会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(石動 龍 著、日本実業出版社)の著者は、生まれ故郷の青森県八戸市で、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士として活動している人物。いわゆる「士業」を生業としているわけですが、2020年には地元で「ドラゴンラーメン」というラーメン店を開業したのだそうです。

1:純粋にラーメン屋店主になってみたいと思っていた。

2:リスクの高い飲食店経営に、あえて挑戦してみたかった。

3:人口が減って衰退していく地元中心街を盛り上げたいと思った。

根底には、こういった3つの理由があるのだとか。

本書はそんな私の、士業兼ラーメン屋店主として働く経験を交えながら、商売で「儲ける」ために必要な「会計」の知識を、できるだけわかりやすく解説した1冊です。(「はじめに」より)

そのため、実際に会社やお店を経営している方はもちろんのこと、純粋に「お金」や「会計」に興味がある方、あるいはラーメン店経営に興味がある方でも気軽に読むことができるわけです。

きょうは、そんな本書の第2章「1杯のラーメンからどう利益が生まれるか?」のなかから、「二郎系ラーメン」の秘密を探ってみたいと思います。

二郎系ラーメン店の利益のからくり

有名な「二郎系」のメガ盛りラーメン店の場合、一般的にスープは大量の豚骨、背脂、焼豚用の豚肉を煮込んでつくられます。濃い豚の旨味を出すため、長時間煮込んでスープをつくる店が多いそう。使う材料の量が旨味に直結するため、豚骨も背脂も大量に使用。店によって煮込み時間は異なるものの、8時間以上煮ることも珍しくないといいます。

麺もオリジナリティにあふれています。二郎といえば強力粉を使ったゴワゴワの平打ち麺がシンボルで、本家の「ラーメン二郎」では基本的に自家製麺を使用。一方、直系でない「インスパイア系」の店には、自家製麺を行っているところもあれば、製麺所から仕入れているところもあり、やり方はさまざま。

ところで、二郎といえばなんといってもすごいのがボリュームです。小サイズでも一般的なラーメンの特盛以上に相当し、大サイズは2杯分以上の量。トッピングの野菜、背脂も好みに合わせて増量でき、チャーシューは厚さ5センチ以上の肉塊がどーんとのっている状態。

価格は高くても1000円程度。1日分の食事をまかなえるほどの量なので、コストパフォーマンスは非常に高いといえます。そんなこともあって、若者を中心とした熱烈ファンに支えられているわけです。(85ページより)

二郎系は原価率が高くなりがち

なにしろボリュームのあるラーメンですから、1杯に使う材料は一般的なお店よりも多くなります。小サイズでも、麺は300グラム前後になることが普通のようです。

製麺しているか、仕入れているかで、麺のコストは変わります。仕入の場合、300グラムだと安くても100円前後になるでしょう。また、チャーシューも高コストです。二郎系のチャーシューは厚切りが標準のため、1杯あたりに使用する肉は100グラム近くになることもあるようです。

肉は部位と仕入先によって価格は異なるものの、安くても80円程度はするでしょう。国産のブランド豚を使用していれば倍以上の値段になることもあります。(86〜87ページより)

ここからもわかるように、二郎系のラーメンは原価率が高くなりがちで、40%前後になることも多いといわれているそうです。店によって条件はそれぞれ違うため一概にはいえないものの、原価がかかるラーメンであることは間違いないわけです。(86ページより)

店内ルールによる高回転の維持が利益をつくる

そして、二郎系を象徴する大きな特徴は、店内ルールに基づく高回転の維持。オーダーの際には「ヤサイマシニンニクアブラカラメ」など、まるで呪文を唱えるかのようにトッピングを伝えることが求められるため、情報を持たない新規のお客さんは混乱しがちなのです。

店によっては「ニンニク入れますか?」という質問が「野菜や脂の量、ニンニクの有無を指定してください」ということを意味する場合もあるので、それを知らずに「はい/いいえ」で答えてしまった人は冷ややかな視線を浴びてしまうことも。

行列が前提のため、一定のペースで次々ラーメンを作る店もあります。その場合、座っている客が次のラーメンを出すまでに食べ終わることが前提のため、ゆっくり食べる人がいた場合は、席が空かずに次のラーメンを出せません。これを「ロット乱し」と呼ぶそうで、一部の行列が途切れない店では、好ましくないこととされているそうです。(87〜88ページより)

このように二郎系は新規客のハードルが高く、リピーターが来客の大半を占めているという特徴があります。著者によればこれはたいへんよくできたビジネスモデルで、回転率を高く保てるために、原価率が高くても利益が残る仕組みになっているのだそうです。(87ページより)

高級志向店と町中華は、なぜ儲かる?

一方、素材に徹底的にこだわった高級志向のラーメンの場合は、素材から容器までトータルに普通のラーメン店との差別化を図っているのが特徴。ボリュームとコストパフォーマンスで行列をつくっている二郎とは違い、高級感と品質の高さを集客につなげているわけです。

価格は二郎系より高いため、原価率が同じであっても、1杯あたりの利幅は大きくなります。店によって異なるものの、二郎よりは来客が少なくても利益を出しやすい設計になっていることが多いでしょう。(90ページより)

そして町中華のラーメンは、素材もごく普通に手に入るものばかりで、減価率は低く抑えられているはず。

鶏ガラは安く、豚骨とくらべて加工の手間もかからず、煮込み時間も短く抑えることが可能。1杯あたりの限界利益は、場合によっては二郎系よりも多いかもしれないと著者は分析しています。

そんな町中華の強みは、常連客などにだらだら飲んでもらうこと。客にとってはありがたいそんな個性が、店にとってのメリットにもなっているということです。(88ページより)

「『数字』と聞くと苦手意識を持ってしまう人もいるかもしれませんが、少し勉強するだけで、仕事で十分役に立つ知識を得られます」と著者が太鼓判を押しているように、難しく考えることなく、ラーメンを通じて会計やお金に興味を持てるようになれるはず。

ラーメンのことであれ会計のことであれ、なんらかの形で関心を持つことができたのであれば、興味深く読めそうな一冊です。

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Source: 日本実業出版社