ナイーブさんを思考のクセから救う本』(清水栄司 著、ワニブックス)でいう「ナイーブさん」とは、「とても繊細な人」のこと。マスメディアなどで取り上げられることが増えている心理学の用語「HSP(Highly Sensitive Person)」を念頭に置き、精神医学の観点からの変更を加えたものであるようです。

HSPを直訳すれば、「高度に感じやすい人=とても敏感な人」ということになるでしょう。それは、最近の心理学の研究で提唱されている「人間の個性」。精神科医である著者が本書を書こうと思ったのは、ナイーブさんについて精神医学的に解説し、心と体の健康に役立ててもらいたいと思ったからなのだそうです。

生きづらさを感じているナイーブさんには、ある共通点があります。それは、ネガティブ(否定的)な考え方をするクセがあることです。

そして、自分の考え方のクセに気づいていないケースがとても多いのです。その理由は、「ネガティブな考え方のクセ」の中には、自分に合わない環境であっても、そこで耐え続けなければいけないと考えるクセもあるからです。

こうなると、考えが悪循環に陥ってしまいますから、生きづらいと感じてしまうことになるのです。(「はじめに」より)

なにかを見たり聞いたりしたとき、それをどう理解するかに関しては人それぞれの個性が出るもの。その受け取り方の個性が通常レベルのバランスであれば問題はないでしょうが、ネガティブなクセが強すぎると心が傷つきやすくなり、生きづらさを感じてしまうことになるわけです。

そこで本書では、「よい考え方のクセ」を身につけることを目指しているのです。きょうはそのなかから第4章「繊細な人が生きやすくなる、認知行動の新習慣」に焦点を当ててみたいと思います。ここで紹介されているのは、「思考のクセ(=認知の歪み)」をなおすために効果的だという「認知行動療法」です。

逆に考える

考え方のバランスをとることで人は変われるのだそうです。そのために重要なのは、自分以外の視点に立って考えてみること。そこで著者は、「本当のことはわからなくても、一種の訓練だと思って、誰か別の人の立場に立って考えてみる」ことをすすめています。

ナイーブな人は、過去のトラウマ的な出来事から、ひとつの見方しかできなくなる傾向にあるもの。そのため、別の視点から考えてみると、世界観が変わることもあるわけです。

別の考え方をする技術のひとつが、「逆にする」です。文法的に単純に逆にするのです。

例えば、「この人は自分を嫌ってる」と思ってしまった場合は、「この人は自分を嫌っていない」と、肯定文を否定文にすればいいのです。(127ページより)

「自分はダメだ」という考えは、「自分はダメじゃない」と正反対の考えに変えることができるということですから、これは非常に簡単なアイデア。しかも、なんにでも応用することが可能だといいます。たしかに、慣れてしまえば有効な手段かもしれません。(126ページより)

うまく話をしようとしない

ナイーブさんや人見知りの方は、上手な話し方をしようと自らハードルを高く上げすぎ、かえってつまずいてしまうもの。そこで、「自分から話をするのはちょっとハードルが高い」と感じるのであれば、まずは話を聞くことから始めてみようと著者は提案しています。

ちなみに(逆説的ではあるものの)、うまく人と話すコツは「うまくなろうと思わないこと」なのだといいます。話し下手、聞き下手であったとしても問題はなく、まずは会話の場にいることが大切だということ。

よく「上手な会話をしたいなら、上手な相槌やリアクションをしましょう」と言われますが、私から言えるのは、これもうまくやろうと思わないでいいということです。相槌やリアクションはやり過ぎもやらなさ過ぎも良くないでしょうから、うまくやろうとしないということがポイントです。(139ページより)

上手な相槌を打とうとするから、タイミングを見計らっているうちに、どこでどう打つべきかわからなくなってしまうわけです。同じく、上手なリアクションをしようとするから、どういうリアクションをしたらいいのかわからなくなってしまうということ。

したがって、最初は下手な相槌と下手なリアクションでいいのだと著者は述べているのです。うまい下手ではなく、「とりあえず、やってみること」が大事だという考え方。

それよりも大切なのは、相手を観察し、相手の話を聞くことだといいます。自分の反応にばかりとらわれてしまうと、人の話を聞けなくなってしまうもの。自分に注意が向いて、「いまのは上手にリアクションできたかな?」などと考え不安になってしまうわけです。

むしろ、相手がどういうふうに相槌を打ったかとか、相手がどういうリアクションをしたかを見た方がいいです。相手の話に共感して、面白いと思ったら、素直に「面白いですね」と言えばいいのです。(140ページより)

余裕を持てるようになれば、相手が話すときの仕草を見ることができるようになるもの。「この人は身振り手振りをして話すんだな」とか「首をかしげながら話す人だな」というように観察できるようになるわけです。

「手を動かしたり、首をかしげたりするのは、自分が嫌いだからなのでは?」と思ってしまったら、「結論の飛躍」の「心の読みすぎ」あるいは「自己関連付け」の認知の歪みですから、そういうネガティブな考え方はやめましょう。(140ページより)

必要以上に考えすぎるのではなく、相手の仕草が気になったら、「そういうクセの人なのかな」というふうに自然に観察するにとどめておけばいいということです。(130ページより)

著者は本書のことを、「ナイーブなあなたが感じている生きづらさを改善するためのガイドブック」だと表現しています。自分自身を知るために、きっと役立つはずだとも。自らを思考のクセから解き放ちたいのなら、手にとってみてはいかがでしょうか?

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Source: ワニブックス