テレワークの広がりに加え、出勤時も人との距離を取るよう求められる中、これまでのように職場での気軽な会話が減っていませんか?
チームメンバーとの連携や心理的安全性を醸成するためにも、対話は欠かせない要素です。
今回は、忙しい状況にあっても、短時間であらゆる人と信頼関係を築く対話法を紹介します。
「仲良くなる=信頼される」ではない

信頼関係を築く鍵は「聞き役に回る」こと。しかしやってみると、「これは、簡単ではないぞ…」とすぐにわかるはず。
白状すると、私もかつてはそうでした。つい「喋ること」で場を和ませようと頑張るタイプだったので、自分が一生懸命話してしまっていました。でも、これでは「仲良く」はなれても、「信頼」されるまでには至りません。
実際、私が営業職だった20代の頃、あるお客様からのアンケート回答でこんな声をもらったことがあります。
「伊庭さんはよく頑張ってくれているし、情報も提供してくれる。
忙しいから仕方がないと思うが、じっくりと話を聞いてもらえると、相談に乗ってもらいやすくなる」
これを読んだ私自身は、その方と上手くいっているものとばかり思ってたのでショックでした。
確かに、忙しかったことは事実。時間に追われながらの会話だったため、一方的に情報を伝えるように受け取られてしまったのでしょう。
改めて思い返してみると、忙しい時こそ短時間で信頼を得る対話術を習得するべきではないかと感じます。
今回紹介するのは、聞き役に徹することで、忙しくても短時間で信頼を得る対話術です。
「適当な姿勢」で傾聴する、ロジャーズの3原則

果たして、「自分が聞き上手かどうか」気になりませんか?
自分の意見を横に置き、“適当な姿勢”で傾聴する。これこそが、忙しくとも余裕のある、そんな大人を感じる「聞き上手」の鉄則です。
不真面目に聞くのではありません。無関心もダメ。あくまで“適当”です。
解説する際に、ぜひここで紹介したいのが「ロジャーズの3原則」という理論。
アメリカの心理学者、カール・ロジャーズが提唱した理論で、信頼構築の前提となる「傾聴」の要素は次の3つの要素からなるという考え方です。
ロジャーズの3原則
- 共感的理解:相手の気持ちに立てる
- 無条件の肯定的関心:自分の価値観で判断しない
- 自己一致:心で思っていることと、言動が一致している
上記の各要素の説明とともに、セルフチェック用の設問を作成してみました。回答しつつ、自分が傾聴できているかどうか確認してみてください。
1. 共感的理解
相手の立場に立って、気持ちに共感しながら理解しようとする姿勢。
テクニカルに「大変だね」「嬉しかったね」と言葉で言うのではなく、相手の気持ちに寄り添い、「その気持ちわかる」と思いながら聞くこと。
【あなたはできてる?】
☑ 自分が知らないこと、かつ重要ではないことであっても、相手が嬉しそうに報告してくれた時は、素直に喜びを感じながら聞ける。
2. 無条件の肯定的関心
相手の話を「良い・悪い」といった評価や、自分の価値観を加えずに、フラットな視点に立ち、関心を持って聴く姿勢。
【あなたはできてる?】
☑ 不愛想な相手に対しても、マイナスの感情を抱かず、素直に話を聞くことができる。
3. 自己一致
心で思っていることと発言にギャップがなく、正直である姿勢。
【あなたはできてる?】
☑ 部下の話を理解できない時、理解しているフリをせず、遠慮せずに確認するようにしている。
*
いかがでしたか?「適当」の意味が伝わったのではないでしょうか?
自分の意見を横に置き、“適当な姿勢”で聞く。これが「聞き上手」の鉄則です。
「適当な姿勢」で傾聴する、聞き上手の態度とは?
むろん、適当とは、無責任といった意味ではなく“適切な程度”のこと。
聞き上手を例えるなら、こんな感じ。
シーン:まずい(と感じた)料理を食べた時
- NG:「マズい」と口にする or 自分を偽って「おいしい」と言う
- OK:「自分はまずいと思ったけど、自分の感覚が絶対ではないし…。人によって味覚は違うからなあ」と思いながら、相手に「どう?」と聞く
この時、相手が「おいしい」と言えば、それはそれでOK。また、相手が「まずい」と答えたならそれもOK。それが“適当”。
聞き役に徹しながら、この“適当さ”を纏うことこそが、「良好な関係」を築く重要な要素だと私は確信しています。
いかなる状況でも、短時間で信頼を得る人の対話を解説しました。ぜひ、今までの対話で、改善すべき点が思い当たるようなら早速実践してみてください。
今回の内容が、あらゆる人と信頼関係を構築するスキル向上に向けての一助になれば幸いです。
▼ライフハッカー 編集部のPodcastトーク配信中!
伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、オンラインを活用した研修も好評。近著に15万部を超える『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ(PHP研究所)』『できる営業は、「これ」しかやらない(PHP研究所)』のほか、新刊の『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる(アスコム)』をはじめ、他多数の書籍がある。
※無料メーリングニュース(全8回)
※YouTube「研修トレーナー伊庭正康のスキルアップチャンネル」、音声メディアVoicy「1日5分 スキルアップラジオ」もスタート。
※伊庭の研修をオンラインで学べるUdemyの講座も好評(Udemyベストセラー入り!)