特集ズルいマネジメント」で、それぞれのマネジメント術やリーダーシップの在り方を紹介してくれた賢者たち。どの記事も反響が大きく、そのことからも皆さんの関心の高さがうかがえました。

登場してくれた3人に共通したのは、自分なりのマネジメント術を探るとき、いつも傍に「本」があったということ。

3人がどんな本を読み、その本がどのように自身のマネジメント術やリーダー考に影響を与えたのかは、ぜひ参考にしたいところです。さっそくご紹介しましょう。

合理的かつ客観的に、事業を見つめるには

トップバッターは、3回にわたって、特集のスタートを飾ってくれた株式会社経営共創基盤の共同経営者、木村尚敬さんが選ぶ2冊(記事:前編中編後編)。

まず挙げていただいたのは、山ほどある“経営分析、財務分析”の本とは一線を画し、“数字のウラ側を読み解く技術”を身につけられるという『IGPI流 経営分析のリアルノウハウ』(PHP研究所)。

ダークサイド・スキルを使いこなすための大前提となるのは、合理的かつ客観的に事業を見られるかどうか。ファクトとロジックを自分の中でしっかり組み立てられるようでなければ、ダークサイド・スキルも何もありません。

そのための本として、本書は大きな助けになると思います。MBAでの必修科目である戦略論や経済論、管理会計等を複眼的に織り込み、事業をいかにリアルな視点で分析し、経済合理性にのっとって事業をどう突き詰めるのかが理解できると思います(木村さん)

そして2冊目は、ルネサンス期イタリアの政治的混乱を生きたニッコロ・マキアヴェッリによる『君主論』(岩波文庫)。君主たるものが権力をいかに維持・伸長すべきかを説いた、数百年を得た今もなお、学び多き一冊です。

イタリア・ルネサンス期の政治思想家・外交官にして「近代政治学の祖」、マキャベリの『君主論』は「リーダーとはかくあるべし」というエッセンスが詰まった若手リーダーにとってのバイブルになりうる本だと思っています。

リーダーとしてやってはいけない「べからず集」としても活用できるので、年に1回読み返してほしいですね。『シン・君主論 202X年、リーダーのための教科書』(日経BP)という本で、そのエッセンスを現代ビジネスに当てはめて解説しているので、よければこちらもどうぞ。

「めっちゃ頑張ったけど結果が出ない」ではダメ

株式会社キャスター取締役CROの石倉秀明さん(記事:前編後編)。リクルート、リブセンス、DeNAでプレーヤーとして成果を出し、マネジメントのキャリアを積んできました。

自身の「邪魔をしない」「何もしない」というマネジメント方針や、オフィスに皆が集まって仕事をしている場合と、リモートで働く場合を比較して「競技が変わる、つまり働き方のルールが変わる。サッカーとフットサルくらいの違いがある」といった言葉に、ハッとした人は多いのではないでしょうか。

そんな石倉さんが選んだのは、以下の2冊。1冊目は「自分の問題と他人の問題をちゃんと分けて考えること」の大切さを学んだ、という『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)。以前こちらの記事でも紹介してくれました。

人間は人の問題というか、人の変えられない部分を変えようとすることにはすごく一生懸命になるのに、自分の問題に対処することは疎かにしがちですよね。

また、トラウマの存在を否定したうえで「人間関係の悩みはすべて対人関係の悩みである」という指摘もなされていますが、こうしたアドラーの考え方を知ることで、心が楽になるビジネスパーソンは多いと思います。

2冊目は、『イシューからはじめよ──知的生産の「シンプルな本質」』(英治出版)。2010年に出版されてから、AI×データ時代の必携書として読まれつづけ、発行部数は45万部を超えています。

経営者は、社員の労働時間(労働力)と、お金という貴重なリソースを預かる立場です。

それをどこに、どのような配分で、どう振り分ければ一番成果が出るかを考えることが大きなポイント。

「今の戦力でなんとかする」ためには、正しい問題設定をすることがすごく大事だと思っています。

正しいことに取り組まないと、「めっちゃ頑張ったけど結果が出ない」ことになる。

結果を出すためには、どのポイントで何をすればいいかがあるはず。これが正しく設定できないと、どれだけみんながめっちゃ働いても駄目なんですよ。

イシュー、つまり解くべき問題を設定できることが重要なので、この本はそうした意味でとても参考になると思います。

本で得た知識を仕事で実践し、振り返って改善する

3人目は、プロファシリテーターで株式会社園部牧場代表の園部浩司さん(記事:前編後編)。

「もし1冊だったら、迷わず僕の本ですね(笑)」と即答したのは、自身の著書『ゼロから学べる! ファシリテーション超技術』(かんき出版)。

ファシリテーションとは、簡単に言えば「会議などに参加する人たちの意見を引き出し、まとめること」。1on1やグループミーティングなどの会議はもちろん、ちょっとした立ち話にも活用できるスキルです。

園部さんいわく、マネージャーとして身につけるスキルは「企画力」「プレゼンテーション力」「プロジェクトマネジメント力」「ファシリテーション力」「ロジカルシンキング力」「人格力」「コミュニケーション力」の7つとのこと。ファシリテーションについては、ぜひ園部さんの本を手にとってみたいものです。

2冊目は、『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』(ダイヤモンド社)。アドラーの本は何冊も読んだという園部さんが、悩みながら絞った一冊です。

後編で「ロールモデルがいないと嘆く人は、人の悪いところしか見えていない。学ぶべきところはたくさんある」と話した園部さんですが、これもアドラーの教えだとか。

本を読んで大切だと思ったところにはマーカーを引き、エクセルにまとめて何度も読み返していたという園部さん。週に2冊、2年間続ければ200冊。知識を入れて、仕事という実践の場でアウトプットし、振り返って改善する…。そうしてていくうちに、自分の「型」のようなものができあがっていくそうです。ぜひ試してみたいですね。

いかがでしたか? 「どれか」ではなく、「どれも」読んでみたくなる本ばかり。「これは自分のためになりそう」というのは読んでから考えることにして、マネジメント力を身につけたいと考えているなら、まずは片っ端から読んでみるのもいいかもしれません。