投資で失敗したくない──誰もがそう考えることでしょう。しかし、リスクのない人生はないことと同様に、リスクのない投資は存在しません。
「未来を見通す投資思考」特集では、本格的に投資をはじめる前に知っておきたい投資の基本原則から思考法、現在の最新トレンドや最先端のテクノロジー投資、FIREを実現したエピソードなども交えて、「未来を見通す」投資をするために必要なことをお伝えします。
今回は「はんぶん資産に働いてもらって、はんぶん自分の好きな仕事をする」という「ゆるFIRE」生活を実践しているちーさんが登場。20歳のときに100万円を元手に投資を始め、33歳のときには3000万円の資産形成に成功。そして現在は…。
ちーさんのこれまでの資産形成の歩みと、ゆるFIREが生き方・働き方にもたらすメリットについてお話を聞きました。
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不労所得+仕事による収入で生活する

数年前から耳にすることが増えた「FIRE(ファイア)」というワード。
「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとったもので、経済的自立と早期退職を目標とするライフスタイルやムーブメントのことをいいます。
一方、早期退職をしないまでも、資産運用による不労所得と仕事で得た収入とを合わせて生活していくというのが「サイドFIRE」。このサイドとは、自分の好きなことや特技を生かした副業のことを指す「サイドハッスル」のことで、好きなことを生かした自由の利く仕事で得た労働収入も得ながら暮らしていくFIREのかたちです。
今回お話をうかがったちーさんのライフスタイルも、この「サイドFIRE」にあたりますが、著書を出すにあたってタイトルに用いた言葉が「ゆるFIRE」。FIREのハードルをさらに下げ、お金の不安から卒業する方法を紹介しています。
私の場合、早期退職をするために資産形成を始めたわけではありません。なぜなら仕事が好きですし、仕事にはそれでしか得られない学びや喜びがあるからです。
ただ、会社員を辞めて好きなことを仕事にしたい、起業したいと考えたときに、何かがあっても安心できる最低限の生活の基盤を支える資産という後ろ盾が欲しかったんです。
生き方の選択肢を増やすための資産形成
ちーさんが新入社員として就職したのは、希望の会社ではありましたが、配属された部署で行なっていたのは事務の仕事。年収は300万円未満でした。
その後、資格を取って希望していた専門職の部署へ異動しましたが、そこでの毎日はとにかく忙しく12時間労働は当たり前。好きな仕事で、やればやるほどインセンティブとして報酬がもらえたためやりがいもあり、無我夢中で働いていたそうです。そんななか、ふと「これでいいのかな」という思いが頭をよぎったのだとか。
仕事は楽しいけれど、このまま労働力を捧げ続ける人生はイヤだなと思ったんです。でも、会社員だと自分で仕事量を調整したり好きな仕事だけしたりするというわけにはいきません。働き方を変えたいと思ったら、辞めるか転職するかしかない…。
だったら自分にできる範囲内で資本をつくり、生き方の選択肢を増やそうと考えました。
そのころ、年収は500〜600万円にまで上がっていて、お金を使う暇もないほど仕事に没頭していたため、毎月収入の半分を貯金することができていました。それを投資に回し、33歳で3000万円の資産を築きました。
セミリタイアを意識しつつも仕事は続けていましたが、結婚したご主人の転勤にともなって退職。現在は自身の資産形成をテーマにSNSで発信して収入を得ています。
お金がお金を稼ぐ仕組みづくり

資産形成はさぞかし順風満帆だったのだろうと想像しますが、「いえいえ、失敗もたくさんしましたよ!」とちーさん。
ちーさんが投資を始めたのは二十歳のとき。当時は「株を買いたい」と思ったら、証券会社の窓口へ出向くしか方法がありませんでしたが、そこへネット証券が誕生。
雑誌で「これからはネットでトレードする時代」と特集されているのを読んだちーさんは、子どものころから親がお年玉などを貯めていてくれた100万円を株式投資に注ぎ込みます。
当時はITブームで、ネットでビジネスをすることが盛り上がっていました。その雰囲気に乗っかって、何もわからないのに「おもしろそう」というだけで始めてみたんです。
その後、ライブドアショックやリーマンショックで投資資金が60%ぐらい減ってしまい、心が折れて売ることも買うこともやめてしまった時期もあります。完全放置ですね。
景気が徐々に回復し、「投資で損したお金は、投資で取り戻そう」と2010年ぐらいから投資を再スタート。
アベノミクスなどの経済政策による景気浮揚も手伝ってリターンも良く、「増やすにはとてもいい時期だった」とちーさんは振り返ります。
当時は日本株も成長しており、また敷居の高かった米国株を取り扱う証券会社が増え、手数料も安くなって手を出しやすくなったことも、ちーさんの資産形成を後押ししたそうです。
放置していた数年間は、ちょうど無我夢中で仕事に没頭していたとき。28歳のときに貯金は1000万円になっていましたが、これは投資の恩恵はほぼ受けていません。それもすべて投資に振り向けて、2010年から2015年ぐらいの期間に一気に増えたという感じです。
33歳で3000万円の資産形成を達成し、ゆるFIRE生活も4年目に突入。現在も資産は増え続け、昨年10月には6000万円を突破。
ちーさんによれば、1000万円の資産による不労収入は年間約40万円。3000万円だと年間約120万円、5000万円ともなれば年間約200万円にものぼるそうです。
「私の場合、今はもうお金がお金を稼ぐ仕組みはできあがって、株をどう運用していこうかというフェーズは終わったような気がする」と話すちーさん。失敗してもくじけず、資産形成を成功させた体験談は、これから投資を始めようとする人の励みになりますよね。
資産形成を成功へと導く2つの心得

お金がお金を稼ぐ仕組みづくりをしたい。しかし、「投資はリスクがつきもので怖い」と思う人がまだまだ多いのも事実です。
実際、ライフハッカーで行なったアンケートで「お金に対するマインド」を聞いたところ、「投資はせず、貯金でコツコツと」という回答が第2位という結果に。
「投資のリスクを考えれば、どんなに年利が低くても銀行に預けておいたほうが安全だ」。そう考えている人に、ちーさんがアドバイスするのは「貯金もリスクであることを知ってほしい」ということ。
日本で暮らしていると気付きにくいのですが、円も変動しています。このところ円安が続いていますが、もっと前から見てみても円の価値は下がり続けています。円を持っていることが必ずしも安全とは限りません。
「円が安全で、貯金が一番リスクがない」と信じているならば、まずその意識を変えることが資産形成成功への一番の近道と言えると思います。
また、「投資を始めるなら早ければ早いほど、長ければ長いほどいい」というのが、ちーさんのもう1つのアドバイス。
投資を始めると価格の変動が気になり、ちょっとした増減にも一喜一憂してしまうものですが、「株式の長い歴史で見てみると、株価はずっと右肩上がりなんですよ」とちーさん。
私もはじめは一喜一憂していたので、下がると「このぐらいのマイナスで済むうちに…」と売ってしまいたくなる気持ちもわかります。
しかし、短期であればあるほど損をしやすくなり、長期であればあるほど損する確率は下がっていくことは、株式の常識としてよく語られています。何十年も預けておくことを前提にした「長期投資」をするには、早く始めるに越したことはありません。
プロのトレーダーならまだしも、他の仕事をしながら売買のためにモニターに張りつくのは難しいですよね。短期投資、長期投資、それぞれのメリット・デメリットを見極め、ビジネスパーソンの自分が副業として行なう投資の最適解を検討してみましょう。
さて、前編はここまで。後編はちーさんが具体的に行なってきた「ミニマルライフ×副業×資産運用」について紹介します。
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