「デザイン、仕上がりがとにかく美しい」と評判のアクセサリーブランド「MAYGLOBE by Tribaluxe(メイグローブ・バイ・トライバラクス)」。インドの小さな村に住む女性たちが作り上げたアクセサリーの数々は、多くの日本人の心をつかんでいます。

このブランドを立ち上げたのは、株式会社スプリングの代表取締役・立花佳代さん。

世の中にないアクセサリーをつくりたい」という思いだけで、まったくのゼロからのスタートだったとか。初めてインドに降り立ってから最初の販売まで約8年もかかり、試行錯誤の連続だったそうです。

そんな立花さんは初の著書『やりたいこと、全部やりたい。自分の人生を自分で決めるための方法』(アスコム)を刊行。人生の酸いも甘いも嚙み分けながら、やりたいことに邁進してきた立花さんに、夢を実現させる秘訣についてうかがいました。

「なぜできないの?」という思いを捨てた

――ブランドが立ち上げるのに8年かかったという大きな理由が、現地インドで制作されるサンプルのクオリティの問題だったとか。「丁寧に何度指示を出しても、綺麗なサンプルが仕上がってこない」という状態が何年も続いたそうですが、そんな厳しい状況をどうやって打開されたのですか?

立花さん(以下敬称略): 「なぜできないの?」という感情を捨てたからでしょうか。

いつまでたっても満足するものが上がってこなくて、「なんでできないの!」と私もスタッフも頭を抱えて、「このままだと一生無理かも」とあきらめかけたこともありました。

そんなとき、インドでの製造を取り仕切っていたビジネスパートナーのプラギートが「こんな失敗をする自分たちが恥ずかしい」と言ったんです。

長年プロとして仕事をしてきた大の大人が、「自分たちが恥ずかしい」なんて、なかなか口に出して言えないですよね。しかも、他の国なら問題のない品質なのに、日本向けの商品基準が厳しすぎるがゆえに劣等感を覚えなければならなかった。これはある意味、理不尽です。

文化が違うし、感覚だって違うからできない。そんな当たり前のことに、数年たってようやく気づかされたのです。

そして「なぜできないの?」という感情を捨て、できなくて当たり前という気持ちのもとで指示するようになると、それまでよりぐっと指示が伝わるようになったんです。

また、不思議なもので「なぜできないの?」という感情を捨てたとたん、できるようになったところが目につくようにもなりました。成長を感じられると、やっぱりうれしいですよね。

「もっと応援したい」という感情が湧き上がり、より丁寧にサポートするようになる。そして、さらに商品がよくなっていくという好循環が生まれました。

立花さんの粘り強いサポートで、今では巧みな商品を製作する現地の人たち
立花さんの粘り強いサポートで、今では巧みな商品を製作する現地の人たち
株式会社スプリング

最初の一歩を踏み出せない人は「できること」からやってみよう

――立花さんは、両親が事業を営んでいたこと、離婚して自力で家族を養う必要があったなど、自分で事業を興すマインドは自然に身についていたと思います。そういう切実な理由がなくても、独立や起業、あるいは副業をしたいという人が増えてきました。ただ、そういう思いを持っていても、なかなか最初の一歩を踏み出せないという人も多いと思います。そんな人たちに何かアドバイスはあるでしょうか?

立花:挑戦しても物事は大して変わらない」という意識を持ってみてはどうでしょうか。

何かに挑戦しても、実は生活にさほど大きな変化があるわけではありません。急にホームレスになるわけでもなければ、大富豪になるわけでもない。失敗しても、せいぜい貯金が尽きる程度のことでしょう。

一歩踏み出せない多くの人は、何かに挑戦すれば、物事が変わると思い込み過ぎているのかもしれません。

もう一つは、「できること」からやってみることです。私はシングルマザーになったときに、何か自分で商売したいと思っていましたが、最初にはじめたことはパートでの資金稼ぎでした。

そこで得た少しのお金をもとに、またちょっとしたできそうな挑戦をしてみて、達成したら次の挑戦に移っていきました。そういうことからはじめることも大切なのではないでしょうか。

製作の現場を訪れる立花さん
製作の現場を訪れる立花さん
株式会社スプリング

「自分の1年後」にフォーカスして職場を考える

――今の職場にまずまず満足していて、独立しようとまでは思わない。でも、次第に納得できないことが積み重なって、我慢の日々を過ごしている…そんな人も多いと思います。また、リモートワークが浸透して、直接上司と相談する機会が持てないとか、憂さ晴らしする場もなくて閉塞感ばかりという人も。こうした「自分はなぜこの会社にいるのだろう」といった、人に言えない悩みにはどう対処すべきでしょうか?

立花: 状況によって違うので、こう対処すべきという正解を出すことは、なかなか難しいですね。

私の経験からひとつ言うとするならば、ちょっと我慢しているなと感じたときは、「自分の1年後」にフォーカスしてみてはどうでしょう。

今の会社はこんなところがおかしい、などと違和感を覚えたとしても、それ以上に自分を成長させる何かが、1年後の今の職場にあるかどうかを、冷静にピックアップしてみるのです。

それがあると感じたなら、会社に所属しながら「会社のやり方」を自分なりに理解するよう努めることも大切だと思います。いうなれば、いま自分が我慢していることに「根拠があるかどうか」を判断するということでしょうか。

いま抱えている我慢が、まったく根拠のないものなら、転職なり、独立なり、次の一歩を踏み出すタイミングなのかもしれません。

「いつかやりたいこと」よりも「今一歩踏み出せること」を

――書名にもある「やりたいこと、全部やりたい」。これは多くの人が胸に抱く願望でもあると思います。でも、なにかと理由をつけては、やらないままズルズルといってしまう。自分自身にブレーキをかけてしまう心の癖を追い払うコツはあるでしょうか?

立花: 理由をつけて、やらないままズルズルと自分自身にブレーキをかけてしまうような「やりたいこと」なら、まず捨ててみてはどうでしょう。

そんな「やりたいこと」を「いつかやれたらいいな」と夢を見続けても、ほとんど何も変わらないと思います。

それよりも、「もしかしたらやれるかも」と思うことに対して一歩踏み出してやってみることのほうが、私にとっては大切です。

自分の周りで、ちょっとでも「やりたい」という感情で取り組めることはありませんか? そういうことを見つけて一つひとつ取り組んでいき、「やりたいこと」をアメーバ状に広げていく

そうしたらいつか、一度捨てた「やりたいこと」を「やれそうだ」と感じ、そこに向かって動き出せる日がくるかもしれません。

「やりたい」というとても素敵な感情をもって、目の前のことを、一つひとつこなしてとりあえず進んでいくことが、限りある人生においては大切なのではないでしょうか。