敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。

今回お話を伺ったのは、評価額4兆円を突破したオーストラリアのスタートアップCanvaで日本のカントリーマネージャーをしている植山周志(うえやましゅうじ)さんです。

植山周志さんの仕事歴

BMX(自転車競技)で45回国内外の大会で優勝。2015年から2019年までは Dropbox Japan にてオンラインでのビジネスのグロースを担当。2019年からデザインツールを提供する Canvaで仕事を始めると同時に、日本からシドニーに移住。

-個人では、2020年からUdemyでオンライン講座を公開。マーケティング分野で人気講師として取り上げられる。2015年から『数字思考力×EXCELでマーケティングの成果を上げる本 シゴトのかけ算』『「あるある」で学ぶ忙しい人のためのExcel仕事術』を出版。いずれもAmazonのExcel、マーケティングのカテゴリーでベストセラーになる。ありえないおじさんを目指している。

「人間って、言い訳作るのがうまいんですよ(笑)」という植山さん。ではどうしたらコンフォートゾーンから飛び出し、新しい挑戦をし続けていけるのか? なぜ、小学生のお子さんがいても海外移住を決断できたのか?

今回は、50歳になっても果敢に挑戦を続ける植山さんの仕事術とコンフォートゾーンから踏み出す方法を伺いました。今回は前編です。

50歳手前でシドニー移住を決断。「短い人生、冒険したほうが楽しいじゃん」

Image: 植山周志
Image: 植山周志

――これまでの略歴について教えてください。

21歳のときにBMX(自転車競技)で日本一になってから、12年間で45回国内外の大会で優勝しました。

しかしBMXだけでは食べていけないので、大学卒業後、IT系商社(CTC)にエンジニアとして就職しました。

26歳でBMXのビデオを制作し、ケーブルTV局でBMXの番組を受け持つことになったことをきっかけに最初の会社を退職。

そこから数社転職をして、2012年からはDropboxでオンラインビジネスのグロースに関わるようになり、キャリアが加速してきました。

――DropboxからCanvaへはどのような経緯で転職したのでしょうか?

Dropboxで働いていたとき、Canvaのグロース担当者から「日本に行くから会わない?」と、突然連絡をもらいまして。同じグロースをしている者同士、情報交換しようという名目で会いました。

そしたら、日本のグロースで困っているから手伝ってほしいと。でも、転職の意思がないことを伝えたら、「シドニーに移住するってどう?」と提案されて、興味を持ちました。それなら話は違う、交渉を続けようって(笑)

最終的に、2019年8月に東京からシドニーに家族で移住しました。

――お子さんも2人いて、キャリアも順調な中、決断できた理由は?

決断に困ったときに参考にしているのは、岡本太郎の言葉。『自分の中に毒を持て』で、茨の道を行けって書いてあるわけですよ。それで、「よし、シドニーだ!」って。

それと、棺桶に入るときに後悔しない生き方をしたい。東京からシドニーに移住しなかったら、絶対後悔する。妻や子どもに「あのとき、シドニー行けばよかったよね」とか、10年後も言っているだろうなと思ったら、アラフィフですけど、冒険しちゃいました(笑)。

――突然の決定に、家族の反応はどうでしたか?

ありがたいことに、妻は賛成してくれました。子どもには、学校変わっちゃうの、友達どうするのと1時間号泣されましたが…。13歳、9歳、移住してから生まれた9カ月の子がいて、上の2人は現地の学校に通っています。

最初は英語を全く話せないから、昼休みにトイレにこもっていたそうです。自分がシドニー行きを決断したからだと思うと、胸が痛かったですね。

幸い、シドニーには海外から移住して英語を話せない子どもがたくさんいました。どの学校も英語ネイティブではないクラスがあるんですよ。2年半経ちましたが、今は現地の友人もできて英語で会話できるようになっています。インド、韓国、トルコ、モンゴルだったり、さまざまな国の子たちと仲良くなっています。

移住したことで英語が話せるようになっただけでなく、さまざまな国のバックグラウンドを持った人たちと接することが普通になったのが嬉しいです。

どこでも生きられる力を身につけるために、挑戦し続けてきた

趣味の目標であるプロクライマーを目指して特訓中
趣味の目標であるプロクライマーを目指して特訓中
Image: 植山周志

――家族がいると移住や転職に、一歩踏み出せない人もいます。

自分で言い訳を作ってると、僕は受け取ってしまいます。年齢を重ねていくと、多くの人ってチャレンジをしなくなると思うんですよね。守るものが増えてくるので。過去の成功を元に惰性で生きていこうとか、だんだんずるがしこくなって。

でも、実際に調べてみると、行動できるケースが多いはずです。人間って、言い訳作るのがうまいんですよ(笑)。

そんなときに、どう一歩踏み出すか? 「棺桶に入るとき、後悔したくないよね」って考えるんです。やって華々しく失敗して。すごい辛い思いをしてみる。それは、絶対に忘れられない経験になります。

――日常的にコンフォートゾーンから抜け出す方法はありますか?

