人間関係の悩みは尽きません。それが上司や仕事上の関係なら尚更です。
どんなに魅力的な仕事でも、いざはじめてみたら人間関係が足を引っ張って退職せざるをえなくなってしまった…なんてことありますよね。実は、筆者も1回だけ経験したことがあります。
上司に悩まされたくないし、人の上に立った時に悩ませる立場にもなりたくない。でも、リアルな人間関係の中では客観視して問題を捉えられず、学びにつなげられないことも。
そこで、映画の出番。社会を映す鏡と言われる映画やドラマには、さまざまな「悪い上司」が登場します。ここ30年の作品は、主人公と敵対する登場人物の両方の事情を描く傾向があるため、悪魔的な「悪い上司」を見つけるのは困難ですが、問題別なら何人か見つかりましたよ。
鑑賞しながら、「自分ならどうするか? 」と考えれば働くうえでの人間関係のヒントが見つかるかもしれません。
目次
1. 「仕事命!」を部下に押しつける上司
『プラダを着た悪魔』:ミランダ・プリーストリー
映画界の鬼上司といえば、この人。
雑誌『ヴォーグ』のカリスマ編集長アナ・ウィンターをモデルにしたと言われている『ランウェイ』の編集長ミランダ(メリル・ストリープ演)は、完全な仕事人間で周囲の人間にも同じことを要求します。
アシスタントは早出、残業は当たり前。私生活も関係なし。
ミランダの仕事は決断力を求められるため、自分がすべきことを選択して、ほかはアシスタントに全任せ。「雑誌のクオリティを担保するために必要なこと」と言われれば納得せざるをえない部分もありますが、ミランダについていくのは相当な覚悟が必要でしょう。
ミランダは気難しい人間ではあるものの、仕事人としてはプロフェッショナル。また、厳しくすることでアシスタントの能力を最大限に引き出し、短期間でどこにいっても通用する優秀な人材に育てたのも事実です。
とはいえ、24時間電話で呼び出されて無理難題を言い付けられる部下は、結構簡単に心を病むので、バランスが難しいのですよね…。
2. 仕事に誠意がない上司
『ジュラシック・ワールド』:クレア・ディアリング
ジュラシック・ワールドの運用管理者であるクレア(ブライス・ダラス・ハワード演)は、恐竜たちを血の通った生き物ではなく展示物程度にしか認識していません。
また、仕事第一で家族とのコミュニケーションを鬱陶しく感じており、パークに遊びに来た甥っ子たちをアシスタントに任せっきりにするほど。
クレアは、『ジュラシック・ワールド』シリーズ3部作の間に人格が様変わりし、のちに恐竜保護の活動家になりますが、利益主義者から利益度返しのアクティビストになっているだけで、周囲の人々の都合に配慮しない自己中心的な性格は相変わらずです。
3. セクハラだらけの上司
『スキャンダル』:ロジャー
『スキャンダル』は、FOXニュースのCEOであるロジャー・エイルズのセクハラ事件を映画化した作品です。
ロジャー(ジョン・リスゴー演)は地位を利用して日常的に女性スタッフに性的嫌がらせをしていました。
公の場で女性の外見を揶揄するのは当たり前。「TVは視覚メディアだからスカートは短く」と女性スタッフにパンツルックを禁止することも。
ロジャーのセクハラの誘いを断った女性は降格させられたり、視聴率の振るわない番組に移動させられたりしました。
4. パワハラをかけてくる上司
『フルメタル・ジャケット』:ハートマン軍曹
海兵隊訓練キャンプのハートマン軍曹(ロナルド・リー・アーメイ演)は、新兵の訓練を任されていました。
厳しいことで有名な海兵隊ですが、彼の指導は、指導の範疇なのか虐待なのか判断がつかないもの。罵声や執拗な叱責、暴力の限りをつくして新兵の心身を痛めつけただけでなく、口答えさせる隙を与えない弾丸罵声で、隊員から正常な思考を奪いました。
人格否定は当たり前。気に食わない訓練生レナード(ヴィンセント・ドノフリオ演)に目をつけ、彼が失敗すれば連帯責任として訓練生に懲罰を与えました。
これが、訓練生らによるレナードへの壮絶ないじめの引き金となり、レナードの精神を破壊していくことに…。
5. 「お客様至上主義」が過剰な上司
『幸せのレシピ』:ポーラ
