ライフハッカー[日本版]とBOOK LAB TOKYOがコラボするトークイベント「BOOK LAB TALK」。第16回目のゲストは、『「書くのが苦手」な人のための文章術 』の著者であり、書評家・作家の印南敦史さんです。

ライフハッカー[日本版]の人気連載「印南敦史の『毎日書評』」を担当するなど、10年間、毎日締切と直面していると語る言葉のプロに、読み手に“刺さる”文章を書く秘訣を伺いました。

「書けない沼」から脱出。過去の経験から得た気づき

自身の書けなかった過去について振り返る印南さん
自身の書けなかった過去について振り返る印南さん

連載「印南敦史の『毎日書評』」を担当してから、今年の夏で10年目を迎える印南さん。

「印南さんが書評を書くと本が売れる」とも言われる書評のプロですが、意外にも「書くのが苦手な人の気持ちがよくわかる」と話します。

「大きな契機になったのは、10歳の時に大怪我をして半年間学校を休学したことです。

打ったのが頭で、しかも20日も意識不明だったということもあって周囲の視線も大きく変わっちゃってね。

やっぱり偏見ってあるじゃないですか。『自分じゃなくて他の友だちが同じ目に遭ったら、僕もその子のことをそういう目で見るだろうな』と思ったから仕方がないと考えていたんですけど、でも幼心に『終わったな』と思わずにはいられなかったわけです。

父親が編集者だったため本に囲まれて育ち、『将来はお父さんと同じ仕事をしよう』なんて考えていた時期もあったんですが、いきなり『いやいや、そりゃ無理でしょ』というような現実を突きつけられてしまったというか。

ですからそれからしばらくは、得意だった作文も書けなくなってしまいましたね」(印南さん、以下同)

好きだった「書くこと」が一転して“苦手”で“嫌い”になる、そんな辛い体験をした印南さん。「書けない沼」から脱出できたのは、中学1年生の時でした。

「厳格で、あまり褒めてくれることのない国語の先生が、提出した作文に『無難によくまとまっています』と赤ペンを入れてくれたんです。

別に『素晴らしい』と書かれていたわけじゃないんだけど、『しめしめ、まとまっていることは認めざるを得なかったんだな』と超ポジティブに受け取った(笑)。そのとき『そうか、これでいいんだな』と思えて、また書けるようになっていったんです」

そこから自信を取り戻し、苦手意識を克服できたという印南さんは、当時を振り返ると自分が書けなくなった理由が見えてくると語ります。

「(書けなかった時期は)書けないから自分を否定していたのではなく、自分を否定していたから書けなかったのだと思うんです。

そういうところを通ってきたので、大切なのは“書けない自分”を否定しないことだと強く感じますね。

そもそも“書けない”と自分をジャッジすることなんてできないし、むしろ“書けない自分”を肯定すれば、『じゃあ、ここからどう進みましょうか?』って、書くための道筋がなんとなく見えてきたりする

そのとき、その瞬間を逃さずに、失敗を恐れず書いてみる。書いたものに納得できなかったら、『次は同じ失敗をしないように』と思いながら、また書いてみる。

そうやって、“書くこと”を習慣化していけば、やがて必ず文章はこなれていきます。つまり、そういう地道な習慣を続けることが大切なのではないでしょうか」

「刺さる」文章を書く2つのヒント

「書くのが苦手」と頭を悩ませる人は、ライフハッカー[日本版]の読者にも多いと話す編集長の遠藤。

書ける人になるためのアドバイス「刺さる文章」を書くコツが知りたい──そんなリクエストに応えて、印南さんが2つのヒントをくれました。

1. 「誰に」「何のために」書くかを意識する

ライフハッカー[日本版]に限らず、数多くの媒体に寄稿している印南さん。実は媒体ごとにそれぞれ文体を変えているのだそう。

受け手に興味を持ってもらうためには、書き手が“誰・なんのために書くか?”を具体的にイメージすることが大切だと思っているんです。

だとすれば、「この媒体の読者はたぶんこういう人だから、こういう文体のほうが伝わりやすいかな?」とイメージしながら書いたほうがいい。

つまり文体を変えているのは、その媒体の読者に少しでも伝えたいからなんです。

もちろん失敗もありますけど、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら“読者を思い描く努力”をすれば、自己満足で終わらない文章が書けるようになると考えているわけです」

