忘れっぽいと、がっかりするものです。

  • 明日のあの会議は何時だったっけ?
  • 「エイプリル」という名前の女性が「8月」(英語で「オーガスト」)に取引したいかもと言っていたのだったか、「オーガスト」という名前の男性が「4月」(英語で「エイプリル」)に電話をかけてくると言っていたのだったか?
  • 待って、3つ目はなんだっけ?

これはもちろん冗談ですが、多くのビジネスリーダーにとって(特に少し年をとってくるにつれて)心配の種が1つあるとすれば、自分の記憶力が落ちていないかということです。

そこで、神経科学に目を向けてみましょう。記憶力を高め、物事が思い出しやすくなる具体的なヒントを5つご紹介します。

目次

1. 後ろ向きに歩く

2. 野菜と果物を食べる

3. もっと良い照明を手に入れる

4. 断続的断食を試す

5. 心配しない

1. 後ろ向きに歩く

中でも私が一番気に入っているものからはじめましょう。これを考え出した神経科学者たちも、この方法がなぜ有効かを説明できないからです。

ロンドンにあるローハンプトン大学の研究者たちは、被験者を以下の3つのグループに分けました。

グループ1

被験者は前に歩きながら、短編映画を見たり、単語を記憶したり、一式の絵をよく見たりするように指示。

グループ2

被験者は後ろ向きに歩きながら同じ課題を行なう。

グループ3

被験者は対照群として、立って静止した状態で同じ課題を行なう。

結果はどうなったのでしょうか?

研究者たちが学術誌『Cognition』に報告した通り、後ろ向きに歩くグループグループ2のほうが、後になって映画や単語、絵を正確に思い出すことができたのです

なぜか? 実は、よくわからないのです。

脳は記憶を空間的に整理するため、(後ろ向きに歩くような)珍しい経験をすると記憶の保存方法が変わる、とする説もあります。

2. 野菜と果物を食べる

次はこれです。ハーバード公衆衛生大学院の研究者たちが2万7842人を対象に行なった大規模な調査で、食事と記憶の関連性が明らかになりました。

具体的には、野菜や果物果汁でもの摂取が増えること、特に濃いオレンジ色の野菜や赤い野菜、葉物野菜、ベリー類の果物をたくさん食べることは、後年の健忘症が軽減することと相関関係にあったのです

この研究でわかった唯一の悪い情報としては(実際に果物や野菜を食べるのが好きだと仮定した話です。好きな人がほとんどだと思いますが)、これは非常に長期的な研究だったのですが、一番重要なのは若いうちの果物・野菜の摂取量だということです。

つまり、50年、60年と不健康な食事をしてから後年にその分を3倍にして埋め合わせることはできないのです。

それでも、食べて損をすることはありません。次の世代への良いアドバイスです。

3. もっと良い照明を手に入れる

簡単に修正できるものがこれです。

ミシガン州立大学の研究室が行なった研究で、薄暗い環境で仕事をすると「脳の構造が変化し、記憶力や学習能力が損なわれる」ことがあると明らかになりました。

これは文字通り、実験用ラットを使った研究でした。

グループ1

ナイルグラスラットのグループの半分を薄暗い環境で飼育。上に蛍光灯がついている、明かりの少ないオフィスを想像してください。

グループ2

残り半分のラットは、グループ1に比べて遥かに照明の明るい環境で生活。晴れた日の室外を想像してください。

この研究によると、結局、薄暗いところにいたラットグループ1学習と記憶に不可欠な脳の部位である海馬の能力を約30%失い、以前に訓練を受けた空間課題の成績も悪かった」そうです。

その理由については神経生物学的な説もありますが、この記事との関連で言えば、一番のポイントは単純に、働く場所の明かりを十分に確保することでしょう。

そして、従業員がまだリモートワークをしている場合は、リーダーとなって従業員にもそうしてもらうようにしましょう。

4. 断続的断食を試す

次は、キングス・カレッジ・ロンドンの3カ月にわたる研究です。

研究者たちは、断続的断食によって海馬の神経発生(具体的には、クロトーと呼ばれる脳内遺伝子の発現)が促進され、実験用マウスの記憶力が向上するかどうかを明らかにしたいと考えました。

そこで、分けられたのは以下の3つのグループです。

グループ1

いつも通りに飼育・給餌した対照群。

グループ2

1日の餌の摂取量を10%減らしたカロリー制限群(CR)。

グループ3

同様に餌を減らすものの研究期間中に一日おきにしか餌を与えなかった断続的断食群(IF)。

結果はどうなったのでしょうか?

この研究で、断続的断食群グループ3ではほかの群に比べて長期記憶の保持が向上し、さらにクロトー遺伝子…と神経発生が上方制御された」ということがわかりました。

研究の筆頭筆者でAdult Neurogenesis & Mental Health LaboratoryのリーダーであるSandrine Thuret博士は、これに関して「新しい脳細胞を増やす方法」というタイトルでTED Talkを行ない、現在までに1200万回再生されています。

5. 心配しない

ダブリンにあるトリニティ・カレッジの神経科学者たちは最近、学術誌『Nature Reviews Neuroscience』で、「物忘れは、記憶がまだ物理的に脳に保存されているかどうかということとは異なり、むしろ記憶にアクセスできないことと深く関係している」と推察しました。

違いのない区別のように思われるかもしれませんが、この研究者たちによると、これは全体的にはプラスになる話かもしれません。

物忘れは、不具合というよりも、環境とダイナミックに相互作用するための機能的な特徴なのかもしれないのです。

少し自己言及的になるとは思いますが、ここから得られる最良のアドバイスは、単に正常な物忘れについては心配しない、ということかもしれません。

その代わり、脳の機能の正常かつ健康的な部分なのだと受け止めるのです。

ただし、チェックリストやカレンダーなどのツールを使って、重要な記憶を補強することも大切です。物忘れをするからといって、年をとってきたわけでも健忘症になっているわけでもない、ということがわかるだけかもしれません。単にいっぱいいっぱいになっているというだけかもしれないのです。

無料電子書籍「Neuroscience: 13 Ways to Understand and Train Your Brain for Life」 に書いた通り、人間の脳、その意外な機能の仕方ほど魅力的なものはありません。

その中でも、記憶はいつでも一番おもしろいものです。

Source: TED Talk, The Free Book of Neuroscience

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