有能なリーダーは、自分の専門知識は脇に置いて同僚たちから最高の能力を引き出します。
組織内のメンバーたちの「コレクティブ・ジーニアス」(集合天才)を高めるのです。そうすることで、一見乗り越えることが不可能に思えた困難をチームとして克服します。
一方で、能力のないリーダーは、その場しのぎで専門性を誇示します。
こうしたリーダーは自分の判断に満足しますが、同僚たちは疎外感を抱き、自分たちの声が無視され過小評価されていると感じます。その結果、このリーダーの組織は課題に対して萎縮してしまうのです。
困難な時期でもうまく機能する組織において有能なリーダーが取る方策を理解するために、『You're the Leader. Now What?: Leadership Lessons from Mayo Clinic』の著者であるRichard Winters博士にお話を伺いました。
救急医として、エグゼクティブコーチとして、そしてリーダーシップ開発の指導者として見てきたなかで、博士が助言を与えているリーダーたちの取る、最も効果的な方策は何かを尋ねました。
博士は、有能なリーダーが困難に直面した時に行なう(それほど有能でないリーダーが行なわない)具体的な4つのことを指摘してくれました。
1. 有能なリーダーは自分の決断を明確化する
能力のないリーダーは、盲点をそのままに反射的に判断します。問題を明確に理解する前に、選択肢や進むべき道に飛びついてしまうのです。
少数の有力な人物の声を誇張し、ほかを黙らせます。そして、決定のための最適なプロセスを見極めることができません。これでは、同僚たちはやる気を失い、混乱するばかりです。
有能なリーダーは、それぞれの決定の範囲に応じて最適な意思決定プロセスを用います。たとえば、課題が明確で予測可能な際は、ベストプラクティスや常識を活用したり、問題が複雑で専門家の助言が必要な際には、専門家にアドバイスを求めます。
そして、状況が込み入っていて感情が高ぶっている時には、同僚たちを団結させて現実を共有したうえで、進め方を決定するのです。
2. 有能なリーダーは指導者ではなくコーチである
能力のないリーダーは指導を行ないます。自分の経験に基づいて、同僚に助言します。その意図は立派なものかもしれませんが、その同僚の置かれた状況の違いを無視したアドバイスをしてしまいます。
逆に、「有能なリーダーはコーチングをする。同僚たちをそれぞれの経験を持った専門家としてとらえ、同僚の考え方に指摘やサポートを行ないます」とWinters博士。
さらに、有能なリーダーは自由形式の質問をするそうです。同僚たちが自分自身の独自の視点から効果的な行動を起こせるよう、ひとりひとり状況を理解する手助けをするのです。
3. 有能なリーダーは不安や悩みに光を当てる。
「能力のないリーダーは、同僚の不安や悩みを無視します。反発も無視し、なくなってほしいと考えます。しかし、なくなることはありません」とWinters博士は指摘。
反対に、有能なリーダーは、不安や悩みに光を当てます。反発を認め、それに正面から向き合います。そのうえで、同僚たちと協力し、どうすれば一緒に不安や悩みを和らげることができるかを考え、前進していくのです。
4. 有能なリーダーは組織の価値観を体現する
能力のないリーダーは、組織の価値観について語りますが、実際の行動はその逆です。チームワークを促進しながら、意思決定は1人で行ないます。
尊敬の念を口にしつつ、同僚たちには上から目線で話します。組織の管理責任を唱えながらも、問題を解決するためには手段を選びません。
「有能なリーダーは、組織の価値観を体現します。行動が価値観を反映します。状況が難しくても有言実行するのです」と、これまでの事例を振り返りながらWinters博士は語りました。
これは、私がコーチングしているリーダーたちにも欠けているのを目にしたことがある部分です。
効果的なリーダーシップは簡単なことではありません。それは、自分の専門性を脇に置いて、痛みを見出し、他者のベストを引き出すということです。
しかし、他者のベストを引き出すことができるリーダーは、組織のベストを引き出すことができます。Winters博士は、「このようなリーダーこそが、卓越した組織を高めるのです」と語りました。
Source: Amazon.co.jp, Harvard Business Review, RICHARD WINTERS MD
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