筋肉や脳を鍛えるときと同じように、トレーニングをやり続ければいいんです。まずは、小さなことからチャレンジしましょう。たとえば、いつも頼んでいないメニューを食べちゃう。いつも腕立て10回のところを、11回にしちゃう。

少しずつでいいので、自分の「チャレンジ筋肉」を鍛えていくんです。

いきなり大きなチャレンジをする必要はありません。コンフォートゾーンの外に少しだけ飛び出して、その状態に慣れるようにしていきます。ワクワクドキドキする状態に慣れるっていうのかな。コンフォートゾーンを飛び出のは心地良くないですが、心地よくない状態にいることに慣れていくいことが大事だと思っています。

――ここ最近、効果を実感できた取り組みはありますか?

2021年の後半から8カ月ほどコーチを雇い、自分のゴール、マインドセットなどをアップデートしてきました。一番大きかったのは、コーチングでゴールを書き換えたことですね。

たとえば、僕はクライミングが大好きなのですが、今年はV9というグレードを目標に設定していました。でも、コーチはその目標に対して「本当にそれでいいんですか?」とプレッシャーをかけてくるわけです。「植山さんの趣味のゴールは、プロクライマーになることですよね、もっと上いきましょう」と言って、すごい大変なんですけど、V10やV11をゴールにしました。このように趣味だけでなく、仕事、人間関係、社会貢献、知性、ファイナンス、美容健康、家族のカテゴリーでゴールを作っていきました。

目標を高く設定するから、チャレンジをして成長します。そうすれば、自分の経験値が深まり、できることが広がり、サバイブする力が高まります。こうしていけば、仕事も人生も、どこに行っても必要とされる人材になれるはずです。

チームで新しいことに挑戦し続ける方法

常に新しい技に挑戦し続けてきたBMX時代
常に新しい技に挑戦し続けてきたBMX時代
Image: 植山周志

――チームの場合はどうでしょう。チームで新しいことに挑戦し続けるために、どのようにマネジメントしていますか?

自分自身がチャレンジするのは当然ですが、チームメンバーがチャレンジしやすい雰囲気、環境を作ることが大事だと思っています。

僕自身、イケイケでゆるいキャラなので、熱量とロジックでチームをマネージしてます。そして、メンバーから新しいアイデアが出たら、良し悪しかかわらず真面目に検討します。いいものは実行しますね。Canva Japanでnoteをはじめたのはその一例です。

――具体的にどのようにチームの雰囲気を作っていますか?

アイデアが出やすい環境を作るためには、どんなアホなアイデアでも言える雰囲気と文化をリーダーが作らないといけません。僕が率先して、アホなアイデアを言ったりします。

あとは、出てきたアイデアに関しては、どんなものでも大真面目に検討すること。データを見て、ボールを返していきます。Slackでやっていると、他のチームメンバーが入ってきてアイデアを膨らませてくれることもあります。小さなアイデアがディスカッションを通して、すごいアイデアになることもありますよ。

また、多くの人は失敗したくないから挑戦を控えめにします。なので、新しい施策を楽しい実験と捉えて楽しくやるようにしています。

そして、成功したら手柄は担当者に、失敗して責任を取らないといけないのなら、責任は僕が取ると言ってきました。そうすると、楽しく仕事ができる環境になっていきます。人間は楽しんでいるときに一番パフォーマンスが発揮されます。

もう1つ気をつけていることは、メンバー自信の得意な仕事、やりたい仕事を通して才能を発揮してもらうことです。自分の才能を発揮できていると、仕事が楽しいですよね。

ソニー出井さんから学んだこと

――数々の失敗もあると思いますが、失敗はどのように受け止めていますか?

チャレンジを実験と考えると、失敗は失敗ではなくデータになります。そして、そのデータを元に次の仮説が思いつき、次のチャレンジ・実験をすることで、成功確率が上がっていくのです。要するに、失敗はPDCAを回すためのCheckの部分なんです。

大事なことは失敗を避ける、失敗で落ち込むのではなく、失敗から学び次のアクションをすることです。これを続けていけばいつか成功して、すべての失敗を忘れるぐらいの喜びと成果を得られます。

さらに、人間1年でできることは過大評価するけど、10年でできることは過小評価する傾向があります。実験をしてデータを積み上げていけば、10年後自分では思っていなかった場所にいるはずです。

僕の56歳の親友は、ソニー社長などを歴任した故・出井伸之さんと昵懇の間柄で、出井さんから学んだことは「常にチャレンジし続けること」と話していました。僕もとても賛成です。常にチャレンジし続ける。そんな生き方をしていきたいですよね。

「ありえないおじさん」を目指しオンラインでMITを修了したCanva・植山周志の自己管理術【HOW I WORK】 | ライフハッカー・ジャパン

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HOW I WORKの記事一覧 | ライフハッカー・ジャパン

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Source: Canva, Amazon, note