不注意や先延ばし、怠け癖などに表れる、自制心の欠如は、生まれつきの性質だと思われていることが多いですが、実は人間には、自分が思っている以上に衝動を克服する意思や力が備わっています。

スタンフォード大学の神経科学者Andrew Hubermanによると、衝動をコントロールする技術は身につけることができるのだそうです。

今回は、習慣、つまり自分自身をコントロールする技術について話していきましょう。

「やる」と「やらない」の使い分けを意識する

Hubermanは「The Knowledge Project」のインタビューで、脳の大脳基底核という部分が日常生活に与える影響について説明しています。

思考と行動を統合する役割を果たすこの大脳基底核は、ドーパミンによって制御されており、朝食を食べたり、ベッドメイクをするような行動中心の「やる機能」と、行動を抑制する「やらない機能」の実行をしているのです。

私たちは、子どものころに、じっと座っている、他人の邪魔をしないなど、「やらない」行動の多くを学びます。

一方、大人になるにつれて、生活は「やる」ことだらけになっていきます。

メールをする、電話をするなど、まるで生活自体がそうであるかのように。

大人になって「やる」機能を中断する機会はほとんどない、とHubermanは言います。

「単に行動を抑制するという意味でも、“やらない”機能を使うことは滅多にありません」。

しかし、計画を実行したり、難しい仕事を期限内に終わらせたり、長期的な目標を達成したりしたい場合は、生産性の低い行動を抑制することが必要です。

「やらない」回路を鍛える方法

Hubermanは、実生活で反射的な行動を起こしそうになったときに、自分の衝動をコントロールする回路を強化する努力として、1日に20〜30回は「やらない」瞬間をつくるようにしています。

「神経回路について理解すべきことは、汎用性があるということです」とHubermanは言います。

たとえば、爪を噛まないという「やらない」回路をつくったら、自制心をもっと発揮したい他の分野にも応用できるのです。

Hubermanは、日常生活の中で「やらない」回路をつくる方法の例をいくつかあげています。

1. スマホに手を伸ばさない

1日に何回スマホに手を伸ばしていますか?(自分がスマホ中毒みたいで嫌な気分になるので、答えなくていいです)今度、退屈だ、手持ち無沙汰だ、(やるべきことを)先延ばしにしたいと感じた時に、何も考えずにSNSをスクロールしたり、ネットニュースをチェックしたい衝動に駆られたら、抵抗してください。

ほんの少しの間でもいいです。

2. 計画を実行する

たとえば、スポーツジムでの運動や用事を片付ける順番など、頭の中で何かを計画したら、その場の思いつきでやったり、順番を変えたりするのではなく、考えた通りに実行してください。

3. 労働時間を90分に区切る

1度に90分間働くと決め、立ったり、コーヒーやおやつを取りに行ったり、洗濯物を畳んだり、目の前にある他の仕事に手をつけたりしないようにします。

目先のことに対する集中力を身につけ、緊急事態で仕事を中断する必要がない限り、イスに座って机から離れないようにします。

4. おやつ休憩をコントロールする

小腹が空いたり、おやつが食べたいと思ったら、すぐにおやつを食べずに、少し後にするようにします(Hubermanは摂食障害の回復中の人はやめた方がいいと言っています)。

5. 瞑想をする

瞑想などのマインドフルな実践を自分に課すのは、「やらない」回路を鍛えるのにいい方法です。

Hubermanは、このような「やらない」練習に神経質に執着しないようにと警告しています。

脳のウェイトトレーニングのように、実践練習としてやってみてください。

大人は監督してくれる人がいないので、1日中スクロールして時間を無駄にしたり、あれこれ仕事に手を出して何も完了しないなど、非生産的な行動を中断する神経回路を鍛えるのは自分次第です。

このようなやらない回路は鍛え続ける必要があります。最近はやる機会や報酬があまりにも多いので、やらない回路を鍛えることがありません。

Hubermanは、スマホや情報に簡単にアクセスできる時代には、「何も計画せず、1日があっという間に過ぎていきます」と言っています。

Source: Andrew Huberman, The Knowledge Project