印南さんによると、もっとも危険なのは「私」が出すぎてしまうこと

過剰な自己主張は鼻につくけれど、それも「何のために書くのか?」という目的を忘れなければ回避できるといいます。

2. かっこいい文章=リズム感

「印南さんの文章はいつも、スーッと気持ちよく読める」という遠藤の言葉に、「それは意識しています。自分の文章で1つ自信があるとすればリズム感かな」と印南さん。

リズム感をつくる「てにをは(助詞)」と「テンマル(句読点)」の位置には、今も毎日頭を悩ませながらこだわっているそう。

「僕の場合、一文はなるべく30文字程度で、その中に打つ点は1つか2つまでが理想だと考えています。

文章はできるだけシンプルにして、助詞と句読点でリズムをつくる。リズム感がある文章は、自分でも『かっこいいな』と自信が持てます(笑)

バカみたいだけど、そういうことってじつは大切だと思うんですよ」

少なくとも自分が「かっこいい」と思える文章でなければ、他人が満足するはずがない、と断言する印南さん。

頭の中でリズムを取りながら自分の文章を暗唱してみると、感覚がつかみやすくなると教えてくれました。

書けないと決めつけず、日常的に書いてみる

書くのが得意な人と、苦手な人。両者には一体どんな違いがあるのでしょうか?

印南さん曰く、書くことに真剣に取り組もうとしている人が、緊張感や自信のなさを感じるのは自然なこと。

「書くのが得意な人」とは、言い換えれば「書くのに慣れている人」であり、「書き続けることで自信を得た人」とも捉えられます。

「『文章が苦手』という人の共通点は、書く前から『自分は書けない』と決めつけてしまっていること。

書くことは話すことと同じく、日常の延長線上の行為ですから、本来は書けないはずがないんです」

また、書けないジレンマを感じた時に思い出してほしいと、詩人リルケの言葉を紹介してくれました。

リルケ『若き詩人への手紙』(高安国世 訳、新潮文庫)<br>クリックして画像を拡大
リルケ『若き詩人への手紙』(高安国世 訳、新潮文庫)
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人が『書けない』と悩むのは、書きたい理由があるから

仕事の資料として文章を書く時も、言われたから仕方なく書くものと、『これを書くことで自分の何かが変わるかもしれない』と思って書くものとでは、完成度が違ってきます。

ブログでもSNSでも、誰にも見せなくてもいいから、まずは書くことを続けてみてください。

続けていると『ああ、これを書きたかったんだ』と思える瞬間が必ずある。その時、書き手の文章力は確実に向上しています」

文章とは、「日常」である
文章とは、「日常」である

セッションの最後、「文章とは?」という遠藤の問いかけに対して、「文章とは、日常である」と答えてくれた印南さん。

「日常にあったことを考えるように、会話するように、あるいは食事を摂るように、思いを文字に変換するだけのこと。一日一文を習慣にすると、それが実感できると思います」

「できないというのは、できる可能性があると同義。今書けないのだとしたら、こんなに可能性があることはない」という印南さんの言葉に、大いに励まされたセッションでした。

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次回のBOOK LAB TALK

6/21(火)19時から、『すぐに結果を出す新入社員は、「これ」だけやっている 20代のうちに身につけておきたい「しごと」のコツ』の著者であり、連載『伊庭正康の「最高効率ワークハック術」』を担当する伊庭正康さんをお招きします。

年間200回以上の講演に登壇し、リーダー、営業力、時間管理等、あらゆる「しごと」に関するサポートを行なう伊庭さん。

ご自身のご経験とともに、身につけておきたい社会人としての基礎力、「しごと」に向き合う姿勢など、幅広くお話を聞く1時間。

新入社員はもちろん、中堅・ベテランの方にも新たな気づきがあるはず。人事やマネジメント、人材育成に携わる方も必見です。

みなさまのご参加、お待ちしております!

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部 / Source: BOOK LAB TOKYO, Peatix