活況を呈するアメリカ国内の就職戦線や、膨大な数の求人に関する見出しがおどる今日このごろですが、弱肉強食の競争社会で就職・出世するのは、依然として熾烈の一言です。

きっと役に立つと信じて、何年もの時間(と大金)を教育に注ぎ込んだ末に待っているもの。それは、同じ仕事を求める手強いライバルたちとのデッドヒートです。

就職面接にこぎつけた時には、プレイオフに進出したかのような気分になるかもしれません。ついにここまで来ました。でも、まだこれで終わりではありません

勝つか負けるかの瀬戸際に立たされれば、「少しくらいズルをしたい」と思うのは無理からぬことかもしれません。

実際、2020年に発表されたある調査によれば、就職活動中に嘘をついた、あるいは、少なくとも嘘をつくことを考えた求職者の割合は、およそ80%にのぼるそうです。

優位に立とうと思って、小さな嘘をついてしまう。無理もないことですが、注意しましょう。就職面接でつく嘘のなかには、高いリスクを含んだ嘘があるからです。

就職面接でついてもかまわない嘘

面接中は、決して事実をねじ曲げてはいけません…などというのは、高潔ぶった人のアドバイスでしょう。

たとえスキルが足りていなくても、採用が決まればすぐに必要なスキルを身につけられるという自信があるのなら、少しくらいごまかしてもバチは当たらないでしょう。

仕事上の重要ではないスキル

そこまで重要ではないスキルについての嘘はセーフです(ただし節度は守りましょう)。

たとえば、面接者があなたに、画像編集の経験はあるか聞いてきたとします。

あなたはPhotoshopが得意ではありません。もし、募集がグラフィックデザインの仕事なら、嘘をついてその仕事をゲットしたところで、初日に面目丸つぶれになることは目に見えています。

ですが、求められているのがソーシャルメディア用のちょっとしたグラフィックや画像の修正ぐらいなら、話は別です。

ポイントは、そのスキルがオンラインのチュートリアルや入門講座を受ければ簡単に習得できるかどうかです。そこのところをよく考えてみましょう。

現在の収入

現在の収入についての嘘はセーフです(たぶん)。

The Talent Fix: A Leader’s Guide to Recruiting Great Talent』の著者である、HRUTechのTim Sackett氏に話を聞いたところ、「証明書の提出を求められることはないとは言い切れませんが、稀なこと」であり、現在のサラリーについては正確でなくても大丈夫とのことでした。

とはいえ、嘘をつくというリスクをとる価値はないかもしれません。

HRコンサルタントで、『Betting on You: How to Put Yourself First and (Finally) Take Control of Your Career』の著者であるLaurie Ruettimann氏先日のブログ記事で書いているように、アメリカの多くの州では、企業がその人の過去のサラリーを基準にして求職者にサラリーを提示することは違法となっているからです。

なので、あなたの主張を確認しようとすることは行なわれない可能性が高く、金額について嘘をつく価値もないかもしれません。

キャリアプラン

キャリアプランについての嘘はセーフです。5年後の自分はどうなっていると思うか? 面接でおなじみのこの質問に答える時には、嘘をつくことが有利に働くと思えるのであれば、クリエイティブになってもかまわないと、Sackett氏は助言してくれました。

本当かどうかなんて、誰にもわかりません。だったら、つくってしまいましょう。

同じことは、「この会社で働きたい理由」を述べる時にも当てはまります。お金のためであることがわかりきっている場合も、そこは嘘も方便で、その会社の社風をほめるようにしましょう。

職歴(話さなくてOK)

職歴については、話したくなければ話さなくてもかまいません。また、過去の仕事、特に新しい会社でのポジションを得るために辞めようと思っている仕事について聞かれた時も、いくらか曖昧な言い方をしてもかまわないでしょう。

今の上司のもとを離れたいと思っている理由が、「その人のことが大嫌いだからであっても、それを正直に言うべきではありません

たとえほかの会社のことであっても、面接で悪口を言うのは得策ではありません。あなたが新しい上司の頭痛の種になるのでは、と受け取られてしまうかもしれないからです。

その代わりに、「経験の幅を広げたい」「充実感が得られる新しい仕事を見つけたい」「違う仕事に就いて自分の力を試したいといったふうに答えましょう。たとえそれが出まかせであってもです。

ついてはいけない嘘

Sackett氏も言っているように、面接ではちょっとぐらいなら小さな嘘をついてもかまいません。けれども、なかには「ついてはいけない嘘」もあります。

仕事上の重要なスキル

仕事上の重要なスキルについての嘘はアウトです。まずダメなのが、あなたが狙っている仕事にとって非常に重要なスキルについての嘘です。

Sackett氏が挙げている例で言うと、CPR(心肺蘇生法)を知らないのに、知っていると言い張る場合などがそうです。少し極端な例ですが、ポイントはおわかりいただけるのではないでしょうか。

そのスキルがなければ、その仕事をこなせないことが最初からわかっている時、「スキルがある」と嘘をつくのはやめましょう。

そんなことをしてその仕事に就いても、あなたも会社も大きなフラストレーションにさいなまれるだけです。

きっと、またすぐに最初から職探しをする羽目になるでしょう。実際に自分にできる(少なくともほとんどは)と思えるポジションが見つかるのを待つほうがいいのです。

職歴

過去の仕事を偽るのはアウトです。職歴についての嘘はいけません。とりわけダメなのが、働いたこともないのに、ある会社で働いていたと言ったり、あるいは、ただのバイトだったのに、まるで正社員だったかのようにほのめかしたりといった嘘です。

Sackett氏は次のように言っています。

世界は狭いのです。その仕事に就いていたと嘘をついても、そんな嘘はすぐにバレます。それからもちろん、肩書きを盛るのもダメです。

クビになったこと

クビになったのに、それを偽るのはアウトです。最後に、前の仕事をクビになった場合(特に法律を破って解雇された場合)も、嘘をつくのはやめましょう。

Sackett氏はこう言っています。

これについても、いずれバレます。そうなったら、あなたは愚かな犯罪者として見られるでしょう。

違法行為でクビになったことを自白するのは気が進まない…と思うかもしれませんが、少なくとも正直かつ率直であると思ってもらえます。偽っていたことがあとでバレるよりはずっとマシです。

面接者も嘘をつく

実際にはできないExcelのスキルをごまかして売り込むべきだろうか? 前からずっとこの会社で働きたかったと訴える長台詞をリハーサルすべきだろうか? こうしたことを検討する一方で、このことも忘れないでください。面接者のほうも嘘をつきます

Sackett氏はこうアドバイスしてます。

「当社の離職率は低いです」「当社の企業文化は最高です」「当社はワークライフバランスを重んじています」――これらはどれも、人事部門のプロがよくつく嘘です。

その会社で働きたいと思っている人は、その求人と同レベルのポジションに就いている人、就いていた人に接触して、真実を確かめたほうがいいでしょう。

今そこで働いている人たちに、LinkedInメッセージやメールを何通か送って、その会社の実情を教えてもらいましょう。その結果、わざわざ面接で嘘をついてまで、何が何でもそこで働きたい、とは思わなくなるかもしれません。

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Source: Checkster, HRU Tech, Laurie Ruettimann(1,2)