『チームづくりの教科書』(高野俊一 著、アルファポリス)は、「自分のチームを強くしたい」を考えるリーダーに向け、チームづくりの方法を体系的に、わかりやすく書いた書籍だそう。
根底にあるのは、「チームをうまくつくれれば、部下も会社も自分自身も、関わる人全てを圧倒的にラクにすることができる」という思いだといいます。
ところで、チームとはどのようなものでしょうか? 「組織開発コンサルタント」として、チームを組織のなかでうまく稼働させていくことに尽力している著者は、この問いに対して次のように答えています。
チームとは、共通の目標に向かう集団です。
単なる「仲良しクラブ」ではなく、目標に燃え、役割を分け合い、弱みを補いながら、目標達成に全力を尽くす。
達成できればみんなで喜び、未達の場合はみんなでくやしがり、そしてどうしたらもっとよくなるかを話し合う共同体。
それが、チームです。(「はじめに」より)
ところが多くのビジネスの現場では、そんなチームづくりがうまくいっていないのも事実。誰もが目の前のタスクやノルマをこなすことに必死になり、仲間同士協力して働くことの意味を見失っているというのです。
それどころか、上司は部下の能力の低さを叱り、部下は上司の無能さに失望し、多くの社員が上司や他部署、会社に不満を抱き、自社商品の欠点にばかり目を向けてしまっているーー。
しかし、それではよくなるはずもなく、だからこそ大本にあるチームという枠組みに目を向ける必要があるというのです。
きょうは、そのような主張を軸とした本書の第1章「『目標』を掲げる」内の「なぜチームづくりは失敗するのか」に焦点を当ててみたいと思います。
目標アレルギーが蔓延している
いまの日本において、多くの組織でチームづくりがうまくいっていないのは、目標が機能していないからだといいます。
先ほどご紹介したように、著者はチームを「共通の目標に向かう集団」と定義していますが、実際にはひとりひとりが目標に向かっていないということ。
いま、日本人の多くは「目標アレルギー」にかかっています。なお、目標アレルギーという言葉は私の造語です。
本来、目標とはポジティブなものであるにもかかわらず、「やらされ感」「押しつけられる」「仕事が増える」といったネガティブなイメージがつきまとい、そのため目標を掲げられると、心も体も拒絶反応を起こしてしまうのです。(47ページより)
リーダーであるなら、それでも大丈夫かもしれません。しかし、部下の場合はどうでしょう? 上司が部下に目標を持ってもらおうと働きかけても、「それって私がやらないといけませんか?」「それって絶対にやらないとダメですか?」というようにやんわり避けられてしまうかもしれません。
それどころか、「やりたくありません」「仕事を増やさないでください」とはっきり拒絶されたり、「これ以上、会社に使われるのは真っ平です」などと逆ギレされたりしたとしたら、それは間違いなく目標アレルギーの影響だというのです。(26ページより)
目標をアップデートしよう
したがって、目標アレルギーが蔓延しているいまだからこそ、目標をアップデートすべきだと著者はいうのです。
なお、時代の変化とともに目標のあり方も変わってきました。そのバージョンを、本書では「目標1.0」「目標2.0」「目標3.0」と呼んでいます。
・目標1.0(他人目標)…他人から与えられた目標
・目標2.0(利己目標)…自分の利己的な目標
・目標3.0(共感目標)…共感できる目標
(48ページより)
それぞれを確認して見ましょう。まず、世の中のほとんどの目標はバージョン1.0の他人目標。
「会社から『いくら売れ』といわれる」「部門の予算が割り当てられて売り上げ目標が与えられる」「上司から『これをやって』と頼まれる」などがそれにあたるようです。
自分からやりたいと申し出たわけでもなく、ただ与えられた目標をこなす。そんなとき、多くの場合は「やらされ感」がついてまわるもの。給料をもらうために、やりたくもない仕事に自分の時間を費やしていると考えてしまうわけです。
次に、「他人目標では部下のやる気が出ないので、ご褒美で釣ろう」というのがバージョン2.0。
その目標を達成したいかどうかはさておき、達成すればお金や休みなどのご褒美をあげるというような約束をするわけです。するとその部下は、ご褒美のためにがんばることになるでしょう。
「『達成すれば給料が上がる』といわれる」「『あとで休みをとっていいので無理してほしい』とお願いされる」「『自分のためになるから挑戦してほしい』と高いノルマを提示される」など、目標達成のための動機づけとして、部下の利己的な欲求に働きかけるのです。
そして目標3.0の共感目標とは、部下が上司の掲げる目標に共感し、それを達成したいと心から思っている状態。
「わくわくする未来を示され、『協力したい』と思える」「『この仕事で世界を変えよう』という目標に魅せられ、自然と応援する」というような状態です。
本来であれば目標とは、共感目標であるべき。しかし現実的には、それを提示できている組織があまりに少ないのが現状であると著者は指摘しています。
その結果、他人目標や利己目標で部下をコントロールしているため、それなりの成果を上げていてもどんよりとした雰囲気が漂ってしまう。そんな、やらされ感満載の組織が多いのだと。
リーダーになったからには、共感目標を掲げなくてはいけません。この共感目標を掲げることができていないことが、チームづくりがうまくいっていない根本の原因です。(50〜51ページより)
部下の目標を共感させられず、目標アレルギーを発症させてしまい、関係性が壊れ、バラバラの方向を向いて仕事をすることになったとしても、組織は動いていくものです。
しかし、それではいずれ限界が訪れるはず。まずは、そのことを意識しておく必要がありそうです。(48ページより)
仕事の問題が起こったときには、「個」に責任を押しつけるのではなく、「チームづくり」に着手するべき。
いまのビジネスの現場に求められるべきはそんな姿勢だという著者の考え方を取り入れてみれば、チームの重要性を実感できるかもしれません。
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Source: アルファポリス