SNSをちょっとのぞいてみれば、「自分はADHD(注意欠陥・多動性障害)に違いない」と思わせるような投稿を、きっと見かけるはずです。過去記事でもお話したように、ありとあらゆる行動を病的なものとみなす傾向には危ういものがあります。
ぼんやりしているだとか、折り返しの電話をかけ忘れるだとか、車の中がつねに散らかり放題だとかいう状態がADHDではないのは、言うまでもないことです。
私がADHDでないことは、ほぼ間違いありません。けれども、ADHDと診断された人たちが使っている時間管理術や対処メカニズムの多くは、自分にも役立つと思っています。
では、1日を有効活用して仕事をこなせるヒントを紹介します。たとえADHDと診断されていない場合でも、一考の価値はあるでしょう。
ADHDの人向けの生産性向上のヒント
医学サイト「HelpGuide」によると、大人のADHDは往々にして、衝動をうまく抑えられず、複数のタスクをあれこれ切り替えたり、ついつい無駄なことに固執したりします。
以下では、目の前のタスクを首尾よくこなして、集中が続かない状況を改善できる方法をいくつか紹介しましょう。
1. 最初に取りかかるタスクを決める:
片づけるべきタスクに集中するためには、タスクの優先順位を決めることが第一歩です。
ToDoリストに並ぶタスクを見て、どれが重要なのか、どれが急を要するのかを考えて書き出しましょう。その際に、タスクを比較することで優先順位が決めやすくなる「意思決定マトリクス」を使ってみるのも一案です。
2. 大きなタスクを小分けにする:
米家庭医学界(AAFP)の説明によれば、整理整頓とは、単に物理的な空間だけのものではありません。大きなプロジェクトを細かいタスクに小分けすることも整理整頓のひとつです。
プロジェクトをひとつの大きなタスクとみなさず、多くのステップから構成されるものだと考えましょう。好きなだけ細かく分けてかまいません。
たとえば、「メールを送る」タスクは、「メールアカウントにログインする、下書きのページを開く、件名を書く……」というように、完了するまで細かく分けていってもいいのです。
3. リストアップする:
つまり、処理すべきタスクをスケジュール帳に書き込んだり、お好みのノートアプリにまとめたり、付箋で色分けしたりするということです。自分にぴったりのシステムであれば、どのようなかたちでもかまいません。
リストアップする理由のひとつは、忘れないようにすることです。けれども、それよりも深い理由もあります。文字で書き出すと、抽象的なタスクがより具体化され、処理可能だと思えるようになる、という面もあるのです。
4. 小刻みに積み重ねていく:
生産性向上に向けた一連の奮闘のなかで、最も大変なところが「最初の一歩を踏み出すこと」です。
時間管理術として有名なポモドーロテクニックを取り入れるなら、こちらの無料アプリがおすすめです。また、休憩を取り入れて、やる気アップにつなげる「(10+2)*5メソッド」もも、ぜひ試してみてください。
5. 休憩時に運動する:
ADHDの人ならおそらく、集中力を高めたり、注意力が散漫にならないようにしたりするには運動が効果的だ、と言われたことがあるでしょう。休憩を取って体を動かすと、余分なエネルギーが発散されます。
目の前のタスクになかなか集中できない理由のひとつとして、「エネルギーがあり余っていること」も考えられるのです。
6. 関係のない思考を書き出す:
健康情報サイト「Healthline」の説明にあるように、ADHDの人はときどき、ふと気がつくと「思考が奔流する渦の中」にいることがあります。さまざまな考えが入り乱れる大きな思考の嵐は、創造性の発揮には大いに役に立つかもしれませんが、上司とのミーティング中に発生した場合には悲劇です。
こうした思考の嵐については、時間とエネルギーを注ぎ込んで抑え込もうとせず、無理にでも休憩を取って、入り乱れる思考をさっさと書き留めてしまいましょう。
大事なタスクに集中しているときに生じた思考を書き留めたメモは、1日の最後に、時間を決めて見直してもいいでしょう。
7. 生産性向上用のプレイリストをつくる
仕事に集中するための音楽によって、楽しみながら集中できる状況を整えるのはどうでしょうか。
気休めとも言えますが、私の知るクリエイティブ職の人たちの多くは、効果的だと太鼓判を押しています。
ADHDを疑うなら、すぐに専門家の助けをあおごう
ADHDに悩まされているけれど、診断はまだだという人は、すぐにでもきちんと診断してもらうことが重要です。専門家の助けを借りれば、本格的な治療を受ければ改善できるかどうかが判断しやすくなります。
だからといって、ADHDと診断が下されるのをただ待つ必要はありません。さまざまな対処法を試してみて、過度に活発な自分の頭に「立ち向かう」のではなく、もっとうまく「つき合っていく」方法を見つけてくださいね。
Source: HelpGuide, AAFP, Healthline