いつもの気まぐれってわけでもなさそう。

4月にTwitterツイッター社の買収提案をぶち上げ、その後なんだかんだありながらもこの買収話をまとめ上げて、経営陣との合意に達したイーロン・マスク。支持も批判も多い人物ですが、ビジネスパーソンとしてはさすが一流。

タフで優秀なネゴシエイターと思わされたのですが、ここに来て買収の中止を示唆する動きを見せています。すでに報道されているように、その理由は「Twitter側がアカウント中のスパムボットを調べるために必要な情報開示を拒み続けている」というもの。

スパムボットの比率を開示せよ

イーロン・マスクは数週間前から、Twitterにおける偽アカウントやスパムボットの計算方法に関する情報を開示するように要求していますが、その要求は叶えられていません。

彼の弁護士は「Twitterは情報に対する権利を妨害している」と非難しており、この要求が叶えられない場合は買収を中止すると示唆しています。

これはTwitter最高法務責任者への書簡だけでなく、SEC(米国証券取引委員会)への提出書類にも明記されており、イーロン側はかなり苛立っているようです。

なにせ買収総額は約440億ドル(約5兆7000億円)という超巨額ですから、これも「買収額引き下げのためのブラフ? 」などと噂も飛び交っています。

発言の影響力が大きいのに、常々気まぐれな発言を繰り返しているイーロンのことですし、このような言動で市場が引っ搔き回されるのを快く思わない人も多いでしょう。

明瞭な運営方針を提示すべき

ただ、今回の件では、イーロン側ばかりを一方的に責めるわけにもいかないような気がします。というのも、Twitter側の情報開示は確かに不透明で十分とはいえず、運営も恣意的で公平性を欠いているように見受けられることが多々あるからです。

Twitterは2022年第1四半期の決算報告で、偽アカウントやスパムボットが同プラットフォームのユーザーベースの5%未満を占めていることを明らかにしました。

しかし、この数字はどうも正確ではなく、ウェブ解析サービスのSparkToroは20%近いのではないかと分析しています。巨額を投資するだけに、正確なデータをイーロン側が要求するのは無理からぬこと。

さらにはアカウント凍結やシャドウバン問題に関しても、Twitterはその基準が不明瞭です。

一方で悪質なヘイトスピーチやフェイクニュースに対しては、ほかのSNSと比べると今ひとつルーズな対応。Twitterは今や公共性の高い言論メディアですが、その割に運営方針がやや場当たりで杜撰な印象を受けます。

イーロン・マスクがTwitterの運営権を掌握すれば、こうした問題が改善するかというとそれも疑問です。世論を乱暴に煽る彼の日常的な振る舞いを見ていれば、彼が掲げる「言論の自由」とやらは、かなりラフで危ないものだと想像できます。

どちらにせよTwitterというフォーマットがどうしたら健全性を高めていけるのか、社会全体が広く考えていく必要があるでしょう。

執筆:巽英俊/Source: SparkToro

ギズモード・ジャパンより転載(2022.6.9公開記事)