人付き合いを頑張りすぎたあまり、これ以上はもう無理だと思ってしまう――こうした状態を「ソーシャル・バーンアウト」と言います。

このソーシャル・バーンアウトは、ストレスや極度の疲労、イライラを引き起こします。

「ソーシャル・ディスタンス」や「隔離」といった言葉が日常生活で当たり前に使われるようになり、その原因であるコロナ禍は、私たちの生活の多くの側面を変えてしまいました。もちろん、社会生活も例外ではありません。

一方で、規制が緩和され始めると、今度は「失われた時を取り戻せ」と言わんばかりに、いろんな社会活動を予定に無理やり詰め込む人も出てきました。それがソーシャル・バーンアウトにつながる可能性があります

自分の身にソーシャル・バーンアウトが起こりつつあることは、どうやって見極めればいいのでしょうか? また、どうすればソーシャル・バーンアウトに対処できるのでしょうか?

ソーシャル・バーンアウトの見極め方

私たちが暮らす社会では、互いに交流することに重きが置かれています。

そのため、自分がバーンアウトしつつある兆候に気づいたり、人との交流がその原因であると認識したりすることが難しいケースがあります。

では、ソーシャル・バーンアウトが起きていることを示す、一般的な兆候をいくつか紹介しましょう。

ソーシャル・バーンアウトの兆候一覧

  • 集中できない:情報を処理して集中するのが困難になるほど、脳が疲れ果てている。
  • 過度の疲労感がある:何時間寝ても、精神が消耗し切っている感覚が抜けない。
  • 不安感がある:自分の「パーソナルスペース」から外へ出なければ、と思うと不安になる。
  • 気分が落ち込んでいる:日課をこなしていると、急に気分が変わることがある。
  • 怒りっぽくなっている:普段より忍耐力がなく、人と接する時に無愛想になっている気がする。

ソーシャル・バーンアウトへの対処法3つ

置かれている状況は人によって異なりますが、疲労を避けるのに役立つ一般的な方法はいくつかあります。

多少の練習が必要ですが、次のアドバイスを日常生活で実践すれば、疲労の回避に役立つかもしれません。

1. 主な原因を見つける

疲労の元になっている状況を特定できれば、出だしは好調。ソーシャル・バーンアウトの主な原因には、たとえばこのようなものがあります。

  • 大きな行事に出席する。
  • 仕事の一環として、人と交流する必要がある。
  • 「たくさんの人と話さなければ」と義務感を抱いている。

2. 境界線を引き、優先順位を決める

社交行事をスケジュールに詰め込みすぎた場合、疲れを感じるのは当然のこと。

臨床ソーシャルワーカーと認知行動セラピストの資格を持ち、NYC Cognitive Therapyでディレクターを務めるNoah Clyman氏によれば、ここで重要なのは「自己主張すること」だそうです。

どこまで率直に自分の意見を言えるのか、ほかの人より自分のニーズを優先できるのかは、人によって異なります。

でも、自己主張することが心身の健康の維持に必要な場合はあります。そうすることで、その状況を別の角度から捉えやすくなります。

たとえば、本当に緊急の場合でもなければ、メールの返事を1時間くらい先延ばししても問題ないでしょう。

それでもひっきりなしに届く通知がストレスになっているのであれば、特定のアラートややりとりをミュートにしてはどうでしょうか?

これは、実際の社交的な場面にも当てはまります。そこでのあなたの強い味方は、「ノー」という言葉です。

まずは、予定に入っているイベントをすべてリストアップします。

次に、これらのイベントを、「行く必要あり」「行けたら行ったほうがいい」「行かなくてもいい」の3つに分けます。

その目的は、出席しなければならないイベントをきちんと把握し、行かなくてもいいものについては出席を見送れるようにすることです。同時に、「余力があれば出席したいと思うイベント」に行けるようにしておくことです。

また、各イベントに参加する場合でも、どれだけの時間そこに滞在するのか、タイムリミットを決めておくことも役に立ちます。

出席はするけれども、予め決めておいた時間が過ぎたら、ちゃんと自己主張をしたうえで、席を外すといいでしょう

さらにClyman氏は、次のような指摘もしています。

話題がコロナ禍などのニュースに終始して困った時も、「その手の話題は避けるようにしているので…」などとはっきりと断わったうえで、別の話題に切り替えるといいでしょう

3. 自分だけの時間をつくる「マイクロブレイク」をとる

大切なのは、1人になれる貴重な時間をつくって、心と体を充電すること。自分のためだけの時間を、毎日少なくとも10分間は確保しましょう。

また、人と接しながらも、頃合いを見計らって、短い「マイクロブレイク」をとっても構いません。

たとえば、1人でトイレに行って軽く深呼吸したり、数分間だけ外に散歩に出たり、といったことです。

ソーシャル・バーンアウトを治す3つの改善策

それでも、ソーシャル・バーンアウトは完全には防げません。

人付き合いに疲れ果ててしまったと感じる時は、以下にご紹介する方法を試せば、その状態を改善できるかもしれません。

1. セルフケアを実践する

セルフケアの定義は人によってまちまち。ソファに寝そべってお気に入りの番組を見るのが大好きな人もいれば、ゴロゴロするよりも運動するほうが好きな人もいます。

本を読む、好きな音楽を聴く、お風呂に入る、おいしい料理をつくる、など何でも構いません。

あなたの心と体の充電を促してくれる活動を書き出して、それを実践しましょう。

2. 息抜きの時間をつくる

人と対面で接するのも疲れますが、SNSも疲れます。そんな時はスマホを置いて、自分1人になれる時間を少しつくりましょう。

3. 瞑想してみる

Clyman氏は、次のように説明しています。

ストレスの悪影響を跳ね返せる一番効果的なツールに、瞑想があります。

事実、数十年前から、数々の研究で、瞑想が人の体と心と情緒のさまざまな側面に優れた効果をもたらすことが示されてきました。

そして、瞑想には「高価な道具」も、正式な訓練も必要ないと指摘しています。

今すぐ瞑想をはじめたい人のために、こちらの記事で無料アプリをリストアップしているので、ご確認ください。

コロナ禍は、私たちの社会生活にさまざまな影響をもたらしました。そして結局のところ、それに立ち迎える確実な方法はありません。

でも、現実的な目標を設定し、しっかりと自己主張し、自分のための時間を確保することで、ソーシャル・バーンアウトを遠ざけることができます。

自分に合った対処法をつくりあげることこそが、さまざまな症状に対処するうえで、最も実践的で、最も持続可能な方法なのです。

今回の記事でご紹介したヒントを、どうぞ遠慮せず自分に一番合う形に改良してみてください。

Clyman氏の言葉を借りて締めくくると、「これは短距離走ではなく、マラソンなのです」。

Source: MDPI, NYC Cognitive Therapy, The New York Times