仕事や職場などの対人関係で悩むことは、よくあること。
でも、何かあるたびに、へこんだり怒ったりでは、いつかメンタルがぽっきりと折れてしまいかねません。
悩みごとにいたずらにとらわれず、心穏やかな毎日を送る秘訣の1つが「禅」です。
といっても、今回紹介するのは「ゆる~い禅」。
1560年創立の古刹、建功寺の住職である枡野俊明さんが、多忙なビジネスパーソン向けにアレンジした禅のエッセンスです。
これは、著書『ゆる~い禅 ― 一日一禅! 今日からはじめる』(ワニブックス)にまとめられており、禅の知識・経験がなくても、その日からはじめられるメソッドが満載。
いくつかを紹介してみましょう。
通勤電車内のストレス解消に「いす座禅」と「立禅」
都市圏に通勤しているのなら、混雑した電車がストレスの種になっている人は多いはず。
この無用のストレスを緩和し、むしろ心を整えるひと時に変えるのが「いす座禅」と「立禅」です。
やり方は以下のとおり。
いす座禅のやり方・手順

1. 座席には背中を背もたれから離して浅く座り、ひざが直角になるようにする。
2. 背筋はまっすぐ伸ばし、下腹を前に突き出す感じで腰を立てる。
3. 手は太ももの上に置き、鼻からゆっくり息を吐き、吐き切る。
4. 吸うことは意識せず、自然に入ってくる息を下腹まで落とす。
5. この呼吸を5~10分続ける。
いす座禅のポイント
- 目線は斜め下、目は半分閉じる。
- 前かがみになったり、あごを出したりしない。
- 丹田(おへその下約7.5cm)を意識する。
- 足の裏はしっかり床につける。
立禅のやり方・手順

1. 背筋を伸ばし、腹を立てる。自分ではその姿勢をとっているつもりでも、多くの場合、前かがみになりがちなので、少し“そっくり返る”くらいの感覚で。
2. 呼吸はいす座禅とまったく同じ。
3. 視界に移り動く窓外の景色が入ると、刺激を受けて呼吸に集中できないため、視線をはずす。
立禅のポイント
・呼吸はゆっくり、深く。
・乗降がなく姿勢が保てる走行中に行なう。
・頭に浮かんだ思いはとどめず、放っておく。
・電車の揺れにまかせ、身体に力を入れない。
どちらも5~10分程度で十分とのことで、毎日電車に乗る人には習慣化しやすい手法です。
面倒な仕事を最速で終わらせる方法
「ゆる~い禅」では、後回しにしたくなる面倒な仕事ほど、早いうちに着手するのが鉄則です。
枡野さんは、「身体も頭もフレッシュで気力もある午前中に、少々時間がかかっても、なんとしてでもやってしまえば、達成感と充実感が持てますし、その余勢を駆って、次の仕事もテキパキとこなすことができるはず」と述べています。
いわば「先憂後楽」。
結局、やらねばならない仕事なら、先に片付けておくのが吉というわけ。
そして、そんな仕事をスムーズにこなすためのアドバイスが、以下の5か条です。
1. 70点を目指す
100点を目指すと、つい考えすぎて、なかなか動き出せません。合格ラインの70点で「よし」として、すぐはじめましょう。
2. 直感にゆだねてみる
手順、段取りにこだわりすぎると前に進めません。その時のひらめき、直感にしたがって1歩踏み出すことが大切です。
3. やる気を出しすぎない
やる気は必要ですが、出しすぎるとしばらくして反動で一気にしぼんでしまいます。少し抑え気味で持続させましょう。
4. メモしておく
今進めている仕事でなくても、思いついた時にポイントや展開をメモしておくと、着手してからの流れがスムーズに。
5. 疲れたらすぐ休憩
「疲れていても頑張る」のは無理です。能力、体力、気力全開で頑張るための源泉は休憩です。休む勇気を持ちましょう。
21時以降は「情報デトックス」する
仕事から帰ったあとも、スマホやPCをながめて情報漬けになっていませんか。
禅的な視点では、夜は「静かに心地よく過ごすべき時間」。
絶えず画面から流れ込んでくる情報は、それを妨げる「元凶」であると、枡野さんは言います。そのためにすすめられているのが、21時以降は情報機器をオフにして情報を断つ「情報デトックス」。
最初は違和感があって、スマホをオンにする誘惑にかられるかもしれませんが、慣れてくると「別次元の充実感」を味わえるそうです。
明日への活力を蓄積するためにも、「情報デトックス」を習慣づけ、代わりに次のようなことをしてみてはいかがでしょうか。
・部屋の隅々を掃除する
普段の掃除で目こぼししているかもしれない部屋の隅々をチェックし、集中してそこをきれいにする。
・友だちに電話する
親しい声、懐かしい声は心をほっと温めてくれます。他愛ない話でも、近況報告でも、長くても、短くても、聞きたい声をただ聞く。それがいいのです。
・ストレッチやヨガで身体を動かす
軽く身体を動かすと、仕事でこわばっていた筋肉もほぐれて、リラックス&リフレッシュできます。そのあと、ゆっくりお風呂に入れば、安眠の準備は万端です。
・こだわりの料理をつくる
簡単な料理をこだわってつくってみる。たとえば、カレーのルーを手づくりする。トマトを潰してミートソースをつくる。楽しさもおいしさも倍増です。
「行住坐臥すべて禅」という言葉がありますが、本書には上で挙げたような、朝起きてから夜寝るまでの、メンタルを整える禅的な方法が網羅されています。
一読したら、できるところからはじめてみてはいかがでしょうか。
――2019年5月7日の記事を再編集のうえ、再掲しています。
執筆:鈴木拓也
Source: Amazon