リモートワークやハイブリッドワークの選択肢があると、企業にとって、優秀な人材を惹きつけ引き止める機会がさらに生まれます。
しかし、ハイブリッドワークは「厄介な中間」と呼ばれることも多く、うまくいかせるためにはまったく新しい手法が必要です。
そこで私は、SlackのBrian Elliott氏、Sheela Subramanian氏と『How the Future Works』を共著しました。
この本では、Slackのコンソーシアムである「Future Forum」が行なった2年間の研究と1万人以上の知識労働者の調査からわかったことだけでなく、IBMやカナダロイヤル銀行 、Genentechなどの企業で実施されてきたことが活用されています。
私たちの目標は、リーダーの人たちにハイブリッドなチームを構築する理由と方法をお伝えすることです。ここでは、本書の一番優れた部分と重要な教訓をいくつかご紹介します。
1. ガードレールと原則の違いを知る
経営陣は指揮管理に慣れており、今日、柔軟な働き方を成功させるには従業員に対して一定日数をオフィスで過ごすのを義務付けることだ、と考える人がたくさんいます。
しかし、私たちの調査では79%の人たちが柔軟性を求めており、その柔軟性を形にする方法について発言権が欲しいと考えていることがわかっています。
では、リーダーはどのように会社のニーズと社員のニーズのバランスをとることができるのでしょうか?
まずは、原則とガードレールとを確立し、組織にとっての柔軟な仕事の意味を明確にできるようにすることです。
原則は、取り組みを企業の核となる価値観に基づいたものにする一方、ガードレールとは、企業の原則を適切に維持するために合意された行動指針のことです。
このアプローチによって、仕事をはじめるための枠組みが得られつつも、チームが検証を行ない学んでいく余地を残すこともできるのです。
しかし、偽の柔軟性の罠にはまらないように注意しましょう。リーダーは、広範な権限を与える代わりに模範を示すことで引っ張っていく必要があります。
Slackでは、プロダクトリーダーには「1人がリモートなら、会議は全員リモートで 」という会議のガードレール・ポリシーがあります。また、経営陣が1週間にオフィスで過ごす日数を制限する「速度制限」の設定も、リーダーは検討するべきです。原則とガードレールを明確にしたうえで、それを守りましょう。
2. 場所よりも時間に重きを置く
柔軟性について考える際、「オフィスにいる日数」にこだわりすぎてしまうことがよくあります。
しかし、大半の人が場所の柔軟性を望んでいる一方で、私たちが調査した人のほぼ全員(94%)がスケジュールの柔軟性を求めています。
生産性を開放し、ストレスを軽減してワークライフバランスを実現する時には、そちらのほうが有益なのです。
しかし、異なるスケジュールで仕事をしている中で、チームはどのように調整・協力を行えば良いのでしょうか?
スケジュールの柔軟性がうまくいくためには、一緒に働く方法に関してチームレベルの合意を従業員たちに設定してもらいましょう。
たとえば「Future Forum」のチームメンバーは、(米国太平洋標準時で)午前10時から午後3時までを「コア・コラボレーション・タイム 」とすることとし、この時間には全員がそれぞれの場で会話や会議ができるようにしています。そして、残りの時間は仕事に没頭できる時間にしているのです。
チームで共通認識を持つうえで、決定事項を文書化し、議論したことをオンラインで共有することが極めて重要です。
チームで状況のアップデートにデジタルの手段を使用し、クラウドの共有ドキュメントを使ってリアルタイムでブレインストーミングをしたほうが良いでしょう。
3. オンサイトを新しいオフサイトの形として活用する
柔軟でデジタルファーストのアプローチを生み出すと、リーダーが接触可能な人材の多様性は広がりますが、オンラインとオフラインでもっと意識的に関係を構築することが求められます。
しかし、これは食堂で偶然出会うことがないと難しい場合があります。
この枠組みをうまく進めるには、改めて時間に意識的になることです。リーダーは、もっと意識的に、直接顔を合わせる機会を人の繋がりに使うべきです。
私たちは、チームが一度に数日から数週間オフィスに集まって計画を立て、改めて繋がりを持ち、交流を深めるのを目にしてきました。オンサイトは、新しいオフサイトの形なのです。
毎月集まって製品のスプリントをもっと頻繁に行なう、あるいは四半期ごとに集まって長期的な戦略立案会議を行なうなど、自分たちにとって最適なリズムを見つけるようチームに促しましょう。
また、従業員リソースグループ やメンターシップ制度など、ネットワークを構築するためのプログラムのような方法をつくることも重要です。
「Donut」や「Gatheround」などのデジタルツールを活用して、チーム外の人たちと繋がることも不可欠です。
ハイブリッドな職場環境で有能な人材を惹きつけ、引き止め、最大限に活用するためには、経営陣には新しい手法を取り入れることが求められます。
新しい、さらに柔軟な働き方を試してきた企業では、従業員からワークライフバランスの改善や生産性の向上、さらにはオフィスでフルタイムで働いている人よりも強い帰属意識が報告されています。
従業員はこれを手放したくないと思っており、最高の人材を惹きつけ引き止めておきたいリーダーは、働き方の転換に意識的にならなければならないのです。
Source: Amazon, Future Forum
Originally published by Inc. [原文]
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