そういう時間が生じることが誰にでもありますよね?
そんな時にはたいてい、私たちは無意識のうちにスマホに手を伸ばし、ソーシャルメディアやメールなどをチェックします。
何もしないよりは、何かしているほうが生産的なような気がするからです。
私たちは、何もせずにボーッとする時間を「非生産的」とか「退屈」ととらえてしまいがちです。
しかし実は、こうした時間は、私たちが思っているよりもずっと楽しめるものであり、生産的でもあることを示すエビデンスがあるのです。
『Journal of Experimental Psychology: General』に先日、こんな研究結果が発表されました。
ある実験から、「静かな部屋の中で何もせずにただじっと待つ」という行為は楽しむことができるが、人々はそれを常に過小評価していることがわかったのです。
「ぼんやりすること」は意外に楽しい
最初の実験で参加者たちは、窓を閉め切った部屋の中で20分間待つように指示されました。
スマホなどの自分の所持品に触れることはできません。許可されているのは、ただ椅子に座っていることだけです。
この実験の前に参加者たちは、この待つだけの時間をどのぐらい楽しめると思うかという質問に回答していました。
そして、実験が終わりました。その結果、参加者たちは一貫して、ただ座ってぼんやり考えごとをするこの時間を、予想以上に楽しめたことがわかりました。
関連するほかの一連の実験(部屋の照明を消して、視覚刺激をブロックするなどの変更が加えられた実験)でも、参加者たちは一貫して、ただぼんやり考えごとをする時間を予想以上に楽しむことができました。
この論文の中で、研究グループはこう述べています。
ただ考えるという行為は過小評価されているため、参加者たちが、待つだけのタスクを積極的に避け、別のタスク(ネットニュースのチェック)を好むことにもつながりました。
しかし、彼らの体験に統計的な有意差はありませんでした。
何もすることがない時間が少しでもあると、私たちはつい反射的にスマホに手を伸ばし、ニュースやソーシャルメディア、メッセージなどをチェックしてしまいがちです。
でも実は、少し時間を使ってぼんやり考えごとをするという行為は、私たちが思っている以上に楽しめるものです。
そしてそれは、何かについて深く考える機会を与えてくれます。
この論文の著者のひとりであるKou Murayama氏は、Healthlineのインタビューでこう話しています。
「現代のデジタル社会では、暇があればその時間を『つぶして』しまいがちですが、そんなときは考えごとにふけるのもいいものです」
Murayama氏によれば、過去のさまざまな研究から、ぼんやり考えごとをすることが、創造力や問題解決能力の向上に役立つこともわかっているそうです。
Source: American Psychological Association (APA), Healthline, PLOS ONE