人気レストランのオーナーであるポーラ(パトリシア・クラークソン演)は、お客のニーズに応えたいがために、要望をなんでもきいてしまいます。
シェフのケイト(キャスリン・セダ・ジョーンズ演)が完璧に仕上げた料理も、「客からクレームが入ったから」と作り直させていました。
プライドとプロ意識を持っているからこそ意見してくるケイトを疎ましく感じるようになったポーラは、ケイトが短期休暇をとっている間にニック(アーロン・エッカート演)という有名シェフを呼び寄せ、ケイトの追い出しにかかります。
最終的に、シェフの言い分よりも客の意見を優先し続けたことが仇となり、ケイトとニックはポーラのもとを離れることに。
シェフ=仲間の腕前を信じて理不尽なクレームを断る勇気があれば、ポーラのレストランは今でも人気店だったかもしれません。
6. 手柄を横取りする上司
『ワーキング・ガール』:キャサリン・パーカー
重役のキャサリン(シガニー・ウィーバー演)は、セクハラや学歴を理由に出世できずに悩んでいた秘書のテス(メラニー・グリフィス演)に理解を示し、友人のように親しい関係を築きました。
テスの出世を応援し、アイデアを共有するように促しますが、協力的で理想の上司を演じつつ、裏ではテスのアイデアを横取りして自分の手柄にしていたのです。
キャサリンが理性のある上司であれば、急激に部下と距離を詰めたり、私生活を共有したりする危うさを理解していたはずです。
7. 実力で評価しない上司
『セカンド・アクト』:ワイスコフ
ワイスコフ(ラリー・ミラー演)は、学歴で役職を決定する上司。
そのため、15年間も会社のために必死で働き実績を残してきた従業員のマヤ(ジェニファー・ロペス演)が明らかにチームの士気を高めいて、店舗マネージャー職に相応しいにも関わらず、高卒というだけで昇進させません。
どう足掻いても、18歳で進学しなかったことが後のキャリアに影響すると落胆したマヤは、会社を離れてしまいます。
ワイスコフが実力で人を評価する人であれば、プレゼンテーションで見せた情熱と実力を見て評価基準を変える提案くらいできたはず。学歴だけで配属された店舗マネージャーの一人相撲っぷりと、マヤの落胆っぷりをみる限り、誰も幸せになっていません。
確かに学歴は一定のフィルターにはなりますが、向上心を持って働き、会社に貢献していることが証明されているのなら、評価基準を柔軟にする必要性はありそうです。
おまけ①:まさに「ダメ上司博物館」が楽しめる
『モンスター上司』:全員
昇進を餌に部下をこき使ったり、婚約者がいる部下に嫌がらせの如くセクハラをしたりといった典型的な問題上司だけでなく、まったくビジネスの力量がない2代目社長も登場する本作。
セクハラ上司はジェニファー・アニストン演じるジュリアですが、外見の良さはセクハラの免罪符にはなりません。
モンスター上司たちは、部下を徹底的に馬鹿にしており、自分達に逆らってくることなど想像もしていないようです。
部下は上司が一番困るタイミングで反撃してくる可能性もあることを理解しておくべきでした。
おまけ②:セクハラの冤罪にどう立ち向かう?
『ディスクロージャー』:メレディス・ジョンソン
メレディス(デミ・ムーア演)は、かつて付き合っていた男性であり、部下のトムを誘惑するも拒否されました。
次の日、メレディスはトムをセクハラの加害者として訴えます。立場が上で、しかも美しい女性がセクハラをでっち上げた場合、どのように冤罪を証明できるのか?
1994年公開当時、「セクハラの被害は女性」という固定概念があったので、センセーショナルな作品として大々的に取り上げられました。
上記のような「悪魔のような上司たち」に思い当たる人はいますか? あるいは知らず知らずのうちに、自分がそうなっているかも。
彼らから教訓を学び、反面教師にしつつ、良好な上司・部下の関係をぜひ築きたいものです。
今回ご紹介した映画はAmazon Prime VideoやNetflixでも視聴可能なものがほとんどなので、ぜひ「仕事術」の観点からも作品を楽しんでくださいね。
Source: YouTube(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9), Amazon.co.jp, Netflix