『「自己責任」を強いられる時代に社会へと踏み出す君たちへ』(鳥原隆志 著、WAVE出版)の著者は、インバスケット研究所という会社の代表。
大学卒業後に入社した流通大手のダイエーで経験を積み、阪神・淡路大震災での劇的な変化を契機として独立。2011年には「ダメもとで書いた」という著作『究極の判断力を身につけるインバスケット思考』がベストセラーになったことがきっかけで会社も成長し、新入社員を迎えられるまでになったのだそうです。
「大成功しているわけでも、大金持ちになっているわけでもありません」とはいうものの、大きなものを得ることはできたようです。講演や研修などを通じ、経営者をはじめとする多くの人々と交流を重ねてきた結果、仕事をするうえで忘れてはならない大事なことを学べたというのです。
どんなに環境が変化しても強かに生き抜き、周りから必要とされる人たちは、もちろん技術やスキルを持っていますが、何よりも仕事に対する考え方、関わり方が違っています。そこが驚くほどに共通しているのです。(「はじめに」より)
ただし、そういったことはなかなか会社では教えてもらえないものでもあるでしょう。なぜなら、「当たり前」とか「わかりきったこと」として省かれやすいことだから。つまり新入社員に向けて実際に行った特別講義を書籍化した本書は、それらを伝えることを目的としているのです。
これから厳しい社会で仕事をする上で生き残っていくための講義です。
誰も守ってくれない時代だからこそ、皆さんにとって長く役に立つだろうことを改めて丁寧にお伝えしていきたいと思っています。(「はじめに」より)
こうした考え方を軸とした本書のなかから、きょうは第2章「仕事にどう取り組むか」に焦点を当ててみたいと思います。
必要とされる人間になる
著者はこの項において読者(講義の聴衆)に対し「仕事は楽しいか?」と問いかけたのち、「私は、仕事はたいへんだしつらいものだと思う」と自身の考えも明かしています。
たしかに仕事の場においては、なかなか思うようにいかなかったり、理不尽だったりすることもあるもの。しかしそれでも、「仕事をしていてよかったな」と思えるときがあり、それこそが大切なのだと主張しているのです。
では、どんなときにそう思えるのでしょうか?
それは「必要とされている」と感じるときだ。
あなたがいてくれて助かったと言われるとうれしいよね。
仕事をしていてよかったと思う。
そしてもっと頑張ろうと思う。
社会人になると、「社会に貢献する」という言葉をよく聞くと思う。
では、社会に貢献するというのは具体的にどういうことだろう。
少し考えてみてほしい。(66ページより)
改めてこう質問されると、即答するのは難しいかもしれません。「社会に貢献する」ということを具体的にイメージしにくいからです。しかし、個人で社会に貢献することが難しかったとしても、個人個人の力が集まれば素晴らしい貢献ができるはず。つまり、仕事を通じて社会やまわりの役に立つことが社会貢献だということです。
ところが多くの人が間違った考え方をしていて、「自分は役に立つと思っている」と「他人に役立つと思われている」をごっちゃにしてしまっているのだと著者は指摘しています。まわりから評価されないと「おかしい」と不満を口にするのはそのせいなのだと。
しかし、役立つかどうかは自分が決めるのではなく、まわりが決めること。それをわかっているかいないかによって、仕事での評価が決まるわけです。
つまり「自分ができること」をしても評価されることはない。「相手が求めること」をすると「役立った」と思われる。
仕事の世界ではこれを「ニーズに応える」という。とても重要なキーワードだ。(69ページより)
仕事をするうえで「必要とされる」のはとても重要。そして必要とされるとは、役立っているということ。役立つということは自分の仕事の原動力になり、ときにその力は報酬の価値を上回ることすらあるもの。その状態が、幸せな仕事をするサイクルだというわけです。
だからこそ、幸せになりたいのであれば、人に尽くせる人、人のためになにかできる人になるべきだということです。(66ページより)
考えて仕事をする
役立つというのは、相手が抱えている問題を解決することだ。
特に、なかなか解決できなかった問題を解決してくれると、相手に喜ばれるよね。
それは「価値」にもつながる。
つまり誰にでもできる「役立ち」よりも、誰もができない「役立ち」のほうが断然価値が高いわけだ。(72ページより)
価値を生み出すことができる、つまり役立つ人間は、少し工夫して仕事をしているもの。それは「考えて仕事をしている」ということだといいます。
仕事はおもしろくない、と言う人がいるが、その多くは「考えていない」からだよ。
単純作業でも「こうすればもっと効率的かも」とか「どうしてこの作業が必要なんだろう」と考えるとおもしろいし、周りからも評価される。(77ページより)
このような考え方に基づいて著者は、なによりも大事な“考えるべき観点”は「仕事の意味」だと強調しています。「この仕事はなんのためにやるんだろう」ということを前向きに考えながら仕事をしていくことが、大きな意味を持つのでしょう。(72ページより)
冒頭でも触れたとおり、本書は基本的に新入社員に向けて書かれたものです。しかしその内容は普遍的であるだけに、世代を超えてすべてのビジネスパーソンに響くはず。生きにくい時代を乗り越えていくために、手にとってみてはいかがでしょうか?
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Source: WAVE出版