自動改札や自動販売機、カメラ、はさみなど、世の中の仕組みや道具の多くは、右利きの人が使いやすいようにつくられていると言っても過言ではありません。最近、よく話題に上がるのが「左利きの人の生きづらさ」。

しかし、「左利きは優れた能力を持つ選ばれし人」と語るのは、自身も左利きの脳内科医、加藤俊徳さんです。

8月13日は「左利きの日」。10人に一人といわれる左利きの脳がなぜすごいのか、加藤さんの著書1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)を紐解いてみましょう。

脳科学的に見ても、左利きの脳は「すごい」

「子どものときに右手を使うように直された」「箸やペンを使うとき、隣の人に肘がぶつからないように、左の端っこが定位置だった」と肩身の狭い思いをしてきた左利きさんも多いでしょう。もちろん、加藤さんもその1人。

何をするにも周りから「この子、左利き」と言われ、幼少期から自分は何かが違うという疎外感があったのだとか。

私が無意識に環境を体感できたり、かなり距離が離れていても相手の様子を感じ取ったりできるのは、この頃の記憶と左利きによる習慣の影響を受けていると考えています。

(『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』4ページ)

しかし、左利きに備わるのは、そういった周りを見る目や洞察力だけではありません。

左利きの人は「天才肌」「直感力に優れている」というイメージがありますが、自身が脳の専門医になり、脳科学的に見てみても、「左利きだけが持つ個性がある」と断言できるそうです。

「直感力」が優れているのは、右脳が発達するから

「左利きの脳はすごい」と加藤さんが語る理由を、本書から2つご紹介します。

1. 左利きの脳は「左右差が少ない」

生まれたときから10人に一人というマイノリティの左利きには、「右利きと同じように行動する」という課題が与えられています。

右手がうまく使えないのに、右利き用の道具を使わなければならなかったり、「どうしたらうまくいくだろう」と考える場面が多いなど、快適に生きていくために「天才」になるような脳の使い方をせざるを得ないのです。

(『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』29ページ)

左利きの脳は、右利きとは大きく異なる使われ方をし、独自の発達を遂げていると言えるのかもしれません。

2. 左利きは「右脳」が発達している

右脳は左半身の筋肉を、左脳は右半身の筋肉をコントロールしています。つまり、左手をよく使う人は右脳が発達するということになります。

左脳は言語情報をつかさどり、論理的、分析的な思考をする機能を持つのに対し、右脳はモノの形や色、音などの違いを認識し、五感にも密接に関わっています。

つまり、右脳は、視覚や五感をフルに活用した、言語以外のあらゆる情報を無意識のうちに蓄積している巨大なデータベースです。

(『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』54ページ)

そのため、左手を使うことで常に右脳に刺激を送り続けている左利きは、膨大なデータからベストな答えを導き出すことに優れているため、「天才肌」「直感力に優れている」と言われるのだそうです。

話すことや言葉にまとめることは、少し苦手…

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しかし、左利きには苦手なこともあります。それは「言語系」の処理。おもに、右脳は「非言語系」、左脳は「言語系」を担当しています。

利き手で文章を書くとした場合、左脳が発達している右利きの人は、右手で字を書くという左脳の運動系の領域と、言葉を生み出す左脳の伝達系領域を使います。つまり、右利きは左脳の運動系と伝達系のネットワークを効率的に使って作業できるということ。

一方、多くの左利きが右利きに比べて、左手を右脳で動かしながら、左脳で言語処理をします。左脳と右脳の両方のネットワークを同時に使わないと、文章を綴れないことになります。

(『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』41ページ)

つまり、左脳のネットワークだけで言葉を操れる右利きに比べて、左利きは考えを言葉に置き換えるのに左脳と右脳の両方を使うため、言いたいことを発するまでのルートが遠回りになってしまうのです。

左利き、右利き、お互いの長所を真似してみる

しかし、がっかりしないでください。左利きが苦手とする「言語化」を克服する方法も紹介しておきましょう。

左利きの多くは、情報を右脳に「イメージ保存」することは得意なので、保存したイメージを右脳から左脳に移して言語化すると、直感をカタチとして残すことができるのだそうです。

加藤さんが取り入れた方法の1つが「ひらめきをメモすること」。メモ帳でもスマホのメモアプリでもOK。「山に登りたい」「お母さんに電話する」といった、日常の「あっ」というひらめきを文字で残します。もっと短く、単語だけでも構いません。

加藤さんも、以前は論文を書いたり、研究結果を発表したりするのが大の苦手だったそうです。そこで、何かをひらめいたら必ず言語化するという左脳を鍛える努力を重ね、今では100冊もの書籍を出版するまでに。

「左利きは、日常生活の中であえて右利きの話し方を真似したり観察したりしてみましょう。そうすることで、言語化のトレーニングを積むことができます」と加藤さん。

もちろん、右利きも左手を使うように意識すれば、能力向上も見込めます。右利き、左利きの良いところをお互いに取り入れて、左脳と右脳のレベルアップを図りたいものです。

左利きは、マイノリティではなく、10人に一人の選ばれし人」と加藤さん。本書には、左利きが右手を使うようにすることのメリットや、左利きに一目置きたくなるような情報がたくさん紹介されています。

社内や取引先に左利きの人を見つけたとき、「お、選ばれし左利きなんですね?」と話しかけて、本書で得た情報を披露してみてはいかがでしょう。自分の脳がすごいことを聞いて、喜ばない左利きさんはいないはずですから。

Source: ダイヤモンド社